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本当にあったいい話

2019.09.16
本当にあったいい話

先日、打合せの際にお客様から「川端さんのブログ、面白いよね。毎週月曜に会社帰りに読んでるよ。出来たら川端さんの営業マン時代のエピソードも紹介してほしいな」と言われた。
まだ営業経験が短い方も読んでいただいているようなので、今回は営業マンになりたての頃の私のエピソードを紹介したいと思う。

 

大学を卒業したら出版社に就職し取材先の記事を書きたいと思っていた私は、地元の出版社に面接に行った。だが、最終面接での社長からの「君は営業だ。営業をやったらきっと営業の仕事が好きになる」という言葉を真に受け、思いがけず広告の営業マンになった。
そして配属先である福井支店の責任者A次長と出会う。
A次長は根っからの営業マンで部下からも上層部からも一目置かれていた。A次長は他の新人営業マンと比べて個性も強く我流の色が強い私の一挙手一投足全てにダメ出しをしていった。特にロープレ(A次長がお客様、私たちが営業マンの役を演じ、ドアをノックする場面から商品説明を終え帰るまでの行動・動作を全てチェックする模擬トレーニング)においては徹底的にダメ出しされた。
特にA次長が強調していたのは「営業は入り込みが9割」だという事だった。これは小手先の営業テクニックや話術ではなく、お客様の事務所から入って挨拶から始まり、退出し事務所を後にするまでの一連の基本動作がお客様の心証を決定づけ契約の成否を決めるということだった。私は内心反発した。何故なら、私はA次長に「お前はお辞儀からして出来ていない」と再三再四指摘されていたからだ。逆に説明の仕方や相手の反論への切り返し・応酬話法には絶対の自信を持っていただけに「営業は入り込みが9割」は当時の私の完全な否定以外の何物でもなかったのだ。でも、毎日繰り返されるロープレでは真面目に取り組み、徐々にA次長が指摘してくれた基本動作が出来るようになっていった。しかし、やはり内心では「本当にそんなに大事なことなのかなあ」とずっと疑問を持っていた。

 

 

だが、A次長が言っていたことの本当の意味が分かる時が来た。
ある中古車販売店を訪問していた時のことだ。この会社の担当者はとても厳しい人で、うちのどのやり手の営業マンが訪問を繰り返しても全く他社から切り替えてくれなくて社内では有名だった。その担当者が突然「川端くん、きみのところで広告を出そうと思うんや」と言い出したのだ。私は契約の書類を交わした後、その方に「こんなことを聞くのも変かもしれないですが、どうしてうちと契約してくれたんですか?」と恐る恐る聞いてみた。すると、「川端くんは俺がどんなに厳しいことを言っても、帰り際のドアを出る時にきちんと頭を下げて帰っていった。それに感心したから他社から切り替えたんや」と平然と答えたのだった。

私はその方にはもちろん、A次長に激しく感謝した。いやそれ以上に「顧客が営業マンと契約するときは純粋にメリットを感じるから契約をするものだ」と思い込んでいた自分の愚かさに恥ずかしくなった。勿論、この一つの話が営業のすべてを物語るわけではないが、営業という仕事にのめり込めばのめり込むほどA次長の言っていた意味がよく分かってきた。

そして、今では自分の営業マンとしての骨格を作ってくれたのは、大学を卒業して初めて営業マンとしてデビューし、当初は徹底的に否定されたA次長の指導だったと思えるようになった。あれから20年近く経った今も、そしてこれからもそれは変わらない。
そして、もしあの時A次長に出会わず、営業テクニックをひけらかすようにして営業活動を行っていたら結果は出せなかったに違いない。まして、現在のように「俺は営業という仕事を愛している。それ故、この面白さや喜びを多くの営業マンや企業に噛み締めてもらいたい!」などとは間違っても思えなかっただろう。

そして、今も私はA次長に教わったことを一つ一つ確認しながら、営業活動を展開している。