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銀座の女【会話術・生き様編】

2021.04.22
銀座の女【会話術・生き様編】

突然ですが、皆さんは普段どんな方の言葉に影響を受けますか?恐らく、著名人や有名経営者など誰もが成功者と認める人の言葉に影響を受けやすいはずである。
私は誰が発信しようが、あくまでその意見そのものを見る。発信者の知名度や肩書は極力見ない。それはその意見の発信者が誰かという事とその意見の価値には何の関係もないこと、そしてそれを分かっている私も含めて人間は、その意見そのものではなく誰が言ったかということに影響を受けやすいということを知っているからである。

 

 

 

 

ゆりさんと私

私の知り合いにゆりさんという方がいる。ゆりさんとはTwitterで知り合い、何度かお酒を飲み、交流を深めてきた。
そして、現在はスタンドFMというラジオアプリで月に一度対談ライブをしている。彼女はホステス、私は営業職としてのキャリアを積み重ねており、『接客』という共通項がある。またお互い経営者(彼女はセレクトショップの経営者としての一面もある)ということもあって、人間関係や仕事、或いは社会問題まで幅広く議論を交わしている。

前回のブログにおいてはそんな彼女との出会い、驚嘆した彼女の行動、そして生きる姿勢について語った。
今回はスタンドFMにおける三回の対談から、私が感じ、そして驚いた彼女の会話術を紹介したい。「もっと会話がうまくなりたい!」そんな方のヒントになると思う。

 

 

 

 

ゆりさんの会話のスタイル

私がまず驚いたのは、ゆりさんが自身における会話の目的を決して見失わないことである。これほど見失わずに会話を完結できる人はそうはいないと思う。
そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれないが、ほとんどの人間は会話において目的を何度も何度も見失う。
例えば、営業職であれば、目的は本来契約獲得である。これ以外はない。少なくとも自身の会話でのポジション取りや選ぶ言葉は常にそこに向かっていなければならない。しかし、迂回や蛇行ならまだしも、契約から遠ざかるような会話をしている営業職も多い。
何故そうなるかと言うと、会話には相手がいるからである。相手がどういう言葉と反応を返すかが予測できないからである。
つまり、会話とは常に相手に翻弄されるモノ
なのである。

ところが、ゆりさんの会話にはそういうブレはほとんどない。
会話という戦場において、背骨ともいうべき軸がはっきりとあり、決してそれが揺らぐことがない。
私がどんなに突拍子のないことを言っても、それに翻弄されたり、揺れたりする事がない。
これには本当に驚いた。こんなことが出来るのは、私が知る限り、ゆりさんともう一人しかいない。

 

 

 

 

ゆりさんの会話の目的は「相手に気持ちよくなってもらう事」

でも、もっと驚いたのはその軸ともいうべき会話の目的が「相手に気持ちよくなってもらうこと」だと感じたことである。
(これは恐らく長年ホステスという仕事をしていくうちに自然と身についたスタイルだろう。私自身も営業という仕事を続けているうちに、普段の会話にもその影響が色濃く出るようになった。ゆりさんもそうなのかもしれない。つまり、お客様ではない私との対談においても、ホステスとして培ってきた姿勢が滲み出ているのではないだろうか。一種の職業病とも言えるかもしれないが、何とも見事な職業病である。)

 

 

 

 

私との比較

何故なら、営業職としての私は
【契約獲得←人間関係構築←自分を少しでも好きになってもらう事】
という順番に沿って会話をしており、これは(契約獲得という目的がなくなるだけで)普段の会話でも概ねそうだからだ。この事は意識してやっているというより、無意識にそうなっている。またある時点からこういうモノを目指した結果ではなく、自然とこういうスタイルになっただけである。勿論、無意識なのでその都度この流れに沿っているか確認しながら言葉を選んでいるのでなく、自分の話し方や話す内容を振り返るとそう分析できるというだけである。

それに比べ、ゆりさんは
【契約獲得(お店への来店)←人間関係構築←自分を好きになってもらう事
←お客様(相手)に気持ちよくなってもらうこと】
という順番になっていると感じる。
お客様に気持ちよくなってもらう事で、相手の気持ちを自身に手繰り寄せるスタイルに見える。
このスタイルが私との会話でも発揮されているのではないかと推測する。

このように見ていくと、私とゆりさんの会話のスタイルは似て非なるモノである。
何故なら、ゆりさんは自己PRよりお客様に気持ちよくなってもらうことを優先させ、逆に私は自己PRを優先させるからである。

例えば、会話の相手が歴史好きだとする。相手が歴史について存分に語っている時、私は私の知識がお客様の知識を上回っていようがいまいが気にせず自分の意見や知識を語る。その結果、空気を読めない奴だと思われる可能性より、「川端さん、すげえな」「こいつ、面白い奴だな」と思われる可能性に掛けるタイプである。

私はそういう考え方である。
しかし、ゆりさんは違う。勿論、自分の意見を堂々と主張するだけの胆力や知識も持ち合わせているが、相手の表情や雰囲気から気持ちを推し量りながら、決して相手のテンションが下がらないよう細かな配慮と工夫を言葉の端々に込めている。抽象的に言うなら、押しては引き、引いては押し、彼女と話していると、まるで同じ映画でも見ながらその感想を言い合っているような錯覚に陥るほどである。
『会話を決して対決の場にしない』、という事に長けた技術の持ち主である。
これは相手を説得する局面の多い営業という仕事を選んだ私と、ホステスという仕事で育まれたゆりさんとの違いなのかもしれない。
そう考えると、お客様との会話が主戦場である私たち二人の会話の哲学の違いは実に興味深いと思う。
(因みに、会話は常に相手があるものであり、また相手の性格をいくら知っているつもりでも、よかれと思って放った言葉が矢となってお客様の心に突き刺さってしまうこともままある。勿論、私にもゆりさんにもミスがゼロということはあり得ない。ひんしゅくを買うことも相手の気分を害すこともあるだろう。その確率が他の人よりも低いだけだ。)

 

 

 

 

驚くべきゆりさんの高度な技術

そして、それが最も現れているのが、【相槌の打ち方】である。
ゆりさんはほとんどの場合、「なるほどー」「うん」「そうですね」などと様々な相槌を使いこなし、決して相手の話の腰を折らない。ただ腰を折らないだけでなく、相槌を打ちながら、適当に合わせているだけという印象を相手に決して与えない。適切な相槌を瞬時に選び、自身の感嘆や同意、共感や納得という感情を相手に分かりやすく伝えながら、それら感情の度合いをも実に見事に相手に伝え、話しているこちらが気持ちよくなることに成功している。
これは私たちが考えるより相当高度なテクニックであり、これを会話が続く限りやり続けるのは相当な訓練と集中力が必要であり、はっきり言って素人には真似できない芸当だ。
まさに【七色の相槌】を操り、会話という戦場に虹を掛ける女である。

反対に、私は相槌を打つという行為自体が極端に少ない。それは私がゆりさんのように相槌を打ち続けると、わざとらしく、もしくはそっけなく聞こえて仕方ないことを知っているからである。
よって、私は会話の相手が話したことに対して、自分の意見や感想でその都度切り返していく。その返答によって、私の考え方や意見を伝え、自分を少しでも「面白い人間だ」と思ってもらうためだ。事実として、ゆりさんほど上手く絶妙な相槌が打てないからこそ編み出された苦肉の策とも言える。
しかし、私の切り返しにはこうしたことで相手からひんしゅくを買うリスクを常に抱えている。
それは、私の意見が耳障りになることも、お客様が褒めて欲しい、気付いて欲しい点と全く違うことを発言するリスクが必ず存在するからである。

そう考えると、ゆりさんの強弱をつけることに成功している【七色の相槌】は確かに理に適っていて、「見当外れな持ち上げや、自己主張の強い切り返しによる相手のテンションダウンのリスク」を極限まで下げ、また相手の気持ちをよくするには最も合理的なやり方である。

勿論、今私が語っているのはあくまで私の推測であって、ゆりさんに確認した訳ではないし、ゆりさん自身も無意識でやっているはずである。ホステスという仕事に夢中になって没頭した結果、自然と身に付いたモノだと思う。

 

 

 

 

ゆりさんが教えてくれる事

今回私が伝えたかったのは、本を出している人、メディアに登場する有名人、芸能人、著名な経営者などよりも素晴らしいノウハウや技術に到達した人間は意外と身近にいるという事である。SNSによって、半分はそれが証明され、残り半分は著名度の基準がSNSにおけるフォロワー数に変わるというブランドの移転が発生しただけだったという残念な事実である。

だから、SNSにおいても普段の人間関係においても、知名度や肩書ではなく、「面白そうだな」と感じた人とは【じっくりと話してみる】ことをお勧めする。話すのが難しい場合は、その人が書いたブログやツイートをじっくりと読んで欲しい。相手の肩書や社会的地位などではなく、自身の「なんか面白そうな人だな」という直感を信じた方がいい。その方が、結果としては面白き人に出会い、自身の人生が豊かになる確率はグッと上がる。

何故なら、もし、その人が本当に素晴らしいノウハウや見識を持っているなら、肩書や社会的地位を語らずともそれを感じ取ることがきっと出来るはずだからである。逆にそれがないと自身の素晴らしさを伝えられない人間はその時点で過去の人である。それよりは、【今何が出来るのか】を語れる人と親交を持つ方が断然面白く、自分のプラスにもなるのではないだろうか。

人生とは、自身の努力によってのみ作られるのではない。
出会いという偶然の連続が人生を形作り、色づいていくのである。
ならば、他人の評価に従って誰かを評価するのでなく、最も信頼すべき自身の直感に従って、自身の目に適った出会いを勝ち取るべきである。

実はゆりさんは現役銀座ナンバーワンホステスという輝かしい肩書を持っている。
でも、私は彼女が肩書やキャリアを語らずとも、彼女の凄さに気付く。恐らく多くの人が感じることが出来るはずである。そのくらい、彼女の会話の技術は高い。
こうした人が真のプロフェッショナルであり、最も付き合うべき人間であると思う。

現役銀座ナンバーワンホステスでありながら、【その肩書を決してひけらかすことなく、また驕る事ことなく常に己を磨き続けながら今の自分の技術だけで勝負する、そしてそれが出来る人間が誰よりもカッコいいことを証明している】、それがゆりさんだ。
そして、それが今を生きる全ての人に彼女が教えてくれることである。