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本当にあったいい話Part2

2020.05.22
本当にあったいい話Part2

最近はコロナの話ばかりで、明るい話題が少ない。
だから、前回好評だった私の営業マン時代のエピソードをまた紹介したい。

因みに今回紹介するのは大学を卒業して社会人になりたての頃、営業職として配属されて間もない頃の話である。今から20年近く前の話であるが、後年私の人生最大のターニングポイントにも大きな影響を及ぼすことになる。私にとっては二重の意味で思い出深い話である。

 

 

 

意外に思われるかもしれないが、実は私はもともと営業職志望ではなかった。このことは私を日本一の営業マンだと信じて疑わない顧客Oさんとの会話で今でも話題にのぼる。だが、私は大学時代から出版社の制作(取材先にインタビューなどをし、その話をもとに記事を書いたり作ったりする仕事)に携わりたいと思い、就職活動をする中で第一志望の出版社K社の面接を受けた。その最終面接でK社社長に「君は営業だ、川端君。君はきっと営業という仕事を好きになる。」と言われ、あっさりと営業という仕事に志望変更した。(この何気ない決断がサトミ営業相談所の誕生につながったことを考えると、運命というものを感じずにはいられない。)

 

 

こうして、配属先である福井支店での勤務が始まった。そして、私は直属の上司I課長補佐との同行初日にこう言われ愕然とした。
「川端、お客さんのところに訪問したら出された飲物は残すなよ。朝から晩までコーヒーを出され続けても全部飲むのが営業だ」
というのも、私はコーヒーが当時苦手で普段も全く飲まないし、嫌いだった。これはブラックが苦手とかそういうレベルではなく、砂糖やクリープを多めに入れてもコーヒーの風味がダメで全く飲めなかった。
それまでは友達がみんなでコーヒーを飲んでいる時に一人だけ違うモノを飲んでいる程度で何も困らなかったが、いきなり社会人一年目の洗礼(今思えば実にたいしたことのない洗礼ではある)をもらったような気持ちだった。
とにかく出されたコーヒーを飲んではみるのだが、一杯どころか一口で気持ち悪くなるので一日に何杯も飲むのは正直きつかった。そのうち慣れるだろうと楽観視していたが全く慣れなかった。それでも、一杯目は少し砂糖を多めに、二杯目はクリープを多めに、三杯目は両方とも入れてみるなど工夫して、言われた通り全く残すことなく日々の同行営業をこなした。だから、苦手ではないお茶を出された時は本当にありがたかった。また、すぐに終わる打合せなのか、長くなるのか訪問先担当者とI課長補佐の呼吸が分からず、突然商談が終わるときなどは慌てて一気に飲み干したりしたりで、落ち着かなかった。何より、本来同行営業とは、I課長補佐の営業活動を見て、どんな話し方をするのか、どういうことを念入りに確認しているかを頭に入れるのが本来の目的なのに、正直コーヒーを飲むことに意識の大半を使っている気がして勿体ない気分であった。
なかなかコーヒーに慣れない私は同行営業をして1週間で自然に慣れることを諦め、母親に「明日の朝から毎日コーヒーを入れてくれ」と頼んだ。母親は「なんや、やっぱり営業マンはコーヒーぐらい飲めなあかんって言われたんか?分かった。濃い目のブラックコーヒーを毎日出してあげるわ。」と協力を快諾してくれた。
それから毎朝、飲んだことのないくらい超濃厚ブラックコーヒーを気持ち悪くなりながら、飲み続けた。するとどうだろう。あんなに苦手だったコーヒーは1か月後には違和感なく飲めるようになってきたではないか。(因みにその時のショック療法が効きすぎて、私は今やブラックコーヒー派である。)

 

 

今の時代では「コーヒーだろうがお茶だろうが残すなよ」などと指導する上司など珍しいだろう。パワハラだと言われかねない。だけど、あの時I課長補佐が言ってくれたおかげで、ここはコーヒーを一緒に飲むシチュエーションだなという時は違和感なく飲める。人間関係とは面白いものでお互いに阿吽の呼吸で「お酒を飲みながらする話」「喫茶店でコーヒーを飲みながらする話」「コンビニのカウンターコーヒーを買い、車の中でそれを飲みながらする話」は実は全部違う。これは言葉では説明が難しいが、事実ある。そこまでするかどうかは別として、そこで自分が飲めるモノや食べるモノに制約が無い方がやはり有利だ。これはお酒やゴルフもそうである。

 

 

話は少し脱線するが、人間関係とは面白いモノだということで言えば、これだけSNSやオンライン対話アプリが普及し、いくらでも会わずに交流を深めることが出来るのに「それでも何故私たちは会って話をしたがるのか?」という問いにテクノロジーはまだ明確な答えを出せていない。むしろ逆だ。コロナ対策が話題となって改めて「そういえば、私達はなぜ会わずにすむ用事を今まで会ってしていたのだろうか」ということに気付かされたのではないだろうか
私の専門である営業活動自体も例外ではない。PRはメールでも出来るし、商談だってチャットでも出来る。ZOOMなどを活用すれば交通費も掛からないし、会社にも訪問先にも行く必要などない。
だけど、何故わざわざ会って話そうとするかと言うと、相手の情熱や人間性は会ってみないと分からないと本能的に人類が知っているからではないだろうか。

例えば、初めて会った時には全く感じなかったその人の強い情熱や姿勢を、回を重ねた後突然感じることがある。これは勿論私が初回にぼーっとしていたから感じなかったのではない。相手がそれを私に見せ、伝えたのである。
私が「本気を出してきた」と呼んでいる現象である。
こうした事はテクノロジーの進化とはあまり関係ない感覚だと思う。

何はともあれ、私は不俱戴天の敵、コーヒーとの戦いに勝った。その後、なかなか結果が出ない時期などは勿論経験しているが、これほどピンチだと思ったことは一度もない。

 

振り返ってみると、私は常に会社や上司からある程度評価され、他人からは順風満帆すぎる営業マン人生を送ってきたと思われてきた。しかし、この時ばかりはさすがにピンチだと思ったのである。今から考えれば信じられないほど臆病だったと言える。誰にも当てはまる話かどうかは分からないが、仕事上のピンチやスランプなどは後から冷静に振り返ってみれば、実はたいしたことのないものなのかもしれない。

 

 

 

さて、このエピソードが私の人生最大のターニングポイントに影響を与えたのはその10年以上あとのことである。言うまでもなく、妻サトミさんとの出会いである。
サトミさんは私と初めて顔を合せた時は特に私に魅力を感じなかったようだ。しかし、どういう展開からこの話をしたのかはまるで憶えていないものの、私は初対面のサトミさんにこのことを話した。この話自体、私にとって武勇伝でもなんでもなくむしろ恥ずかしい話であったため、他人に話したことなどほとんどない。だから、何故初対面のサトミさんに話したのかは自分でも不思議としか言いようがない。もしかして、私の直感が人生の勝負所と感じ、この話を選んだのかもしれない。
サトミさんはこの話を聞いて、私を見る目が180度変わったたらしい。
彼女は後日この時の感想をこう語っている。
「大学を卒業したばかりの若者が誰に言われる訳でもなくそこまでやれるという行動力にまず驚いた。それがある程度経験を積んだ社会人ならいざ知らず、普通なら思いつかない発想だ。そして、そこまで仕事に真摯に向き合っていることに感動した。」
彼女はこの話だけで、天然パーマ(当時はパーマをかけていると本気で思っていたらしい)のよく喋る男をとにかく見直したのである。
結果、私は世界最強の伴侶を得た。芸は身を助けるというが、この場合は苦い思い出が出会いを助けたと言えるだろう。

 

人生、何が起きるか本当に分からない。そして、何がどう活きるのかも誰にも分からない。今苦労している方も、そういう気持ちで毎日を送ってみてはいかがだろうか。

私はサトミさんと結婚してから、ブラックコーヒーを飲む度に、この二つの話をいつも思い出す。そして、私とサトミさんの物語はこれからも続いていく。