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「何度も同じことを聞くな!」は誤り

2020.07.31
「何度も同じことを聞くな!」は誤り

先日、顧客担当者Q部長が「愚痴になっちゃうんだけどさ、最近の若い奴は同じことを何度も聞いてくるんだ。それは前にも言っただろって言うんだけどさ。メモを取らないからそうなるんじゃないかな。だからダメなんだよ、最近の若い奴は・・。川端さんは若い奴に教えるのが上手いじゃないですか?そういう場合はどう指導しているんですか?」と問いかけてきた。

私は「これは私の個人的な考え方ですが、同じことを何度も聞くのはむしろいいことだと思っています。だから、最初に『私には同じことを何度聞いても構わないですよ。むしろどんどん聞いて欲しい。何度同じことを聞いても構わないからメモも私の前では取る必要はないです。どうしてもメモを取りたいときは私の話を遠慮なく遮って『メモ取りたいのでちょっと待ってください』と言ってくれて構いませんよ』と言っています。」と答えた。

 

さて、あなたはどちらの意見に賛成だろうか?恐らく多くの方はQ部長と同じように感じているだろう。

 

まずは整理して考えてみよう。

会社やお店がスタッフに教える内容には2種類ある。

A,誰にいつ聞いても同じ内容、もしくは同じであるべきこと。

例えば、お店であればレシピや開店前にする準備やルール、手順、マニュアルなどがそれに該当するのかもしれない。

営業の世界では契約の際の必要書類や禁止事項、コンプライアンスに触れることなどだろう。

B,人によって教え方や教える内容が異なること。単純にA以外のこと。

例えば、お店では接客においてどういうことに気を付けるべきかなど。

営業の世界ではこれがほとんどであるが、要はどうすれば売上が増えるかなどについては正解など無数にある。

 

Aは正確にこなすことが求められるルーチンワーク、Bはそれ以外のモノ全てと言い換えることが出来るかもしれない。どこにAとBの線を引くかは、お店や会社によって全て違うはずだが、こうした区分け自体はあるはずだ。

Aのような内容について、何度も聞かれるのは気分が悪いだろう。だが、こうしたモノこそ口頭で伝えスタッフにメモを取らせるのでなく、誰でもいつでも見れる状態にしておき、それを見ても分からない場合は担当者に都度聞く形がベストであろう。しかし、これらも同じことを何度も聞かれた時は一度で理解できなかったスタッフを責めるのでなく、むしろ作った資料が分かりにくい可能性も同様に疑うべきであり、そういう可能性を拾うためにも何度でも聞いて欲しいというスタンスが合理的だと思う。また、いかなる理由であれ、スタッフが分かりたいのに分からないという事態は会社やお店にとってはマイナスであること、そしてそれが気に入らないというのは何度も聞かれた側のただの感想であり、それが嫌だというはビジネス上では甘えであると思う。あなたが会社の管理者で同じことを何度も聞いてくるスタッフに対して叱るのは良い。しかし、一度教えたことをもし教えない、もしくは手を抜くという態度があったのならその管理者の行為自体も同様に仕事への甘えであり、職務放棄であることは指摘しておきたい。

 

話は戻るが、Bのような内容はどうであろう。Bのように人によって説明の仕方、内容が異なる可能性が高いモノは何度も聞いてもいいことだと私は思う。私が経験したモノで言うと、メーカー営業時代のメーカーと「代理店と販売店の関係・位置づけ」などがそれである。これは入社当時から先輩社員から何度聞いても全くぴんと来なかったし、何度も「同じこと何回も聞くなよ」と指摘されたものだ。しかし、自分で担当を持ち営業活動を始めると3日ほどで理解できた。実技に勝る研修なしということなのだろうが、こうしたことは何回でも同じことを聞くことは意味があると思う。それはその本人の知識や現状認識のレベルの違いによって、聞こえ方も感じる重要度も全く違うからだ。私もそこで同じことだから聞きにくいと躊躇していたら、理解はその分遅れていたに違いない。担当を持ってすぐに理解できたのも、それまで先輩に何度も何度も聞き続けていたからだ。それが担当を持ち顧客の生の声を聞くことであっという間に線で一つにつながったというだけのことである。

 

 

そして何より、人間が一番記憶力を発揮するのはどういう局面かを是非考えて欲しい。それは「今、これを知りたい」とその答えに飢えている時だ。自分の趣味や好きなことは自然と憶えることが出来るのも同じ理由である。だからスタッフが「これを聞きたい!」と思ったその瞬間が最も吸収力を発揮し、その内容が頭に入ってくる瞬間だ。その時に自然とメモを取るのならいいだろう。私はスタッフの「これを聞きたい!」と思った瞬間の集中力を何よりも大事にしたい。何故なら、その時伝えたことが圧倒的に身に付くからだ

(逆に関心も持てず、重要度も感じない状況でメモだけを取ったとしても吸収力は期待できない。)

しかし、ビジネスの現場で何が起きているかというと「同じことを何度も聞いてはならない」と思うがあまり、もう一回聞きたいことを聞けないまま時間が経過しているスタッフが数多くいるということだ。これは実は教える側にとっても、教わる側にとっても組織にとっても不幸なことである。成長のエンジンであるモチベーションに冷水を浴びせ、わざわざ成長のチャンスを確実に奪っているのだから。

それくらいなら何度でも同じことを聞いても構わないと明言した方が疑問や課題を解決しやすいと私は思っているだけなのである。

 

(また、最初に説明を受けた時は意味が分からなくて聞き流していると、仕事を憶えるうちに「あの時の説明はこのことを言っていたんだな」と思うことも誰しも経験があることなのではないだろうか。でも、また同じことを聞くのもどうかと二の足を踏んでしまい、聞く機会を失うこともしばしばではないだろうか。こうしたことは誰にでもあることである。)

 

私個人の話をすれば、営業という仕事柄、上司も先輩もみんな違うことを言う。今思えば、正解など無数にある営業の世界だから当然だと思うが、入社当時は私はそれなりに困惑したモノだ。ある時、開き直って自分がなるほどと思えたことだけをしっかりやろう、あとは聞き流そう、その後に気になったら「前に聞いたこと、もう一度教えてください」と聞きに行けばいいじゃないかと思った。因みに私はほとんどメモを取らなかった。それはメモなど取らずに記憶できる頭脳を持っていたのでなく、メモを取って見返しても事務的な手続き以外のことなど意味がなかったからだ。私はメモをとることで聞くことへの集中力が一定割合削がれ、相手の話や意図や全体像をとらえきれずに終えることを知っていたのだ。だから、全く体裁など気にせず、メモを取らずに何度も教えを請うたのであった。

しかし、多くのスタッフは違う。何度も同じことを聞くのはNGだと思っているからこそ、とりあえずメモを取る。繰り返しになるが、メモを取ることが悪い訳ではない。しかし、メモを取ることもアドバイスすることも目的はそのスタッフのノウハウの習得だ。それを教える側も教わる側も忘れていけないし、立場の強い教える側により気を付けて欲しいと願う。

 

 

そして想像力を働かせてみれば、何度も同じことを聞いてくるのは前回メモを取らなかったからではなく、教える側の話が早くてメモを取ることが物理的に出来なかったからかもしれないし、大して重要な話じゃないと思って聞いていたら途中から重要さに気付いてメモを取れなかっただけかもしれない。私も経験があるが、メモを取りながらだと話をする側がそこを考慮しながら話してくれない限り、話全体を聞くことは難しい。それはメモを取ることに意識のある程度を取られるために、聞くことがその分おろそかになるからである。

 

繰り返しになるが、何度も同じことを聞かれて嫌になるのはその管理者のただの感想に過ぎない。もし、スタッフに自分が経験したことを身に着けて欲しいと思うなら、何度も同じことを聞いても構わないというのが正解だと私は思う。少なくとも私はそうやってきた。そして、複数のスタッフから繰り返し同じことを聞かれることがあるなら、自分の説明の仕方が分かりにくいことに気付けるかもしれない。組織とはそうやって成長していくのである。教える側も教わる側もお互いの尊重があれば、お互いにこうして成長できるという事を忘れてはならない。これもまた、会社全体のメリットになるのではないか。あなたのアドバイスや指導を受けるスタッフはこれからもいるのだから。

 

 

さあここまで読んで頂いても、私の意見に反対から賛成になった人は恐らく半分もいない。それくらい「同じことは何度も聞くのはご法度」という考え方は浸透している。ビジネスの世界最大の常識と言っていいかもしれない。でも、私はこれらの常識をもっと楽しく、成長できるものに進化させていきたいと思っているし、これは私以外の誰かがやれることではないと使命感を持って仕事に取り組んでいる

 

サトミ営業相談所はただ企業や営業職の皆さんの売上をあげればいいという発想にはくみしない。誰よりも結果にこだわるからこそ、これまでの常識に捕らわれず「より結果に結び付けるにはどうすればいいか?」と自問自答を繰り返していく。顧客の中には私を誰よりも優しいアドバイザーだと思っている方が多いが、私はただ結果につながるやり方を日夜考えて提案しているだけだ。それではドライなのかと言うとそれも正直違う。顧客はどんなに歴史がある会社でも私よりも年上の方であっても同じように私のとっては「かわいい」のである。だからこそ、仕事の面白さに辿り着いて、かつ結果を出す気持ち良さを知って欲しいと思っている。これは本当だ。だからこそ、サトミ営業相談所は日本唯一の営業の専門家であり、夢見るリアリストと呼ばれるのである