以前の【経営者も参加できる営業職講習ウロコウ】の記事は
おかげさまで大きな反響をいただきました。
多くの中小企業経営者の方から、ご意見やご感想をいただきました。
その内容を一つ一つ見てみると、
私が中小企業をどのように見つめ、
どのように分析しているのか、
そしてその向き合い方に共感いただいたようです。
そこで今回はもっと踏み込んで、
「中小企業経営者が私に営業活動の支援・アドバイスを依頼したら、
まずはどのような展開になるのか?」を伝えたいと思います。
しかし、ただ私が
自分自身がどのように仕事をしているのかを詳しく解説したところで、
読者から見れば、真実味が乏しい内容でしかありません。
何より営業職のためのこのシリーズの目的に沿った内容とは到底言えないでしょう。
そこで、一風変わった挑戦をしてみようと考えました。
それはミニ小説を作ってみようという事です。
これから書くことはあくまでフィクションです。
登場人物である野口社長は架空の人物であり、
全く同じ話が実際にあった訳ではありません。
ただ勿論全くのフィクションでもありません。
私自身が日頃相談を受ける際に気を付けていることと、
実際に相談した顧客から言われたことや感想、
指摘されたことを基に構成されています。
また、
私はこれまで何人もの経営者と出会い、
それぞれの企業の営業に関する助言・支援をしてきました。
中にはお付き合いが深く、何度も一緒にお酒を飲んだりする方もいます。
そうした中で、
そんな経営者の皆さんが私をどのように見つけ、
どんな気持ちで私に仕事の依頼をし、
最初の出会いで何が気になり、
どんなことを感じていたかをかなり聞くことが出来ました。
ですから、
話全体としてはフィクションだとしても、
私のどのような点にどのような感想や印象を抱いたのかは
全てお客様自身に教えていただいたことなので
かなり生々しく、リアリティのあるモノだと感じていただけると思います。
それは本文を読んでいただければ、
分かると思います。
ここまでで気づきのように、
今回の記事の目的は、私の仕事の広告です。
それでもこの【目から鱗のハウツー営業】シリーズで取り上げたのは、
お客様から見たリアルな営業職像が非常に具体的に描かれているからです。
つまり、
登場人物である中小企業経営者:お客様
私:営業職
と見立てて読んでいただければ、
お客様が営業職のどんな点や行動を観察し、
どのような部分で印象を決めているのかが
よく分かる内容になっています。
これが、このシリーズで取り上げた理由です。
小説【営業の専門家との出会い】
では、ミニ小説本題に入ります。
本文↓
野口の葛藤
少し古くなった見慣れた工場を横目で見ながら、
野口はこれまでの5年間を振り返っていた。
職人としての技術に自信を持っていた野口は
15年前に独立し、野口工業という町工場を立ち上げた。
不況で辛酸をなめたこともあったが、
持ち前の粘り強さと技術で何とか乗り切ってきた。
得意先も出来た。
現在は売上の大半はその得意先2社からの注文で成り立っていて、
経営も安定していた。
しかし、次から次へと倒産や自主廃業を繰り返す町工場を見て、
ずっと前からこのままではいけないと漠然とした不安を抱えていた。
何故なら、そうした町工場も元々は現在のうちのような状態から
得意先の状況の変化による注文の減少から倒産や自主廃業に追い込まれていたからだ。
「得意先だけに頼るのは危険だ」
「得意先次第の状況を脱したい」
そんな思いから10年前に新製品開発に着手し、
5年前にその努力は実り、ノネジという特殊なネジを開発した。
特許も取得した。
「これなら、新しいお客様が次々とが出来るはずだ」
そう確信した。
あの時の達成感や安心感、高揚した気分は今も忘れない。
しかし、そう甘くはなかった。
「ホームページで見ました!」と買ってくれたお客様は例外なく、
繰り返し買ってくれている。
評判もいい。
しかし、素晴らしい製品の割にはまるで売上が伸びない。
「いいモノを作れば、放っておいても売れる」
そんな風に思っていたのは幻想だったのか。
確かに、大きなメーカーのように
営業マンなんかいない。
社員は製造現場で働く職人がほとんどで、
ホームページからの問い合わせを待つだけだ。
問合せなどがあって初めて、
自分か主に設計を担当している息子が対応しているだけだ。
やっぱり、営業マンを雇わないといけないのか・・・
そう迷ったこともあったが、
売れれるかどうかも分からない営業マンに高い人件費を払うのは
流石にリスクが高すぎる。
そう二の足を踏んだ。
仲のいい町工場仲間に相談したり、
取引銀行に何人も経営コンサルタントを紹介してもらったりしたが、
どこも同じようなことを言うばかりでピンとこない。
経営セミナーにも参加した。
ビジネス書も読み漁った。
どれも状況を打開するヒントには至らなかった。
ある時製造業専門のコンサルタントがいると聞いて期待して相談したが、役に立たなかった。
「コンサルタントなんて、こんなもんなのか?」
「よく分からん専門用語や横文字を並べ立てているだけで、
こっちの気持ちや都合なんか少しも考えてくれていないじゃないか」
そんな事ばかりだった。
でも、諦めきれなかった。
自分が会社の将来をかけて開発したノネジだ。
自分も若くはない。もうすぐ65歳だ。
自分が元気なうちにヒット商品にしたい。
でも、何も手を打てないまま数年が経ってしまった。
異彩を放っている男との出会い
どうしたものかなと諦めかけていたその時だった。
面白半分で始めたTwitterのタイムラインを見ていたら、
明らかに一人だけ異彩を放っている男がいた。
サトミ営業相談所の川端という男だ。
その男は自分を【日本初の営業の専門家】だと名乗っている。
確かに言っている内容は胸に響くモノがある。
ドキッとさせるような過激な内容から、
反省させられるような内容だったり、
本当は優しい人なのかなと思ったり。
でもどこか気になる男だ。
そして、少なくとも今までに出会ったことのないタイプの人間だと思った。
しかし、製造業を専門とするコンサルタントに相談しても駄目だったのに、彼は何とかしてくれるのだろうか。
そんな不安も無いわけではなかった。
『まあいい。このまま時間が経つよりは・・』
そう思ってホームページからメールを送ってみた。
「注力している自社製品があるのですが、販売数が伸びません。
相談に乗ってもらえますか?」
すると、送って3時間もしないうちに
丁寧な返事が返ってきた。
偶然かもしれないが、桁違いのスピード感だ。
やはり、何かが違うと感じ始めてきた。
サトミ営業相談所のホームページを見てみると、
【初回相談は無料】とある。
初回はゼロから話を聞く、
話を聞いただけで終るかもしれない、
でもそれだけでコストが発生するのは不親切だという配慮からそういうシステムを取っているのだろう。
なかなか親切なシステムだ。
しかし、私は
『お金がかかってもいいから、最初から全力で相談に乗って欲しい』
そんな気持ちになっていた。
それはすぐに返ってきた彼からのメールにこう書いてあったからだ。
「私が持っている知識や経験全てを出し切って、
アドバイスさせていただきます」
有名企業で活躍していた輝かしい実績やキャリアを書き連ね、
「必ず売れる仕組みを作ります」
そうHPに謳っているコンサルタントは多いが、
こういう宣言は新鮮だった。
ベストを尽くすのはプロとして当たり前だが、
誠実で頼りになる気がした。
私は事前に商品の詳細や現在の販売データ、価格帯、販売不振の自分なりの分析を簡単に書き、
『初回から具体的に相談に乗って欲しいし、
勿論報酬も支払います。
ですので見積りを出しください」とメールで依頼した。
ゼロから状況を説明するということに時間を割くよりは、
ある程度事前に伝えておいて、
初回からお金を払ってでも核心に触れたかったからである。
またその期待に応えてくれそうな何かを川端さんからは感じたからである。
そう送ると見積りが添付されたメールに
「承知いたしました。
お見積りをお送りいたします。
こちらでご了承して頂けるなら発注書をお送りください。」と返ってきた。
私はすぐに発注書を送り返し、
「ではこちらでお願いします。9月24日17時にお越しください。」と返した。
9月24日17時
川端さんが来る。
ビシッとしたスーツに身を包んで、
ビシッとした雰囲気で来ると思い込んでいたが、
ノータイのジャケパンスタイルでカジュアルな服装だ。
正直恐ろしく手厳しい人間が来たら嫌だなと思っていたが、
とても物腰の柔らかい男だ。
初めて会ったウチの社員に自然に笑顔で挨拶を交わしている。
私は思わず「こんな営業マンならウチに欲しいな」と内心呟いていた。
名刺交換を済ますと、彼は自己紹介を始めた。
そして、まるで世間話はせず、
「今回はご依頼いただきありがとうございます。
まず最初にお聞きしたいのですが、
様々なコンサルタントがいる中で何故私に依頼していただきましたか?
また、私にどんなことを期待していらっしゃいますか?」と聞いてきた。
私は簡単に要望を伝えると、
川端さんは
「承知いたしました。
まず私の今日のテーマを伝えさせてください。
今日のテーマは今回の話が終わり、
私がこの社長室を出る瞬間に野口社長の中で
【新たにこれを始める、これをやるぞ!】という具体的な行動が一つでも見つかることです。
私のアドバイスは常にそれがテーマです」と言っていた。
私はその瞬間、はっとした。
そして気付いた。
これまで相談した相手(銀行やコンサルタント)との話を次々振り返って、
なるほどと思うことはあっても、
その後の行動の変化が全くなかったことを思い出した。
「あっ、そういうことか。
川端さんは自分のアドバイスは顧客の具体的行動の変化を追求するって言っていたけど、
こういうことを言っていたのか。」
振り返ってみると、
これまでのコンサルタントの話は全て何かボンヤリとして終わっていた。
どんなことを言われたのかも何も思い出せない。
でも最初に川端さん自身のテーマをはっきりと宣言されたことで、
私と川端さんで共有できるテーマが自然と設定された。
そして、私が川端さんのアドバイスを評価する指標をも設定できる、
という一挙両得のスタイルのような気がする。
自分自身に敢えて逃げられないハードルを課しながら、
顧客に親切に真摯に向き合う姿勢だ。
よほど自分の仕事に自信がないと出来ないことだと感心した。
野口の気付きと驚き
よく考えたら、
この時点で、川端さんは自身のノウハウや知識をまだ一切出していない。
何の提案もアドバイスもしていない。
しかし、私はこの時点で既に川端さんを高く評価していた。
少なくとも相談に値する信頼できる相手だと思っていた。
それは、知識や話すテクニックなどではなく、
何より誠実さと熱意、真面目さ、仕事に対する真摯さを感じたからだ。
話しやすい雰囲気もありがたい。
同時に、
『自分たちはノネジが売れていないと嘆く前に
既に買っていただいたお客様や
お問合せいただいたお客様に
こうした事が出来ていたのだろうか?
誠実さや熱意や真面目さを感じていただいていたのだろうか?
多分出来ていなかったはずだ』
そのように思い、背筋が冷たくなるのも感じていた。
本題に入った。
私は思ったままを正直に話した。
川端さんはこちらの考えややり方を全く否定しなかった。
むしろ、「○○しないのは何か理由はありますか?」という聞き方をする。
理由を言うと、「分かりました。」とだけ答える。
川端さんは時にじっくり黙って聞き入り、
時に私の話を遠慮なく遮ってきて、質問をぶつけてくる。
メモはほとんど取らない。
「お客様から発信される情報は話す内容だけではない。
それを話す様子や雰囲気も重要な情報だから極力視線を外したくない。
だから、極力メモは取らない」という考え方だそうだ。
むしろ、こちらが川端さんから受けた指摘やアドバイスをメモに取る回数が増えてくる。
こちらがメモを取りたそうにしていると、
川端さんは「後で何度同じことを聞いていただいても構いませんよ」と優しく言ってくれた。
途中から気付いたのだが、川端さんは
「あなたに教えてあげる」という姿勢をみじんも感じさせない人だ。
そして、上から目線で教えるというより、
解決に向かってお互いの知恵を出しましょう、というスタイルだ。
だから、こちらはこんなに話しやすく、
自然体でかつ平常心で話せるのだなと気付いた。
こうしたことが出来るコンサルタントもいなかった。
話しやすさ、というのは武器であるという発見も新鮮だった。
川端さんは徐々に営業の専門家としての本領を発揮し始めた。
難しい表現や専門用語は一切使わず、
最初からウチらでは到底実行できないような提案はしなかった。
これは冒頭の【野口工業として行動に移せる】というテーマに沿って提案してくれているからだろう。
ここからは更に驚きの連続だった。
自分もノネジの販売を軌道に乗せようと
コンサルタントに相談するだけに留まらず、
セミナーに行ったり、ビジネス書やマーケティング本を読み漁ったが、
全く聞いたことのない話、提案ばかりだった。
しかし、だからと言って、奇抜な提案などではない。
実にシンプルで納得できる内容ばかりだった。
「言われてみればそうだ」
「何でこんなことに気付かなかったんだろう」
そんな助言や提案ばかりだった。
そして、途中で気づいた。
川端さんは本で勉強してきたことではなく
「あくまで営業職として自分で経験した事を分析に分析を重ねて得た生きた知識」から
アドバイスしてくれているのだと気付いた。
川端さんはまるで出し惜しみすることなく、次々と提案してくれた。
ひとつどころか、いくつもすぐに実行したいことが出来たなと思ったころには数時間が経っていた。
あっと言う間だった。
話がひと段落したところで、川端さんは
「私としてはだいたいのことは聞けましたし、
現時点で提案できることはだいたいお伝えできました。
野口社長はいかがですか?」と聞いてきたので
私は
「大満足です。私達は万策尽きたと思っていたのに、
川端さんから見たらこんなにまだまだやることが残っていたのですね。
今すぐやりたいと思うことが何個もできました。
ありがとうございました。」と答えた。
川端さんは
「それは良かったです。
ですが、いきなり全部を一気にやるのではなく、
半年後も続けられる自信があることに絞って、
一つ二つをまずは確実に実行してみてください」
と言い残し、深々と頭を下げて帰っていった。
私は勿論次回のアドバイスも依頼した。
そして、社員にこういうアドバイスを受けたと打ち明けると、
皆が「確かに・・」と口をそろえて言ったのだった。
全体を振り返ってみると、
多分川端さんはモノを売るのに必要な根本的なことが自分の中に合って、
顧客がそれをどこまで出来ているかを一つ一つチェックしているのだろう。
そして、出来ていない点を見つけ出して、
目の前にいる顧客に実行可能なことを伝えるというスタンスなのだろう。
だから、業界や扱う商品が何であろうが、アドバイスが出来るのだろう。
私は思った。
確かに彼は本当に、
日本初の「営業の専門家」なのかもしれない、と。
完
最後に
最後まで、お読みいただき
ありがとうございました。
営業職の方は、
野口社長が弊所の営業職でもある私に対して
どのような時にどのようなことを感じたのかという視点で
読んでいただくと尚良いと思います。
中小企業経営者の方は私がどのようなスタンスでご依頼に対応しているのかをイメージ出来たと思います。
「川端の話は聞いてみたいが、やはりいきなり1対1は不安だ」という方は
まずは、
なるほどセミナーや営業職講習ウロコウのように他の参加者がいる場に是非ご参加ください。
【次回開催概要】
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日時:8月20日土曜10時~12時
会場:日暮里サニーホール第二会議室
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このような長文を最後までお読みいただき、
本当にありがとうございました。