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理想のアドバイス【管理職編】

2021.06.10
理想のアドバイス【管理職編】

管理職の皆さんは普段、部下への指導やアドバイスに頭を悩ませているはずである。今回は、18年間サラリーマン時代を過ごし、現在は営業の専門家として上司と部下の両方の意見を聞く私の持論を解説したいと思う。

以前、twitter上である女性Aさんがこう呟いた。
「初めて商談に行くのですが、アドバイス下さい」
このツイートに対して、多くのtwitterユーザーが様々なアドバイスを送っていた。
名刺の渡し方に始まり、挨拶の仕方、説明の仕方、商談の留意点からクロージングに至るまで多種多様な内容であった。

その中で、たった一人だけこんな場違いな質問をした者がいた。
「その商談相手とは、電話で話したことはありますか?それともメールでのやり取りから初めての商談に至ったのですか?」
私である。

商談相手がどのような気持ちでその日を迎え、またどのようにAさんを見つめているのかを少しでも知りたいと思ったのである。
そして、それを聞いた上でアドバイスする内容を決めたかったのである。

言うまでもないことであるが、商談には必ず相手がいる。こちらの話し方や挨拶も大切なことだが、アドバイスをするのであれば、相手との関係・距離感によって必要なことも準備も異なる。だからその情報が欲しい。
そう思ったのである。

勿論、このtwitter上で寄せられるメッセージは基本的には善意で送られたモノであり、twitterの特性上一つ一つのツイートに対して、真剣にリプ(返信)を送る人など少ないし、その必要もない。
まして内容についての責任などない。
だから、私が今回この話を取り上げたのは、Aさんにアドバイスを送った彼ら彼女らを批判したかったからではない。
ただ、これが普段ビジネスの現場でも飛び交っているアドバイスの縮図であると感じたからである。

 

 

 

 

アドバイスの現状

私は営業の専門家として、様々な企業の担当者にアドバイスするが、それまでに他のコンサルタントから受けたアドバイスを聞くと驚くことが多い。
内容の妥当性以前に、その企業、もしくは担当者にその状況や方針、人員やコストを丁寧に聞くことなく、「看板商品の売れ行きが悪い」「今期の売上が予算に達していない」という程度の情報のみでアドバイスしているのではないか?と思わざるを得ないレベルだからだ。

本来、ビジネスにおいてもプライベートにおいても、アドバイスとは相談者の置かれている状態で必要なモノはすべて異なるはずである。
冒頭の話のように、商談という相手がある場面においては、商談相手との関係、商談相手がどのような気持ちでいるかという点も含めて相談者の置かれている状況である。

そして、相手が企業やお店などの組織であれば、業界全体の景気、類似商品の売れ行きなどの情報も相談者の置かれている情報に最低限含まれるはずである。
それなくして、現状分析など不可能であり、当然アドバイスも出来ない。
本来ならば、この最低限の情報に追加して、この組織の方針や考え方なども聞かせてもらって、初めてアドバイスの素地が出来ると言える。
もしこうした情報について、相談者自身が何の情報も意見も持ち合わせていないなら、その情報収集からアドバイスするのが筋ではないだろうか?
この程度の事はビジネス経験がない人にも分かる事だと思うが、こんな基本的なことを出来ていないコンサルタントが多いのもまた事実である。
当然のことだが、こうした事抜きにしたアドバイスは相当にいい加減なモノであり、多くのコンサルタントが受けている「机上の空論である」との評価は妥当なモノだろう。

ここで問いかけたい。
多くのコンサルタントやアドバイザー、或いは会社における管理職は、アドバイスの際に自分の得意分野や知っていること、やらせたいことをただ伝えているだけにはなっていないだろうか?
もっと言うなら、自分が言いたいことを伝える・指示すること自体が目的になってはいないだろうか?

会社や組織においては、管理職が部下の現状打開策や解決方法が分からない時はあるはずである。
そんな時は『私には分からないから自分で考えて自分でやってみたらいい』の方がいい。
しかし、このように言える管理職などほとんどいないだろう。
コンサルタントなら尚更言えないはずである。

アドバイスを受ける側の立場になって考えてみたら簡単に分かる事であるが、的外れなことを言われてもそのアドバイスを無視することは難しい。
とりあえず従わないといけないと思う人が大多数ではないだろうか?
つまり、的外れな意見や指示を受ける、そしてそうと分かっていても実行に移さなければならない(或いは実行した振りをしなければならない)という二重の意味で負担であるという事である。
これがビジネスの現場の現実である。

 

 

 

 

例えば、私

分かりやすく説明するために私の話をする。
私は売上を増やすという点に関しては知見に自信を持ち、相談者からも一定の評価を受けている。
だが、相談者に対して『こうすれば売上が必ず増える』とは一度も言ったことは無い。
予測できるのは、「売上が足りないのは〇〇の視点がないのが原因ではないか?」という程度である。
逆に言えば、私ならそこまでは分かる。
そして、自身の営業職として経験してきた失敗例のどこに近いかという近似例を探し、どういうことで打開したか、目の前の相談者に可能かなどを考慮し、「こうするというのはどうでしょう?何故なら、〇〇だからです。」という提案をする。
そして、この提案の意味を相談者に納得して頂くまでが私の責任だと考えている。
もし「川端さんの提案は理解できない」と相談者が思ったのであれば、それは相談者の理解力の問題でなく、100%私の説明能力の問題である。
そこをクリアし、相談者の選択肢を増やすまでが私の仕事である。
だから、『私の提案を実行すべきだ』とは決して言わない。
私の提案を含めてどの選択肢を選ぶのかはあくまで経営者(相談者)であると考えているからである。

 

 

 

 

正解はその人の分だけ無数にある

仕事において正解は無数にある。これが私の持論である。
【ビジネスにおける正解=結果を出すやり方・方法】と定義するなら、それ以外の結論は今の私にはない。
本人の個性や価値観、考え方によって、出来る事、出来ない事、出来るけど苦手なことなど全て異なるだけに正解は少なくとも会社や店の数、スタッフの数以上はあるはずである。
それを見つけるのは本人(自社、並びに自店)しかいないという考え方である。
だが、現実として事前に正解を予測できる者などどこにもいない。
ほとんどの企業やビジネスパーソンは膨大な失敗を積み重ねて少しずつ何となく正解に近付いていくだけである。

(基本たった一つの正解があることについて教える学校の勉強とここが決定的に違う点である。)

その膨大な失敗の中から様々なことに気付き、また自分自身で決めたからこそ、結果に対して大いに喜んだり大いに悔しく思える。
こうした事もとても大切なことである。
たとえ、私の提案を鵜呑みにし、結果を出したとしても、そうしたプロセスによる成長は望めない。これは実に勿体ない事である。
だから、私の提案を採用するにせよ、きちんと理解し、最低限自身で吟味して決めて欲しいという事である。
これは私の感覚的なモノであるが、出来れば少しでも多く悩んで選んだ方がいい。
だからこそ、私はアドバイスする際に「これがベストだからこれをやってください」などとは言わず、相談者の選択肢を増やすことに徹しているという訳である。

 

 

 

 

驚愕の常識外れの持論

本題に戻る。
会社や組織についてはどうだろうか?
ここまで解説してきたように上司や管理職がアドバイスに根拠や自信がない場合は、黙ってみている方がいいのは自明の理であるが、実は私はもっと突っ込んだ意見を持っている。

それは管理職が部下の成長の為に積極的にアドバイスする必要などないということである。
私がこのように思う理由は実に簡単である。
それは、人に教えることが出来る(=部下の成長を促進させる助言が出来、結果に導く)人間などほとんどいないからである。
そして、現実にはほとんどの場合、上司や管理職の無意味なアドバイスや組織のルールが「その人自身の正解を探すこと」を阻害しているから
である。

だから、上司や管理職は極力部下に自由を与えた方がいい。
評価はプロセスではなく、結果のみで下せばいい。
それが最もシンプルで公平なやり方である。
そして、部下が困った時や助言を求めてきた時のみ全力で支援する。
その為に部下が困った時に頼れる、甘えることが出来る人間関係を構築しておく。

それが恐らく部下が、いや組織が最も結果を出しやすいと私は思う。

その上で、もし助言を求められ指示を出す時も、あくまで提案するという形に徹することである。
部下に【自分の行動は自分で決めてもらう】という大人として当たり前のことを貫いてもらう
という事である。

人間、結果に対して他人の責任にしたくなるのは誰かに強制されたことだからである。
自分の判断でやったことの結果なら、誰かの責任にする必要など無いし、また自分で改善策を考えればいい。
一番可哀想なのは、誰かの強制や指示で仕方なく取った方法なのに、その結果については責任を追及されることである。
こんな理不尽で筋の通らないことはないだろう。
だが、ビジネスの現場ではこうした事は今も頻繁に起きている。
実に非合理的であり、酷いことである。
だから、管理職に言いたい。
『部下には指示など必要ない。自由を与え、求められた時だけ提案せよ』
『部下を大人として扱い、最低限の敬意を払え』
と。

こんな事を指摘すると「基本的なことも出来ていない場合は?」と言われそうだが、基本などは他の先輩や上司の仕事ぶりを見ていればほとんどのことは分かるし、研修などをやっても身に付かない人は一定数必ずいるはずである。
こうしたことは基本的なことやスキルは指導や研修によって初めて身に付くのではなく、本人のモチベーション次第でなんとでもなるという事を示している。
私はそう考える。
会社のルールや統一化された基本があるのであれば、マニュアルや動画にしていつでも誰でも見られるようにしておけばいいのである。

それでも何故多くの管理職が張り切って助言・指導したがるかと言えば、『管理職とは部下を育てるモノ、指導するモノ』だと思い込んでいるからである。
そして、自身が誰かの部下であった時に「上司のアドバイスに救われた」経験があるからである。
しかし、それも所詮は結果論である。
社会人になって、何百何千という指示やアドバイスを上司や先輩から受けていれば、いくつかは結果が出てしまうケースや救われる一言もあるというだけで話である。
全体として見れば、上司や管理職のアドバイスや指示によって部下が失ったモノ・無駄になった時間や損なわれたモチベーションの方が、メリットよりはるかに多いはずであると思う。
(一方で、良い上司だと評価を受ける管理職の多くはこうした事を理解していて、細かな指示や指摘などしない。自由を与えた方が部下はモチベーションを保ち、結果を出す可能性が高いことを知り尽くしているからである。)

企業の抱える問題の根本はこうしたことを理解せずに、またほとんどの管理職は指導など出来ていないのに、役職やポスト、そして指導する権利と義務を与えてしまっていることにあると私は考えている。

繰り返しになるが、私はお客様から提案力やアドバイスの質を評価されても、絶対強制はしない。
むしろ、しつこいくらいに「私は選択肢を提供するだけです」と伝える。
言うまでもないことであるが、強制をせず選択肢の提供に徹するのは、自信がないからではない。
これも繰り返しになるが、他人も自分も何をどうやればどういう結果になるのかは誰にも分からないからである。
唯一勝率を上げるのは、私が『営業の専門家』という独自の視点からの提案によって、相談者の選択肢を増やし、相談者の自由度を広げるという一点だけである。

その事実と向き合い、相談者の勝率を上げることにこだわったモノが
理想のアドバイスであり、その在り方と思う。

この一点に関しては、
私⇔企業だろうが、私⇔営業職だろうが、
上司⇔部下だろうが同じである。
相談者の立場、アドバイスを受ける人の立場に立てば、その結論にしか至らないと私は思うが、皆さんはどう思われるだろうか?

もう一度言う。
理想のアドバイスとは相談者の自由を保証した上での
提案であり、選択肢の提供である