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結果を出しているプロセスは正解なのか?

2021.08.26
結果を出しているプロセスは正解なのか?

突然ですが、あなたは「トップセールスが語る契約獲得のコツ」と「売れない営業職が語る契約獲得のコツ」のどちらに耳を傾けますか?
おそらく限りなく100%に近い人が「トップセールスが語る契約獲得のコツ」に耳を傾けるだろう。
「結果を出した有名経営者の経営のコツ」と「倒産寸前の会社の経営者の経営のコツ」と聞いても、結果は同様に前者をほぼ全員が選ぶはずである。
これは全ての人間に言えることではあるが、結果を出した人間が言う事は正しい、妥当性が高い、そして結果を出した人のプロセスは正解(この場合、結果を出す方法と定義する)に違いないと思っている。

結論から言おう、これは実は誤りである。
この話は私が常日頃から唱えている持論であるが、理解している人はほぼ皆無である。
説明すれば大体の方が理解はできるが、半信半疑である。
もともと理解していた人と私自身出会ったことがない。
ここまで断言しても、【結果を出した人間の言う事は正しい、そして結果を出した人のそのプロセスもまた正しい】のは当たり前じゃないかと思う人が大半だろうと思う。

解説する。
人は誰かの話を聞く時(或いは著書として読む時)、その発信者の価値を量るところからスタートする
例えば、ビジネスを語る時はビジネスパーソンとしてどれほどの実績とキャリアを積み上げてきたのか、営業についてのやり方を語る時は語り手がどの程度優秀な営業職かをまず知ろうとする。
もっと分かりやすく言うなら、肩書(会社名や役職・ポジション)から発信者自身がどの程度価値がある人間なのかを品定めしているのである。

 

 

 

 

実は難しい勝因の特定

私はここから情報収集の第一歩として失敗していると指摘したい。
誤解を恐れずに言えば、こうしたことは幾重にも仕掛けられた矛盾である。
例えば、冒頭の例から行こう。
まず、その『トップセールスが語る契約獲得のコツ』が結果をもたらした要因とは限らないという事である。結果を出しているのであれば、必ずその営業職と契約を締結しているお客様が複数存在するはずである。そのお客様が「これが契約の決め手となった」という要因と営業職が思う要因が一致していて初めて、その営業職が語るコツに一定程度の説得力が帯びてくるのではないだろうか?
しかし、どれほど優秀な営業職も「お客様は自分の何を評価して契約してくれたのだろうか?」という視点など持っていないし、ましてお客様に直接聞いてなどいない。お客様に確認した上で「私のお客様にリサーチしたところ、私の〇〇が契約のきっかけになった方が全体の80%です。ですので、私の営業成績がいいのは〇〇が要因です。」と最低限言えなければ他人へのアドバイスとしては本来有効性も説得力もない
しかし、残念ながら、契約において何が決め手になったのかは実はお客様自身も分からない。何故なら、契約をどの会社の誰と結ぶかは多くの場合、一瞬で勝負が決まったり、一つの営業職の行動で流れが決まるというより、一連の営業職の行動が少しずつ信頼を得て、契約に辿り着くからである。
どれが契約の要因だと聞かれても、お客様も自身の心の微妙な変化を確認しながら決断を下している訳ではない。
結果として、契約の要因を聞かれても、漠然とした理由か、印象に残ったことを答えることになるのではないだろうか?
まして、お客様にリサーチなく、営業職が勝手に言っているノウハウや勝因などはその営業職がいくら結果を出していても自己満足や独りよがりの域を出ない。
少なくとも私はそう思う。

 

 

 

 

特定出来たとしても・・・

もっと言うなら、例えその要因や行動が結果に結びついているとしても、他の人間がその真似をして結果につながるとは限らない。
何故なら、人間はそれぞれ異なる個性や性格、価値観を持っているからである。
このように考えると、誰かの話や助言を受け入れる時に、その人が出した結果でどれほど期待するか、真剣に聞くかを決めることがいかに無意味で危険なことであり、そして幾重にも仕掛けられた矛盾であると私が言った意味が少しは理解して頂けたのではないだろうか?

一言で言ってしまえば、どんなに優秀な人間でも自身が出した結果の要因を把握していない、たとえ把握していたとしてもそれを他人が実践したところで同様に結果が出る保証など無いといういたってシンプルな話である。
(著名人や有名経営者、大手企業のトップセールス、SNS上でのインフルエンサーが発信したノウハウを著書やYouTubeで見ても結果が出ないのは、こうした理由によるものである。

 

 

 

 

失敗の法則

しかし、現実にはほとんどの人は有名な経営者が語った言葉は正しい、twitterでフォロワーが多い人が言っていることは正しいと思い込み、その結果こそがそのプロセスの有効性が高いことの何よりの証拠だと思い込んでいる。
だから、実効性のないことを何度も繰り返す。
これが私の言う【失敗の法則】である。

確かに物事が上手くいっている時には多くの場合理由がある。
しかし、上手くいっている時に実践していること全て「正しい」と決めつけてしまえばどうなるであろうか?
勿論、上手く結果が出ている状態でも無意味なこと、結果にマイナスの影響を及ぼしていることだって必ずあるはずである。
逆に、結果がまるで出ていない時に、実践していることもこれが全て悪手などという事もあり得ないのではないだろうか。

 

 

 

 

歴史から学ぶとは?

少し雄大な話をしよう。
歴史である。
我々は歴史において誰が勝者になり誰が敗者になったかという結果を知っている。
そして、【勝者はプロセス(取った戦略や戦術・政策)が正しかったから勝ったのだ。】と疑いもなく思い込んでいる。
勝者のプロセスは正解だから勝者のプロセスに着目し、勝者のプロセスを真似ようとしている。
それが歴史から学ぶことだと思い込んでいる。
では、その勝者のプロセスを真似すれば勝率は高まるのであろうか?
私は高まらないと思う。
恐らく、先人たちは私達以上に歴史から学び、分析し、その教訓から判断を重ねてきたはずである。
それでも歴史的に勝者と類されている偉人たちでさえ、何度も何度も失敗を繰り返しながら最終的に薄氷の勝利をもぎ取っているのは何故だろうか?
それはどのプロセスが結果を出せるのかという分析が難しいからである。
大事なことは勝因・敗因の特定へのあくなき努力であり、勝者のプロセスの全肯定(或いは敗者のプロセスの全否定)ではないのではないだろうか?
そして、勝者・敗者問わず、プロセスを分析し、どの部分が勝利に近付き、どの部分が敗北に近付いたかを分析し、推測を重ねることこそ、歴史から学ぶということではないだろうか?
私はそう考える。

 

 

 

 

具体的な解決策

では具体的にどうすべきか?
簡単である。
誰が言ったかという情報を排除して、内容だけで判断する、ただこれだけである。
もし信じられないなら、誰かに協力してもらい、発言者が分からないように何人かの発信者の主張や発言内容をいくつも並べて見て、「なるほど」と納得した度合いを比較してみるといい。
知名度やSNSのフォロワー数と内容の納得度は完全に一致などしていないはずである。

 

 

 

 

誰かの発言の価値や有効性は誰が言ったかなど本来関係ない。

もっと言うなら、それが素晴らしい内容なら発信者が誰であろうが、納得できるはずである。
そして、同様に内容の妥当性や合理性は発信者が既に出した結果とは全く関係ないはずである。
内容だけを見て信頼するかどうかを決めていけば、少なくとも知名度でかさ上げされた本来何の価値もない情報を鵜呑みにするリスクはグッと下がる。
これだけでも大きな無駄の削減であり、何より価値ある情報への近道にもなる。

巷間言われているような「発言の価値とは誰が言っているかである」という論説は情報の受取り手がそう誤解してくれている方がメリットがある人間のポジショントークである。

誤解なきよう言っておくが、私は知名度が高い人、そういう方たちの発言を頭ごなしに否定している訳ではない。何故なら、当然であるが知名度が高い人の中にも価値ある情報を提供してくれる人は数多く存在するからである。
しかし、その話に耳を傾ける理由がその人が言っているからではなく、内容で判断し選別した方が効果は期待できると言っているに過ぎない。

発信した人が誰かではなく、発信した内容そのものを見よ。

何故なら、結果を出したプロセスが正解とは限らないのだから。