相手と仲良くなりたいなら・・

先日、ある営業職から「川端さんのテクニックなんか要らないって考え方、すごく納得しましたし、何だかスッキリしたんですよ。今まで上司とか先輩に教えてもらったり、色んなビジネス本を読んでも、ちっとも営業が上手くならない気がして・・・その違和感が何だったか分かったというか・・・。やっぱりお客様との人間関係に尽きるというのも凄く分かりました。川端さんは相手と打ち解けるのが凄く早いっていつも思いますけど、意識している事とかありますか?参考にしたいです。」

 

私は相手と交流する時に、こうやったら仲良くなれるかなと考えることは全くない。ビジネス上のお客様や相談者だろうが、プライベートで知り合った友人だろうがそこは全く同じだ。仕事という場面で知り合った方だと私が意識しなくても、相手からの話や切り口で自然と仕事の話になり、飲み会で知り合った友達はそうでもないという違いがあるだけで、仕事だから突然スイッチが入るというほど、メリハリがある人間ではない。そういう意味では、プロフェッショナリズムに欠けるのかもしれないが、これが私のスタイルだ。いつでも自然体で、誰にでも公平に接することが人間として美しいことだと信じて仕事に取り組んできた結果、辿り着いた私のスタイルだ。出来そうでなかなか取れないスタイルだと自負しているだけに、このスタイルを変えるつもりはない。

 

 

だから、お客様との人間関係を構築するために私が意識してやっている事、こだわっていること、気を付けていることが何かと問われたら、ないというのが正直な回答だろうと思う。

 

だが、それでは折角質問してくれた方にあまりに不親切だと思ったので、「特に意識していることはありませんが、振り返ってみたらこういう展開になったら相手と仲良くなることが出来たような気がする、ということをお話します」と断りを入れた上で、説明した。

今回はその時話したことを紹介する。

 

 

まず誰かと仲良くなるのに真っ先に必要なのは、相手に親近感を抱いてもらう事である。

親近感:自分に近いものと感じて抱く、親しみの気持ち

 

当たり前であるが、それにはお互いの共通点を見つけるのが一番簡単で無難なやり方だと思う。何故なら、お互い背伸びをしなくても、努力をしなくても、その話題なら精神的にも物理的にも負担なく話せるからである。

 

世の中には誰かに好かれるためには人間力を高めなければならない、魅力的でなければならないと思っている人が多い。そのために見た目を良くするためにスポーツジムに通ったり、教養を身に付ける為に本を読んだりと努力をしている人も多い。

しかし、もし誰かと仲良くなりたいだけなら、そんな事をする必要はないし、魅力的である必要もないと思う。これは魅力的な人は「誰から見ても友達になって欲しい人なのか?」という問いの答えであっさりと証明できる。魅力的かどうかは本質的には恐らく「他人100人が見て、どれだけの人がその人に魅了されるか」という美人投票である。しかし、現実には自身の友達を見ても、周りの友人関係を見ても、そんな基準で友達を作り、友人関係を構築している人など稀ではないだろうか。多くの人は、似たような趣味を持っていたり、似たようなことに関心を持ち、似たような好みを持ち、同じ話題で会話が出来る人を友人として選ぶのではないだろうか?それは付き合うのが楽だからである。ただそれだけの理由であると私は思う。

 

これは仕事においての人間関係もそう変わらない。仕事の話をする前に、相手と自身の共通点を見つけ、共有するというのが最も早道である。そういう意味では多くの方が趣味として持っているゴルフや、人気スポーツである野球などについて興味・関心を持ち、多少でも話せるよう準備しておくという努力はあってもいいのかもしれない。

しかし、こうした事でなくても、出身地や住まい、以前住んでいた場所、好きな街、好きな食べ物、どんなモノでもいい。相手との共通点を見つけることである。共通点だけに相手も親近感を感じる可能性は高く、その後その話題である程度は話が出来るだろう。そして、その最初に見つかった共通点でいつまでも盛り上がる必要もない。何故なら、ある程度の取っ掛かりの会話さえ出来れば、その会話の中でお互いに他の共通点や感心する点、気になる点が次々と出てくるからである。この連続・積み重ねこそが、人間関係の構築そのものである。仲良くなる、懇意になる、人間関係の構築が出来るということは、偶発的か意図的かは別として、この連続・積み重ねが発生したかどうかである。このように考えれば、人間力や魅力の高さが仕事の成否を決めるという一見もっともらしい論調がいかに的外れなモノか簡単に分かるだろう。

 

(もっと言うなら、いくつか共通点がある場合は、相手にとってそれを共有できる人が少ない共通点について会話をする方がいいだろう。相手は、その共通点について会話が出来る人が少ないだけに、あなたがより親近感を強く感じる存在に映るかもしれないからだ。

例えば、「ラーメンが好き」「ゴルフが好き」「野球が好き」などであれば、それを共通点として共有できる人はあなたでなくても正直いくらでもいる。それよりは例えば、私であれば、「福井県福井市出身である」という人がいないかと探す方がいい。何故なら、東京で福井市出身者は少ないため、互いに福井市出身であると分かった時に相手に抱く親近感は、「ラーメンが好き」という共通点を持つ相手とは比較にならないからだ。

勿論、絶対数が少ないからこその強い親近感であるからそう見つかるはずはない。だが、相手から見て共有する人が少ないと認識している共通点を見つける事で、より強い親近感を抱いてもらえる可能性があるという事は憶えておいた方がいいだろう。

こうした事が偶然起きて偶然仲良くなるのと、こうした事を理解して共通点を探していくという作業が出来る、或いは無意識にそういうことが出来るのでは、恐らく大きな差が生まれるのではないだろうか?)

 

こうした事はテクニックでも何でもなく、誰にでも出来ることであり、もっと言うなら多くの人が多かれ少なかれ無意識にやっていることである。それを意識して関係作りに役立てるというだけのことである。

 

こうした事を証明する話として、一例を挙げる。

先日、現役銀座ホステスのゆりさんに私に対する印象の変化を聞いたところ、最初に親近感を抱いたのは私が荒川区に住んでいると分かった時だったという。

というのも彼女は下町が好きで以前は荒川区に住んでいたため、急に親近感が沸いたそうだ。それもあって、その直後Twitterで投稿したお仕事意見交換会の開催の告知を見て、参加を申し出てくれた。つまり、ゆりさんの私への印象を改善させたのは私の人間性や能力でも何でもなく、ただ荒川区に住んでいるという一点だった訳だ。この話は特段珍しいケースでも何でもなく、日常的にそこかしこで起きている現象だと私は思う。出会いは何がきっかけで生まれ、何がきっかけですれ違うかなど誰にも分からない。この場合で見れば、私が荒川区でなく、違う場所に住んでいたら会うことも対談することもなかったのかもしれない。

 

住む場所などはどこに住んでいたら親近感を抱いてもらいやすいかなどは分からないし、そんなことを考えて住む場所を決める人など相当珍しいだろう。そういう意味では完全に運である。でも、結果としてはそうしたことがきっかけでお仕事意見交換会にて初めてお会いし、その後何度か食事をする中で、ゆりさんの私への印象は少しずつ変わっていったのだそうだ。例えば、Twitterで知り合った友人が大阪から遊びに来た時に、私は共に夕食を取る為にお店を予約した。そして、早めにお店に行き、場所を確認した上で、駅まで迎えに行った。ゆりさんとその方もまた知り合いだったため、急遽ゆりさんも参加することになったのだが、事前にお店の下調べをし、スムーズにお店に案内した私に良い印象を抱いたのだそうだ。こうした事も誰にも出来ないことではないと思う。物理的には誰にでも出来ることである。しかし、何度か言葉を交わし、会うことを重ねていくとこうした新たな発見やその人の良い点を見つける機会が増えるというだけの話である。結果として、今ではただお酒を飲むだけでなく、仕事について大真面目に議論できる関係になった。

これが人間関係の面白いところでもあり、恐ろしいところでもある。

 

ゆりさんの私への印象の変化、関係の構築はおよそ半年の間に起こったことだが、人間関係とは一体何であるかということについて実に多くのことを教えてくれると思う。

 

こうした人間関係の難しさをどうすることも出来ないと諦めることも出来るが、だからこそ面白いと思って、その特徴をうまく生かそうとする人間だっている。

どちらがビジネスにおいて、優位に立てるかは一目瞭然だろう。

 

多くの出会いはこのように運やタイミングによって、生まれたり、消えたりする。だからこそ、ビジネスにおいて出会った人にはまずは共通点を探してみることをお勧めする。

これを意識してやるのとただ何となく会話をするのでは話の展開に大きな差が生まれるはずである。

 

 

これは本題からは少し外れることであり応用編になるのだが、自分を支持してくれたり、応援してくれる人を増やしたいのなら、まずは自分を知ってもらうことだ。そして、相手を知ることだ。当たり前であるが、自分をより知ってもらえば、相手は共通点を見つけ出してくれる可能性はその分高まる。同様に、自分が相手を知ることでもその可能性を高めることができるはずだ。

自分自身を魅力的に見せるよう背伸びをする必要は実はないと私が言うのはそういう意味である。魅力的であることより、共通点や共有する事、共感してもらえることの発見がその人との付き合いの一歩になる。何故なら、趣味や好みは人それぞれなのだから。

 

最後に例え話をする。

誰にでもイメージしやすいようにラーメン店を取り上げる。

世の中には数えきれないほどの多くのラーメン店があり、激しく競争を繰り広げている。もし、消費者全員が全てのラーメン店の味を知ることができたら、今より更に、人気店に来客が集中するかもしれない。しかし、現実の世界ではそのようなことはまず起きない。これほど、SNSやネットが普及し、あらゆる情報の共有が可能になった今でさえ不可能である。多くの人は、全ての店の情報や味を知ることが出来ないために、知っている範囲の中で自分の中で比較的美味しい店や行きやすいお店、お気に入りのお店を選んでいるはずだ。

 

こうしたことから導き出される結論は、大まかに言えば、ラーメン店の店主がお客様を増やしたいなら、より多くの人に自店のラーメンを知ってもらう事と、来店してくれたお客様にリピーターになってもらう事しかないということだ。

 

これは人間関係でも全く同じことが言えるということである。

 

前者が人間関係で言えば、自分を知ってもらう事に該当し、後者が共通点の発見によって「またこの人と話したいな」と思ってもらう事に該当するだろう。

 

だからこそ、まずは自分を知ってもらうこと、そして相手との共通点を発見する、もしくは発見してもらうことが誰かと仲良くなる最大にして最初の一歩であるということだ。

 

サトミ営業相談所は、『人間力を高めろ』、『魅力的になれ』などという曖昧で無意味なアドバイスはしない。常に、今すぐに出来て効果を実感できるアドバイスを徹底していく。だからこそ、日本唯一にして、世界最強の「営業の専門家」と呼ばれるのである。