仕事をする上で、一番大切なことは何だろう?誰もが抱く素朴な疑問である。私は迷わず『真面目さ』と答える。面白くもなんともない答えであることは自覚しているが、これ以外の答えはない。今回はその事について解説していく。
ゆりさんとのラジオ番組で生まれた会話
私は銀座ホステスゆりさんとラジオアプリ内での番組で仕事やプライベートの問題について幅広く議論している。
その中でお互いの印象を語った時、私はゆりさんに対して「ゆりさんは真面目だと思います。だからどんなことをやっても必ず結果を出せる人だと思いました。」と語りかける場面があった。
その際に私は『仕事で一番大事なのは技術やテクニックじゃない。真面目さです。』と語った。
真面目さって何だろう?
私が言う真面目さとはこういうことである。
例えば、お客様からの回答は早い方がいいか、遅い方がいいかと聞かれれば、多くの人が早い方がいいと答えるだろう。
お客様と交わした約束は守った方はいいか、守らない方がいいかと聞かれれば、多くの人が守った方がいいと答えるだろう。
では、その後に約束が守れないことが判明したら、約束した事を忘れたふりをする、もしくはあたかもそんな約束などしていないかのような顔をしている方がいいか、正直に守れそうにないことを伝えた方がいいかと聞かれれば、ほとんどの人は正直に伝えるべきだと答えるはずである。
こうしたほとんどの人がこうすべきだと思っているような選択肢を選び続ける、言い換えると、自分が必要だと思うことをやり続けるということ、それが真面目であるという事であると私は思う。
こうしたことは具体的に言うとこうなるが、もっとシンプルに言えば誠実に仕事に(或いはお客様)に向き合うということだろう。
真面目さは誰でもクリアできているのか?
こんな風に言うと、「真面目さが大事?そんなの当たり前じゃないか?」と言われるだろうが、その当たり前のことを守り続ける人がどれほどいるだろうか?
一度や二度、あるいは1か月や2か月なら出来るだろう。
でも何年もの間、仕事上で出会う全ての人に対して、ほとんど漏れなく続けられる人はなかなかいない。
プライベートで出会う人に対してもと言えば、もっといない。
そして、守れていない多くの人は、守れて当たり前のことを守れていない、或いはビジネスにおいてそういう態度でお客様に接しているということになるのではないだろうか。
こうした事は目に見えない形でお客様の失望を招き、いかなるテクニックや技術、盛んに言われているようなIT化による効率化の恩恵を一瞬で破壊することになるのではないだろうか?
私はそう思う。
この話の中で、私はこうも語っている。
「真面目にやるってことは自分が真面目にやっているということと、他人がその真面目さを認めるってこと、気付くってことだと思うんです。その二つを満たして初めて真面目にやっているってことだと思うんです。
まあ誠実さと言ってもいいのかもしれないですけど。」
私がここで強調したのは、自分で真面目にやっているつもりでも、そうお客様に評価されるのは実は難しいということだ。
多くの営業職の実態
そしてお客様から「真面目である」という評価無くして次のステップに行く事など少ないのに、そのステップもクリアしないまま勝手にテクニックや技術などというお客様からそれほど求められていないモノの習得に奔走しているということである。
(これは「熱いからアイスクリームが食べたい」と思っている人に、「おススメのラーメン店がある」と言っているようなものである。)
これが多くの営業職に見られる【努力しているつもりなのに結果が出ない】という現象の正体である。
営業という仕事の真実
はっきり言ってしまえば、少なくとも営業という仕事において話す技術やテクニックはほとんど結果に影響など与えていない。
このことは知っておいた方がいいだろう。
営業という仕事において、最大の課題は「お客様との人間関係」であり、その構築に最も影響を与えるのは「お客様が営業職にいかに好感を抱いているか」であり、それを決めるのは多くの場合「お客様から見た営業職の真面目さ、誠実さ、一生懸命さ」である。
そして、この対談において対談相手であるゆりさんが抱いた疑問と問いかけによって話は意外な展開を生む。
ゆりさんはこう切り出した。
『川端さんはなんでその真面目さが大事っていうことに気づいたんですか?』
私が真面目さが大事と気付いた恥ずかしい経験
ゆりさんらしい、素朴ながら本質を突いた質問である。
私はこう答えている。
(ほぼ内容はそのままですが、音声を文字化することで分かりにくい部分は加工・修正しています)
川端『やっぱり自分は話がずっと上手いと思っていたんですよね。お客様から話に説得力があるって言われていて調子に乗っていたんですよ。
でも、ある時気付いたんですよね。『俺の契約のほとんどってそんなもんじゃないよね(話の説得力によって生まれた訳じゃないよね)』って。ただ、一生懸命だとか、そういうことじゃないかと思ったんですよ。そのきっかけっていうのは
ある時、お客様に『なんで僕と契約してくれたんですか?』って聞いたら、
『いやそれはあんたしつこいから』って言われたんですよね。
もうすごいびっくりしたんですよ。
僕の説明が完璧でお客様の心が動かされたから契約してくれたんだと思い込んでいたし、ほとんどそういうケースだと思い込んでいたんですよね、その時までは。
だけど、お客様はそんなことは見てなくて、『話が上手いからじゃなくて、あんたしつこいからだよ。だから話を聞いてあげようと思ったんだ。まあ確かに話は上手いけど。』って。
どうゆう風に心が動いて、契約に至ったかという順番を正確に言ってくれた訳です。
その時、思ったんですよね。
自分が結果を出した理由までは分かってないモノだなと。その時初めて分かったんです。
成功者の真似をしても結果が出ない簡単な理由
でもほとんどみんなそうでしょ?
結果を出している人っていうのは、自分のこれがいい訳であるって思い込んでいて、もっと言うなら、テクニックとかね、技術とか、考え方とかが俺の成功を生んでいる要因だと思いたい訳です。
その方がかっこいいからね。
でも上手くいっている時って、うまくいった理由ってちゃんと分析できていないと思うんですよね。
だって上手くいっている訳ですから。
自分の都合よく自分が評価されたい所を評価されているはずだと思い込みたい訳です。
だから、僕はこれが良くて上手くいったなんて分かっている人間はいないって言っているんです。どんなに結果を出している人間だっていないって言っているんです。そんなの分からないモンだよって。
真面目さが大事っていうのも、お客様の立場に立って考えたら、分かると思う。
例えば、自分が何かを契約しようって思ったら、話を聞こうと思った原因とか理由って、相手(営業職)が一生懸命であるってことが一番多い。
誰かの話を聞いてもいいかなと思う時、だいたい『この人一生懸命だな、ちゃんとしているし』って、最初はそんな理由なんです。そこから実際に話を聞いてみたら、商品も悪くないし説明もちゃんとしているから安心して契約したってことがほとんどだって自分で気づいたんです。
そして、そんな風に真面目にやってきて、結果的に技術が生まれたり向上していって、余計お客様から評価されるっていういい回転を生んでいるだけであって、
第一にはそのテクニックとかそういうことじゃなくて、ちゃんとしているっていうね、真面目であるっていう、そこに一番人間って共感を覚えると思います。応援してあげたいとか。
ビジネスの正体
だから、営業の世界でね、『お客様に会うメリットを提供しなさい』とかね『お客様のために何かやってあげなさい』とかそういう言説をよく見ますけどそんな事をする必要なんかないって。真面目にやりなさいと、普通にやりなさいと。
お客様の立場に立ったら、簡単にわかるよって。
その真面目さを伝えるのがどれだけ難しいか。
もっと言うならそれがなかなか出来ないから、真面目にやった人が浮き立つ訳ですよね。
でもそれができないのに、もっと難しいことをやろうとしているから、お客様はそんなこと求めてないよって。
それがビジネスの正体です。」
今回語ったこと一つ一つが、私がビジネスで一番大事なのは『真面目さ』であると考える理由である。