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売上と景気

2020.07.10
売上と景気

先日久しぶりに電話で話した顧客Wさんから「そろそろ川端さんの専門分野である営業戦略についての記事も読みたいなあ」というリクエストを頂いたので、会社・組織の戦略についての考え方について記事を書きたいと思う。

 

それは景気(世の中全体の経済の状態)への考え方である。この景気とは「社会全体の売買・取引などの経済活動全般」のことを言い、簡単に言えば社会全体にどの程度お金が回っているかどうかということだ。企業であれば全ての産業でなく、自社の業界全体の景況感と置き換えてもいいだろう。現在のコロナ禍において景気は悪化した。この指摘は別に間違っていない。しかし、景気というモノは実態を把握するのが非常に難しいモノでもある。「景気が悪い」と一言で言っても、業界によってかなりバラつきがある。これはこれまでの不景気と呼ばれる時期にもほぼ例外なく言える。前年の半分以下という売り上げの業界と10%ダウンの業界では意味も衝撃も全く違うはずだ。

 

では、経営者は自社の業界が全体としてどれくらい上下していて、その中で自社の売上がどれくらい上下しているかという視点で見ているのだろうか。恐らくそんな経営者は少ないと思う。また景気を語る時においても限られた一部の人との情報交換の結果、現状把握を行ってはいないだろうか。それはあくまでミクロ(個別の事案)の情報に過ぎない。どんなに情報通、分析の鋭い人の話だろうが、それはミクロである。景気を語る時はマクロ(全体)、そして業界全体の数字を見て把握しなければならない。だから、定期的にチェックする数字や指標を自分で決めておくことをお勧めする。それは何でもいい。例えば製造業であれば大手ECサイトの売上を複数フォローしておくとか、経済産業省が公開しているデータでも何でもいい。出来れば複数がいい。それを定点観測しておくことで、業界全体の景気が分かるようになる。また、自分が個人的に感じる肌感覚と実際の業界全体の現状との乖離も分かってくる。同じ業界でも扱っている商材によってのバラツキは当然あるし、タイムラグや地域性もあるし、自分の周りの情報が偏っているだけの可能性もある。だが、こうした癖をつけておくことで自社が今どのような状態にあるかを比較的客観的に把握できるようになるはずだ。冒頭に戦略についての記事を書くと言ったのに景気について語るのかと思われるかもしれないが、これは紛れもない戦略論である。何故なら、現状の把握が不正確であれば、それに立脚した戦略を立てたつもりでもその戦略が間違いなく的外れになるからだ。また、経営者よりも現場を知っているスタッフの方が現状をよく把握していて、経営者の現状認識が間違っていることに気付いている場合もよくある。この場合は戦略そのものが間違っているというというマイナスと、間違っていると分かっているスタッフにその間違った戦略を実行させてもモチベーションが上がらないという二重の意味でマイナスなのだが、多くの企業で起きている問題であると思う。

 

景気と自社の売上の関係には大まかに言って3パターンある。

  • 業界の売上増加(減少)率=自社の売上増加(減少)率
  • 業界の売上増加(減少)率<自社の売上増加(減少)率
  • 業界の売上増加(減少)率>自社の売上(減少)率

 

このように書くと、3つのうちのいずれかという違いがあっても、「コロナでこの景気だからウチが厳しいのも仕方ないよ」と言っていることがどのくらい危険なことか簡単に理解できるだろう。しかし多くの企業やお店は自社がどれに当てはまるのかを把握せずに自社の数字だけを見て現状把握を行い、今後の対策を論じてはいないだろうか。いや或いは危機感自体を感じていない会社やお店も多いのではないだろうか。こうした状態を回避するためにこそ、業界全体の景気動向と自社の売上の推移を常に見比べていなければならないということだ。特に2の場合、特に私の顧客は当然売上が減少している企業がほとんどなので業界の売上減少率よりも自社の売上減少率の方が高い場合が多い。しかし、多くの経営者はそのような状況でも自社の売上減少を景気が悪いことと関連付けて見ているため「ウチの業界自体が景気が悪いから仕方ないとは思うんですけでね」というトーンで打合せが始まる。確かに業界全体のパイが小さくなるのは自社だけではどうすることもできない。少ないパイの奪い合いはいくらそれを止めようと社会全体に呼びかけてもどうすることもできない。ということは少ないパイをどのように奪って自社の売上を伸ばす、あるいはキープするのかということを考えねばならない。この考え方を私は「シェアを奪う」と呼んでいる。しかし、残念ながらこのシェアの概念すらない企業・経営者は多いと思う。

 

 

 

例えば、全体で年々売上が5%ずつ下がっている業界で年々売上を10%ずつ伸ばしている企業があればシェアを相当上げているはずである。また、逆に全体で年々売上を20%ずつ伸ばしている業界で売上を10%ずつ伸ばしている企業があったらシェアを奪われているという事になる。同じ「売上を10%ずつ伸ばしている」企業でも全く意味も状況も違うことが理解できるはずだ。大まかに言えば、前者は取り組み自体は悪くない、後者は取り組みや戦略の見直しを本来考えなければならないという事になるのだが、このシェアという概念を持ち合わせていない経営者はかなり多い。そもそも前段の景気と自社の状態を混同している場合は自社の取り組みが顧客に評価されているか、されていないのかは分析不可能だと言える。

 

 

売上が増えることはどのような理由でも勿論良いことである。でも、それは特需かもしれないし、たまたまかもしれない。取り組み自体は顧客から全く評価されていないのにライバル会社の廃業やミスでたまたま選ばれただけかもしれない。そうしたラッキーパンチが当たったのなら、なおさらのことその状態をいかに継続出来るのかを考えるチャンスなのにそれをふいにしている場合は多いのではないだろうか。

 

また、私は顧客に「ミクロとマクロをごっちゃにしてはならない」という表現を使って伝えていることもある。

例えば、居酒屋の店主が新宿から来店した客に「町に人は戻っていましたか」と聞いたとき「だいぶ戻ってきたよ」と答えたとしても、店主が「新宿に人が戻っているみたいだな」などとは間違っても思ってはいけないということだ。まずこの客が何を基準に戻ってきたのかというポイントと、それ以前にどんなに正確な記憶を持っていたとしても、所詮は一人から見た風景であり、ミクロである。全体のことは分かる訳が無いし、分かる人間などいない。だから、国や団体などが公表しているマクロのデータを見るべきだということになる。出来ればこれも複数がいいだろう。これは勿論自分自身が感じたことや肌で感じたことを否定している訳ではない。こうした直感は大事だ。最後の最後は自分の直感で決めるしかない局面もビジネスの世界では何度もある。しかし、そこに至るまでのプロセスの中で全体の動きを知りたいなら全体を表すものを基準として分析すべきだという当たり前のことを地道にやろうと言っているだけだ。しかし、ビジネスの現場で何が起きているかと言うと、経営者が同じ業界の仲間や出入りしている業者からの一部の限られた情報を全体の動きとして誤認して、それをもとに経営判断を下してしまっているという状況だ。これはスタッフが少ない企業だけでなく、それなりの規模の企業でも依然として起きている現象である。繰り返すが、勿論分析をした上で決定を下す時は直感的なモノも必要になるが、そもそも誤った現状把握からスタートすることは避けねばならない。リスクが相当高まることは免れないし、スタッフに理解させて対策を打つこともままならない。「~だから~をする⇒スタッフの理解⇒実施」の序盤から崩れているわけだ。何のために実行するか理解していないのだから、失敗のリスクが自然と高まってしまう。

 

今コロナ禍で実際に大きな痛手を被った企業は多い。そうした企業は今後も増え続けるし、最終的にはとてつもない数に及ぶだろう。だが、そんな今だからこそ、業界全体の景気動向と自社の売上の推移を冷徹に分析してみてはどうだろうか。今までとは全く違う数字、現状が浮かび上がってくるかもしれない。すると今に限らず、去年、3年前、5年前の数字も見たくなるはずである。すると、自社の現状が見えてくる。そして、それまではこれで良いと思っていたサービス体制の見直しを迫られるかもしれない。厳しい判断を迫られるかもしれない。でも、そうしたことは来年気付くより今日気付く方がいいはずである。そして、気付いたところでどこから手を付ければいいか分からない時にはまずはスタッフに聞くことである。スタッフは経営者が気付いていないことの大半に気付いているはずである。だからこそ、スタッフを大事にしましょう。スタッフのモチベーションを大事にしましょうと言っているわけだ。それでも分からない場合には私がいる。日本唯一の営業の専門家であるサトミ営業相談所の川端が一緒になって考える。