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もしサト②営業ウーマン編

2020.09.25
もしサト②営業ウーマン編

前回のもしサト「もし私がサトミ営業相談所に相談したら」は評判が良かった。読んで頂いた顧客からもかなりリアルだというお言葉を頂いたし、私の友人からも私の人柄や雰囲気がかなり正確に伝わってくると言われた。

だから、もしサト②を書く。

前回は企業の営業戦略を提案するという場面だったが、今回は営業ウーマン編だ。

(予めお断りしておくが、この話は私自身が日頃相談を受ける際に気を付けていることと、実際に相談した顧客から言われたことや感想、指摘されたことを基に出来るだけ事実に近いイメージで作り上げたフィクションであり、あくまで一例である。)

 

 

今回も、出来るだけ顧客としてその場にいるかのような臨場感を味わってもらうべく、顧客からの視点で終始書かせていただく。

 

あなたは初めて私に相談を依頼する顧客だ。

 

名前は森山美香。

森山さんはセキュリティシステムの営業ウーマンだ。大学を卒業後、2度の転職をした後、現在の会社に入り、たった8年で課長になったやり手の営業ウーマンだ。社会人になってからずっと営業一本、23年の営業キャリアがある。

(以下、森山さん目線で書く)

 

都内喫茶店。

はあー。ため息が出た。

課長って言っても、正直主任時代の頃の方が良かった。大型案件を決めれば、褒められる側だったし、上司に真っ向から言いたいことを主張したりして後輩からも一目置かれていたし。

でも、最近は文句を言われる側だし、部長からは小言ばかり。プレイイングマネージャーと言えば聞こえはいいけど、要するに営業職の仕事に、管理職の仕事が増えただけ。

コスパ悪過ぎ。

最近契約も以前ほど取れない。

 

はあー。またため息が出ちゃった。

やる気が出ない。

そう言えば、仕事でこんなにやる気が出ないのは社会人になって初めてかも。

でも、これだけ長い営業キャリアがあって、しかも課長になると簡単に誰かに相談なんて出来ないよ。

上司なんか上の顔色ばかり見ているような人ばかりで頼りにならない。

何より、上司も含めて友達や周りを見渡しても、自分がアドバイスを聞きたくなるような人は誰一人としていない。

なまじ優秀なのも困るよ、なんてね。

 

誰かいないかな。

社内じゃ無理なら外部の人に相談するってのはどうなんだろう。

でも、周りでそんな風に相談している人なんか聞いたことない。

ちょっとググるか。でもどういうワードでググればいいんだろ。

「営業コンサルタント」「コンサルタント 営業」思いつく限り、色々とググってみる。

でも、出てくるコンサルってみんな元有名企業の超優秀営業マンっていうのを前面に出している。

どこまで本当なのかね。

うちの会社の上の連中も昔は超優秀な営業マンだったらしいけど、言っていることは全然大したことないけどね。

悩んでいる人って、こんなのに惹かれるのかな。

 

はあー。またため息が出た。

やっぱ難しいのかね。

ちょっと検索ワードを変えてみよ。

シンプルに「営業 相談」で検索。

ん?トップに来ているサトミ営業相談所ってなんじゃこれ。

 

おっ!

えっ!!この人ちょっとすごいかも。

いや、ちょっとじゃない。

私の中のスカウターがボンって壊れた。

営業の考え方、いや仕事に対する考え方が全然他の人と違う。

自分が今まで感じていた疑問、何となく変だなっていう違和感やイラっとした感じ。

それを簡単に苦も無く解き明かしている。

 

何より人間性が信頼できそう。

そう、それが一番大事だもん。

自分の悩みを打ち明ける訳だからさ。

 

何か凄い勢いで読んでる、私・・・

ブログの1回1回の熱量もすごい・・・

毎週この熱量で書いているなんて・・・

どんな経験を積んだら、こんな考え方に到達するんだろ。

やっぱり才能が違うのかな。

何がと言われると分からないけど、直感がこの人に連絡せよと言っている。

サービス内容見たら、個人の営業職なら1回1万円?

俄然依頼する気になってきちゃったよ。

1万円だったら話すだけ話して楽になるだけでも高くないかもね。

どっちにしてもこんな気持ちで営業活動なんかやってらんない。

思いたったら即行動が私の信条。

問い合わせフォームからメール送ってみよう。

 

メールを送って4時間後、返信があった。

 

メールには問合せをしてくれたことへのお礼が丁寧に綴られ、オンラインでも対応できる旨が簡潔に書いてあった。

私は直接会って相談に乗って欲しい事を伝え、「9月25日14時日暮里駅前のタリーズで待ち合わせしましょう」と送り返した。

 

9月25日14時

タリーズには既に川端さんらしき人が見える。

私を見つけると、立ち上がって小さな声で「こんにちは」と挨拶をしてきた。

ビシッとしたスーツにビシッとした雰囲気の人間かと勝手にイメージしていたけど、

カジュアルなジャケパンスタイルに穏やかで相手を緊張させない雰囲気。

話しやすそうで良かった・・・

 

川端さんは簡単に自己紹介し、改めて申し込みしてくれたことへのお礼を言った。

言葉使いも程よく丁寧で、何とも言えない物腰の柔らかさだ。

全身から自信がみなぎっているのに、不思議なほど少しの嫌らしさも尊大さも感じない。

 

川端さんはゆっくりと切り出した。

今日の私のテーマは、森山さんが私との話が終わり、このお店を出る時に新たにこれをやるという具体的な行動が決まっていることです。私はそれをゴールとして、設定します。

 

私は「了解です」と口にする前に思わず息を飲んだ。

なるほど。上司に感じるイライラってこれが無かったからかもしれない。

ごちゃごちゃ言っているけど、結局私が何をどうすればいいのかよく分からない。

だから、時間の無駄ってイラついていたんだ、私。

 

「その上で、森山さんの悩みを今一度お聞きしてよろしいでしょうか?」

「そうですね。部下の面倒見ながら自分の数字を上げていかなきゃいけない。上は頼りにならないし、部下も全然こちらの意図を汲んでくれないし、言う事を聞いてくれない。おまけに自分自身の数字がいまいちなんですよね」自分で言いながら何か違うと思っていた。

 

すると彼は「間違っていたらすいません。これは私の推測ですが、森山さんの悩みはもしかして森山さん自身の数字が思わしくないのが全ての元凶じゃないでしょうか。プレイイングマネージャーは自分自身の数字が良ければ、周りからは尊重されますし、自分自身の言動にも説得力が自然と出ます。それでいい循環を生むのですが、逆では悪い方向に循環します。まずはご自身の数字を上げることに集中してみるというのはいかがでしょうか?」

ハッとした。心臓を素手で掴まれたような気持ちだ。

そうだ、その通りだ。

色々言っていたけど、それを悩んでいたんだ。

部下や部長とのことは正直二の次。

一人の営業職として輝いていたいんだよ、私は!

 

私は精一杯平静を装って「その通りかもしれません。では、それでお願いします。まず営業職としての私の現状を説明します。私の売上の大半を占めていた大口の既存客からの契約が減っていて、それをカバーする為に新規開拓に力を入れていますがそれがうまくいっていません。既存客が減るのは仕方ないのですが・・・」

 

川端さんは突然スイッチが入ったような雰囲気を発しながら

「大口の既存客とはどれくらいの数があって、どのような業種で以前はどのくらいのスパンで契約があり、現在はどれくらいに減ったのですか?また、既存客からの契約が減ってしまった理由はリサーチ済ですか?」と言った。

 

突然、核心に触れられたような気がした。

「大口の既存客は支店や営業所を新たに増やし、そこにセキュリティシステムを導入したいという企業、同様に飲食チェーン店の新店舗分、トータル30社ほどあって、それが以前は合わせて月平均最低5件は契約があったのですが、最近は月に2,3件です。状況確認は電話で、「最近いかがですか?」とリサーチはしていますが、新規事務所・店舗を増やす予定がないという回答がほとんどです。確かに多少他社に流れている契約はあるでしょうが、以前からこのやり方で月平均5件をキープしてきましたので、そこは特段問題ないかと思っています。むしろこういう時は新規開拓を徹底するのがセオリーだと思っています。上司からもそう言われていますし。」

 

川端さんはコーヒーをゆっくり飲みなおして、少し間を開けてこう切り出した。

「お考えは間違っていません。その通りです。新規開拓をやるべきというのもセオリー通りです。しかし、少なくとも数字が下がってきたのは既存客からの新しい出先及び出店分の追加契約が減ったのが原因です。一度、30社全てに連絡を取り、「お話したいことがありますので直接お会いしたいです。」とアポを取りましょう。そして、直接会って現在の契約状況・ここ最近他社に流れていないか、もし流れていたらどの段階からどの程度流れていたのかを確認してはいかがでしょうか?これだけオンラインや電話で話すことが一般的になってきた現在でも、直接会って話すことより多くの情報を交換できる方法を我々はまだ発見していません。

顧客の立場に立って考えれば、仮に森山さんが月に一度電話で状況確認を続ける一方で、他社の営業マンが月に複数回訪問して色んな提案をされれば、他社に流れてしまっていても不思議はありません。その場合、顧客のいくつかは森山さんからの電話でのリサーチは適当に誤魔化しておいて、黙って追加契約を他社と結んでいるでしょう。ここをまず確認しましょう。もし既に流れているのならそれを少しでも止める活動、流れていないなら今後も流れさせない活動を組み立てるだけで大丈夫です。30社程度なら週3件ずつアポを取っていけば、3か月で終りますし、全て訪問すれば恐らく新しい情報は結構集まりますから一石二鳥だと思いますよ。」

 

はー。またため息が出た。

でも今のは安心した、良かったっていうため息だよ。

「目からウロコが落ちました。こんな簡単なことに気付かないなんて恥ずかしいです。今日夕方からアポ取りを始めます。本当にありがとうございました。」

私は頭の中を整理しようと努めていた。

私の犯したミスは、今までそれで問題なかったからという理由で既存顧客へのアプローチ方法を変えることを検討しなかったこと。

そして、電話でのアプローチで十分だと思い込み、他社がどういうスタンスでやっているという想像力を働かせてなかったこと。

そして、売上不振の原因を新規開拓が進んでいないことと誤認していたこと。

 

私の上司は「大口の既存客への聞き取りはしているか?」とは聞いてきても、どのように聞き取りをしているのかなんて誰も聞いてこなかった。それは私を信頼してのことかもしれないし、課長職にそこまで細かく聞く必要などないと思っていたのかもしれないし、そもそもそんな着眼点がなかったのかもしれない。

 

川端さんは他の上司みたいにただの結果論でダメ出しをしたんじゃない。

私の営業のやり方や考え方の根本的な問題点をあぶり出し、今後も私の営業活動にプラスになるようなことを教えてくれたんだよね。

しかも、ただアドバイスをするだけじゃなく、私の立場や大変さを理解しながら、私のプライドを気遣いながら丁寧に話してくれた。

 

川端さんは「森山さんのようにキャリアも実力もある方が陥りやすい状況だとは思います。既存顧客も多く細かな問い合わせや打合せも多く、社内では上からも下からも仕事はどんどん来る。出来るだけ、効率的にという観点から考えれば電話での状況確認がメインになるのは当然のことです。気にする必要はありませんし、まして恥ずかしいことでもありません。私の懸念はとりこし苦労かもしれません。それなら既存客のアプローチだけを少し改善し、スッキリして新規開拓に集中すればいいだけのことです。まずは現状を正しく認識することから始めましょう」

 

私は川端さんの話が終わるか終わらないかというタイミングに思わず聞いていた。

「川端さん、次回はいつ相談に乗って頂けますか」

川端さんは「30社への聞き取りが終わる頃にお会いしましょう。でも、それまでに気になることがあれば、いつでもご連絡ください。」

 

コーヒーを片付けようと立ち上がりグラスを持ち上げた川端さんを見上げて思った。

確かにこの人は本当に日本初の「営業の専門家」なのかもしれないと。