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数字が悪い時に常に原因を探さなくていい理由【営業職編】

2021.04.15
数字が悪い時に常に原因を探さなくていい理由【営業職編】

数字が悪い営業職に「最近、数字が悪いのは〇〇が悪いんじゃないか?」こんな指摘をする上司は多い。私はこうした姿勢には反対であり、数字が悪い時に常に原因を探す必要などないと思っている。

 

 

 

実は不振の理由など誰も分からない

何故なら、(お客様からの具体的な指摘があれば別だが)個別のお客様についてさえ契約や数字が低調である理由を特定することは至難の業であり、また必ず改善すべき原因があるとは限らないからである。その個別のお客様の売上の合算である営業職のトータルの数字など尚更分析は難しい。まして、常に営業活動を共にしている訳でもない上司がその不振の原因を特定することなど不可能であると思う。
だから、私は4月~9月のように振り返るスパン(せめて半年間、出来れば1年間)をあらかじめ決めておき、その間に起きた数字の浮き沈み(大半は1か月間毎に予算が決められているため、2月が目標未達だった、3月の数字が悪かったなど)については原因を分析する必要はないと考えている。
※勿論、これらは営業職側に立った話であり、会社側が月ごとに目標を設定するのは運営上当然のことである。これら二つの事は矛盾していない。

 

 

 

対して、弊所サトミ営業相談所の基本スタイル

(付け加えておくと、弊所サトミ営業相談所は相談者に対して「〇〇が悪いから、ここを直そう」というスタンスではなく、「私であれば、〇〇します。何故なら私は◆◆と考えるからです。ご納得いただけたらそれをやってみてはいかがでしょうか?」という提案型である。つまり、最初から不振の原因を決めつけ、それを是正してもらうのではなく、相談者の選択肢の外側に新たな選択肢を提供するという形を取っている。あくまで選択肢を提供するだけだから、『川端さんの提案に納得できない』または『納得はしたが事情があって実行できない』という返答でも問題ない。それは相談者の自由である。出来れば次の提案の為に実行できない理由は是非教えて欲しいが、私が提案した事をお客様が実行しないと決断しても私は全く気にしない。それは、お客様自身が納得し、かつ自らの強い意志で実行しなければどんなに素晴らしい提案でも効果が得られないことを知っているからである。私が他の方法を考えればいいだけのことである。これが私のスタイルである。)

 

 

 

理由①短期間なら、偶然が重なって数字なんて簡単に落ちるから

理由の一つとしては、『1か月や2か月間くらいであれば、たまたま偶然が重なって売上が低調で終ることなど簡単に起き得るから』である。
例えば、お客様の気まぐれやちょっとした心変わり、手違い、勘違いで一時的に契約や売上が減少したり、競合他社のセールやキャンペーンなどの価格攻勢などで他社に流れる場合だってある。
(しかし、厄介なのはこうした時にいくらでも原因を挙げることが出来ること、そして原因を挙げ、とにかく何らかの対策を取ることで状況打開に近付くと思い込んでいる人が多いこと、もっと言うならそこを突っ込むのが管理職の仕事であると勘違いしている方が多いことである。

例えば、「お客様との人間関係が他社に劣っていたのではないか?」「彼の身だしなみに問題があるのではないか」「彼女の言葉使いに問題があるのではないか?」などである。
この【何となくもっともらしいが意味も根拠もない正論】は勝負の世界では相当数登場する。
しかし、これらが原因であるという根拠はどこにあるのだろうか?もし、言葉使いや身だしなみに問題があると言うなら、数字が比較的良かった時期はどう説明するのであろうか?数字が良かった時期のお客様は言葉使いや身だしなみに寛容で、急にシビアになったなんてことが起き得るのであろうか?
こうした事を部下に注意なり指摘するなら、部下にそれが原因であると納得させられるだけの根拠がなければならない。なければ、管理職のただの感想、または勝手な決めつけである。
改善点としてこうした事を伝えたいのなら数字に関係なく、日常的に指摘すべきであり、そうであるなら部下も納得してその指摘を受け入れるかもしれないが、多くの場合は普段は一切指摘していない点を結果が出なくなった途端急に指摘する。こうした場合は部下の納得を得られないだけでなく、ダメ出しのためのダメ出しであり、部下のモチベーションを奪うだけである。管理職の皆さんはこんなことはやめるべきである。)

こうした偶然が重なって一時的に契約や売上が減るという現象は、仮に時が戻ったとして対策には限界があり、まして時間を戻すことのできない現実の世界ではゼロにすることなど不可能である。
何故なら、どんなに営業職が優秀でお客様の心を掴んでいたとしても、営業職とお客様として向き合っている以上、お客様は全ての情報や事情を営業職に漏らすことはなく、我々営業職が思っている以上にお客様は営業職のコントロール下にはないからである。
お客様の変化を完璧に把握することなど出来ないし、する必要もない。
こんな時は「原因が分かっていても対策はなかったな」と諦めればいい。そこで悩んだり、その都度対策を打つのはエネルギーとスタミナの無駄である。

 

 

 

最大の理由『原因を分析するのは実は相当難しい』

そして、数字が悪い時に常に原因を分析する必要が無い最大の理由は『数字が悪い時に原因があったとしても、その原因を正確に分析するのが大変難しいということ』である。

例えば、A社という既存得意先の受注が突然減った場合はA社の担当者に聞くことで分かる事もあるが、それとてその担当者が全ての理由を正直に語ってくれるとは限らない。
お客様の方から「売上が減った理由は〇〇です。〇〇を改善してくれればまた今まで通り発注します」などと明確に要望として言われたものなら直接の原因と見るべきだが、営業職側から聞いた場合は全てを打ち明けられない場合もあるはずである。
それを正直に語る時は、お客様側にそのインセンティブがある時だけである。正直に言うことが自社、もしくはお客様担当者のメリットになる場合である。逆にそれがない場合、もしくは言わないことにインセンティブがある場合は言わないはずである。
こうしたことを回避するのは、私が常々主張しているお客様との人間関係の構築しかない。これが出来ていれば、売上が減る前に事前にお客様からの要望を聞ける可能性は高まるし、上手くいけば理由の詳細や対策を教えてくれることもある。しかし、繰り返しになるが、他社との兼ね合いやお客様担当者の社内での立場などあらゆる変数が複雑に絡み合う場合もあり、勿論限界はある。

比較的簡単そうな個別のお客様の売上ダウンの原因分析でさえ、これが現実である。ましてや複数のお客様の契約や売上の合計である営業職のトータル数字の原因分析などは更に難しいはずである。
しかし、営業という現場で何が起こっているかというと、会社及び管理職はお客様の意見を聞きもしないで、自分の経験や価値観で勝手に原因を推測し、営業職に根拠のない是正を迫っているのである。
このように順序だてて考えると、1か月や2か月の営業不振の原因を見つけ出すことがいかに難しく、にもかかわらずその都度一方的な推測に基づいて改善を図ることがいかに危険なことかは理解できるはずである。

 

 

 

では、どうすべきか。

では、一時的に結果が出ない時はどうすればいいのだろうか。
冒頭でも述べたように私は一時的な結果の良し悪しで行動を変えるという意味では、【何もする必要がない】、いや【しないべきだ】と考えている。
では、何の努力もしなくていいのかというと、それも勿論違う。
結果に関係なく、もっといい方法はないものかと常に考え、自身のルーチンワークが滞らない程度に自分の活動に少しずつ変化を与え続けるべきである

ほとんどのビジネスパーソンは、不調になると必死に努力をし、順調に結果が出てくるとまた平常運転に戻る。
そうではなくて、結果は結果として受け止めつつ、短いスパンでの結果に一喜一憂するのでなく、淡々と自分の平常運転を常に見直し、変化を与え続けていく。
これがベストであるという完成形を決めるのでなく、「本当にこれがベストなのだろうか?」と自問自答しながら、その時点におけるベストな行動を取り続けるのが理想
である。

繰り返しになるが、もし、結果から自分の行動や活動を見直すのであれば、短くとも半年、出来れば1年単位の数字や結果を分析した上ですべきだと思う。
偶然が重なった結果かもしれない1か月や2か月間の数字でなく、期間が長ければ長いだけ自分本来の実力=普段の行動の結果が出るからである。
(こうした事はサイコロを6回だけ振るより、100回、1,000回、10,000回と振る回数を増やしていった方が、それぞれの目が出る回数が1/6に近付いていくのと同じことである)

 

 

 

最も大切なこと

そして、もっと言うなら、自身の行動に変化を与えることより優先させて欲しいことがある。それはもともと自分が必要だと思っていることを日々確実にこなすことである。
お客様へのフォローの電話、アポ取り、要望への回答、検討中のお客様への状況の確認、以前から気になっていたお客様の状況確認、こうした事はどの営業職も自分なりの目標や基準を持っているはずだが、自分が引いた基準ラインを常にこなしている営業職の方が珍しいだろう。
こうした事を確実に出来ることが結果を残す営業職の共通点であり、あくまでこうした事を着実にやりながら、そこに留まることなく、常に改善を重ねていくのがあらゆる世界の一流のプロフェッショナルの共通点であると思う。

かの名将野村克也監督は「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と語った。
この言葉は恐らく勝負の厳しさを示唆した言葉なのだろうが、額面通り読むなら、私はそうは思わない。勝ちにも負けにも不思議はあり、特に原因がない偶然の結果の【負け】はある。

この事を知っているといないでは仕事への向き合い方に大きな差が出る。それは成長と活動の最大のエンジンである営業職のモチベーションにも多大なる影響を与えるから、その全てに反応し、かつ苦しむのは時間と労力の無駄にしかならない。こうした事までストイックだと持ち上げるのは的外れであり、また、世間一般で言われているように、苦労の量と結果がきれいに正比例する訳でもないことは勝負の世界に身を置く者なら知っておいた方がいい。

 

 

 

まとめ

根拠のない不振の原因分析などただの自己満足でしかなく、やる意味などない。
偶然が重なっただけの数字の落ち込み、分かっていたとしても対策が出来ない失注や売上ダウンはあっさりと「そういう時もある」と事実だけを受け止め、それまで自身がやってきたことを着実に継続しながら、常に自身の活動を磨き上げていけばいい。

完璧を目指すのはいい。理想を追い求めるのは美しいことである。
だが、それが叶わないことも、叶わない時もあると知っていた方が結果としては、良いパフォーマンスが実現し、当然より良い結果を生む。

これが、数字が悪い時に常に原因を探さなくていい理由である。