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部下の失敗にどう向き合うのか

2020.08.07
部下の失敗にどう向き合うのか

今更だが、私の専門は企業の営業戦略へのアドバイスである。その会社がどうやったら売上を伸ばせるのかをアドバイスする。具体的に何をやればいいかを提案する。そう思って起業した。しかし、いざ始めてみると、企業の悩みや不安の対象は自社の営業戦略に留まらなかった。それまでのコンサルタントがいかに独りよがりな提案をしていたかという事もあるが、それ以上に企業の悩みの受け皿が圧倒的に不足しているのである。これは事実だ。本来、営業戦略、人材育成、マーケティング、商品開発、これらはそれぞれ独立した専門家がいてしかるべきだと思う。しかし、私に相談した企業の多くは私の考え方や提案を聞くうちに、これら複数の分野に渡ってアドバイスを求めるようになっていった。サトミ営業相談所最大の嬉しい誤算である。そして、私が営業戦略立案に次いで、顧客から「目からウロコだった」と評価されたのは人材育成であった。人材育成に関して私ほど独自のスタイルを確立している人間は世界中探しても恐らくいないだろう。しかし、一見前代未聞で非常識にも見える私の考え方はきちんと説明すればほとんどの経営者は納得する。実際、私が企業でアドバイスをした営業スタッフは信じられないほど変わっていく。これらはたまたまではない。だからと言って、私は魔法を使えるわけではなく、私なりの哲学に則って必要だと信じたことだけを実行しているに過ぎない。ちょっと風変わりなことを言って注目や関心を集めようとしている訳ではないことはすぐに理解できると思う。

 

そして、今日はその中でも明日からでも出来る、是非改善して欲しいことを提案したい。

それは部下が失敗した時の対応だ。

 

まず、話をかみ砕いて説明するために例を挙げる。

あなたは居酒屋の店長だ。普段からフランクな接客で評判のいいスタッフYがいる。そのスタッフYが客から「接客態度が悪い」とクレームを受けた。さて、あなたはどうしますか?

恐らく多くの方はYに「普段からの接客態度に問題があったんじゃないか?」と言うのではないか?

これは店長自身が部下であるYがクレームを受けたことによって自身の評価が下がることに対する仕返し、或いは八つ当たり的な部分があると思う。つまり、Yや店のことを思い、叱るのでなく個人的な感情から対処が始まっているということだ。これは公私混同であり大問題だと思うが、こうした事は頻繁に起こる。

(これは長年サラリーマンをやっていると誰しも一度は経験したことがあるのではないだろうか。)

結論から言うと、これは誤りである。これは以前投稿した記事「部下がクレームを受けた時あなたはどうしますか?」と重複する部分があるのだが、客からの指摘が必ずしも妥当でない場合もある。所謂いちゃもんの場合もある。この一つのクレームを一事が万事と捉えるのか、それともたまたまクレーマーに捕まってしまったと捉えるのか。この判断が出来るのはYに比べて立場もキャリアもある店長であるあなたではない。Y本人だということを忘れてはならない

 

 

これは当たり前のことだと思うが、自分の接客がどのように客に喜ばれ、あるいはひんしゅくを買っているのかは本人が一番よく分かっている。いや本人にしか分からないはずだ。店長を含む周りのスタッフは本人の働き方の1割も見えていない。(勿論、客観的に自分を見ることは難しいし、はた目からしか分からないこともある。しかし、それでも本人は全ての自分の行動を知っている。どちらが自分の行動を知っているかは一目瞭然であると思う。)

 

そして、今回のクレームがたまたまなのか、起こるべくして起こったのかもまた本人が一番理解しているはずである。勿論、今後どうすべきかは本人に判断してもらうべきだ。たとえ、店長であるあなたが一方的にこうしろと指示を出しても、その改善要求をどこまで忠実にやるかは結局本人次第であるからだ。つまり、Y本人がその後どう行動するかは結局Y自身がこの事態をどう受け止めるかによるからだ。

 

間違っても、Yの言い分も聞かずに「普段の接客に問題があったのではないか?」などと決めつけるべきではない。ここは大事なポイントなので敢えて例え話の前提を変えてしまうのだが、本来普段の接客に問題があるのなら店長はその都度指導すべきであり、その権限を持っているからこそお店全体の売上や評価の全責任を負っているはずだ。その指導がなかったとしても、指導していて改善させることが出来なかったとしてもそれは等しく店長の責任である。客から指摘があって初めてYに指摘するのではただの結果論であり、管理能力の欠如と言われても反論の余地がないだろう。(一旦店長の責任問題は置いておくとして、もし普段から指摘している改善事項を客からも指摘されたなら厳しく叱っても、Yへの対応としては何の問題もない。むしろ、こういう時はきちんと怒りを露わにすべきである。またこの前段階があってのことなら、Yも素直にその指摘を受け入れることが出来るはずだ。)

 

 

どのような状況であれ、客からクレームを受けたことは事実であり、それは店にとってはマイナスである。これはYにはっきりと伝えてもいい。しかし、だからこそ、Yの接客に問題があったかどうかを管理者があえて細かく指摘する必要はない。繰り返しになるが、そんなことは本人が一番分かっているはずだ。フランクな接客で評判の良かったYなら尚更だろう。もし、ここで普段の接客に問題があったと断定するなら、Yのモチベーションは急激に低下する。持ち味であるフランクな接客も見られなくなるだろう。これでは最悪だ。

しかし、ビジネスの現場で一体何が起きているかというと、繰り返しになるが店長が「自分がクレームをもらったことが許せない」、「自分の評価が下がる」という理由で部下にダメ出しをするという事態だ。クレームを受けたスタッフのモチベーションがもともと高ければ高いほど、そのモチベーションが一気に奪われるだろう。真面目にやってきたと自負しているスタッフほど、それを否定された時の衝撃が大きい。しかし、こういう事態は残念ながらしょっちゅう起きる。

 

それでは私ならどうするかと言うと、私は部下なり、アドバイスする人の失敗に対する言い訳と言い分をまずは全て聞く。とことん聞く。しつこいようだが、私は優しい態度で接することによって人望を得たいのではない。モチベーションを損なうことなく、良い方向に自分の意志で向かって欲しいだけである。相手が上司だろうが部下だろうが同じ人間だ。部下にこれからも仕事に向き合ってもらうには部下を尊重し、本人に納得してもらうことは最低限必要なのではないだろうか。それには相手の言い訳・言い分を聞くのが最低限のマナーだと私は思う

 

人によっては感情的になり、無茶苦茶なことを言う人も確かにいる。しかし、じっくり聞いていると段々冷静になる。そして、ほとんどの場合は、「自分のここが悪かったような気がする」、「でもここは悪くない」という割と筋の通った結論に至る。自分の叱り方に自信がない管理者には特におすすめのやり方である。ポイントは反省という行動は誰かに強制されて出来ることじゃないということだ。自分が思うより先に「お前のここが悪い」、「反省しろ」と頭ごなしに言われると、簡単にモチベーションを失う。(勿論、厳しく指摘してもじっと耐えて結果に結びつけることが出来る者もいるだろう。しかし全体を見れば、ほとんどの人間はこうしたやり方ではマイナス方向にいく。どちらのやり方、考え方の方が合理的かは一目瞭然ではないだろうか。)

 

この例え話であれば、これで持ち味でありお店の魅力の一つであったYのフランクな接客自体が無くなってしまうのは真に勿体ない。そして、これでは本来必要である何故クレームが起きたのか、不可抗力だったのか、普段の接客に問題があったのかという本質にたどり着けない。何より、こうした事の積み重ねでスタッフのモチベーションは下がるし、そうしたYへの店長の態度は他のスタッフが見ているわけだ。こうして、スタッフ全体のモチベーションが下がり弱体化の道を進んでいく組織は山ほどある。

 

さて、まとめてみよう。当然であるが、お店にとって必要なのはスタッフそれぞれが成長し、お店の売上に貢献してもらうことのはずだ。そして、クレーム発生を含めた失敗は自分たちだけでは発見できない成長へのビッグチャンスである。しかし、現実には責任者がそのスタッフを締め上げるきっかけにしかなっていないのではないか。こういうことを言うと、どうしても多くの方が「川端さんは優しいから人望があるんですよね」などと言ってくるのであるが、私はあくまで目的を常に念頭に置いて考えると、結論はこうなるという風に考えているだけだ。私に言わせれば、それだけ職場の教育は意味不明・無意味な精神論、組織の論理で動いているということではないだろうか

 

この例え話の登場人物である店長⇒上司 Y⇒営業スタッフ と置き換えても結論は同じである。恐らくどんな組織・職種でも当てはまる話ではないだろうか。

 

部下の失敗は組織全体では日常茶飯事である。とてつもない数の失敗があるはずだ。しかし、考えようによっては失敗の度にモチベーションを下げていたものが10%でも成長へのきっかけになればどれほど自分たちの組織が成長していくかと考えてはどうだろうか。

失敗を成功の母とするか、モチベーションに冷や水をかけるきっかけにするかはここであなたがどう考えるかで決まる。

 

サトミ営業相談所は失敗を成長への原動力、チャンスに変える名手であり、それが出来る世界一合理的な営業の専門家なのである。