ついこの前、ネットで「一流の営業マンは聞き上手」というような内容の記事を見た。
確かに営業の世界では、「聞き上手こそが最強の営業マンの形」というような説が以前からある。
私は再三再四強調しているように「営業マンに完成形も理想形もない」と考えている。口下手な方も結果を出せるし、聞き上手が最強とも思わない。
人それぞれいろんな形があり、どんな形でも結果は出せると思っている。
例えば、自分の商品説明が卓越していて、顧客の価値観や考え方を変えることが出来るなら、聞き上手になる必要など全くない。
何故なら聞き上手になることが目的なのではなく、契約を獲得することが目的であり、聞き上手になることはあくまでその一つのやり方・スタンスにすぎないからだ。
では聞き上手とは何か、敢えてこの通説に私なりに切り込んでみたい。
確かに商談において自分が説明をすることに多くのエネルギーを割いているより、商談の時間の大半を顧客の話を聞くことに割くというスタンスの方が、顧客の話に高い集中力で聞くことが出来、聞き逃しや聞き間違いも減るだろう。
食事をしながら聞いた話より、何もしていない状態で聞く話のほうが集中して聞けるのと同じだ。
更に言うなら、勘所(かんどころ)を短い時間で把握できるということもある。
最近買い物をしたことを思い出してみよう。買う前はいろんな条件をつけて探してみるが、それが難しいと分かるとどんどん妥協し始めるだろう。でも絶対妥協できないポイント、「これが叶わないならそもそも購入自体を諦める」というポイントはせいぜい2つか3つではないだろうか。これを以前紹介した私の元上司A次長は「勘所(かんどころ)」と呼んでいた。これは性格によるところがあると思うが、買うという前提がある場合、絶対に妥協できない条件はそれほど多くないということを意味している。大まかに言えば、偶然でも何でも勘所をクリアすると契約になるということだ。
だが、ほとんどの場合何が勘所でどの説明が結果として契約の後押しになったかは営業マンには分からない。もっと言うなら、契約した顧客自身にも分からないかもしれない。この偶然を必然にするのが、勘所を聞き出してしまうということだ。だが、これも顧客の立場になって考えれば分かると思うが、そう簡単に営業マン(もしくは売り手)に教えるわけがない。では、勘所を営業マンに話してしまう時はどのような時だろうか?やはり、通説通り聞き上手な人にはそのテクニックを駆使されて気づいたら口にしてしまうものなのだろうか?ここが聞き上手とは何なのかを知る鍵になってくる。
今一度自分に置き換えてみよう。
どうしても必要な時、今すぐ買わなければいけない状況という例外もあるだろうが、自分がどこまで相手に話すかを決めるのは相手への信頼度ではないだろうか?
何故ならテクニックは誰にでも通用するものなど無く、またその影響力は信頼感の有無と比べれば微々たるものだからだ。だから、聞き上手と言われる人のそのスタイルを担保する最大の要素は「人間として信用・信頼に足る人だ」という顧客の評価に他ならない。
要するに、聞き上手とは特殊なスキルでもなければ、営業マンの完成したスタイルでもない。相手の信頼を得ることで、相手の勘所を聞き出せる可能性が高まるというだけのことではないだろうか?
その為に人間として営業マンとして真面目に仕事にもお客様にも向き合い、約束を守る、迷惑をかけたら謝る、出来ないことは出来ない理由をきちんと説明して出来ないと伝えるという当たり前のことを地道に続けようと繰り返し訴えている。
結局は、営業のすべてのタスクの成否はあなたが顧客から信頼されているかどうか、にかかっている。