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「目標は高い方がいい!」は誤り

2020.07.18
「目標は高い方がいい!」は誤り

私が顧客から時折聞かれることがある。それは目標の設定の仕方である。これは通常月間、年間の数値目標を指す。営業の世界ではバジェットまたは予算と呼ぶ場合もある。通常だと昨年の数字から上乗せして設定されるのだが、これは業界や会社やその時の景気によってかなりバラつきがあり、これが一般的というモノなど存在しない。私の相談相手に限って言えば、単に年間・月間の会社の全体目標をどれくらいの数値にすればいいのかという相談が多く、或いは一つの看板商品の販売目標はどれくらいが妥当なのかと聞かれる場合も多い。その話し合いの中で感じるのだが、「ビジネスの現場において目標は高く持たねばならない、高ければ高い方がいい、低い目標はダメだ」と思い込んでいる人が多いということだ。いきなり結論から入ってしまうが、これは誤りである。

 

 

まずは会社全体で出来るだけ高い目標を掲げなければならないというのは誤りである。それは=スタッフそれぞれに高い目標を落とし込む必要が生じるからである。スタッフが人間である以上、当然個性や性格、価値観に違いがあり、同じような基準で目標を設定すること自体が本来合理的とは言えない。学校で勉強を教える時も生徒の学力に応じて、学校そのものやクラスを分け、教える内容を分ける方が全体にとってメリットがあるのと全く同じ理由である。だからと言って、会社は学校のように何かを教えることを目的としたものではない。ビジネスの現場である。スタッフを育てること以上に、スタッフに結果を出してもらい、会社の売上に貢献してもらわなければ会社は成り立たないし、そこまでスタッフ一人一人の気持ちを汲みながら目標を細かく設定するのも現実難しいだろう。しかしだからこそ、全体としてパフォーマンスを出すために、まずはとにかく出来るだけ高い目標を掲げるということを辞めるべきだと私は考えているのである。

 

例えば、不振に陥っている営業スタッフがいたとしよう。その営業スタッフがその時目指すのはトップセールスではない。まずは平均的な結果を出す営業職を目指すべきである。「まずは平均点を取ろう」という目標を本人も管理者も共有した方が合理的だ。しかし、一番大事などこを目指すという合意なしに指導する管理者が大半であり、「営業センスがない」「空気が読めない」「お客さんの立場に立って考えていない」などほとんどの営業職がクリアしていないことを指摘してしまう。これが平均的なレベルを目指すであれば、まずは既存客の掘り起こしや訪問頻度の見直しなど今すぐに着手出来ることを自然にリストアップできる。また、平均的な結果を出すのであれば、他の営業スタッフがやっていて、自分がやっていないことを探し、まずはそれを着実にやるということが効果的であり、理にかなっている。本人も納得してやれるだろう。こうした話は「目標は高い方がいい」というビジネスの通説がいかに誤りであるかを分かりやすく伝える話であると思う。(そのほか、不振に陥っている営業職の多くは自分のやっていること全てに疑問を持ちがちであり、それは実に危険な状態である。良い行動や癖もきっとあるはずであり、悪い点をひたすら指摘するというのはそういう意味でも最も不合理なやり方である。)

 

 

もう少し具体的に言うと、スタッフに実現不可能だと思われてしまうほど高い目標でなく、それぞれのスタッフにとって「今の自分ならちょっと厳しい、でも少し頑張れば達成できそうだ」というくらいの目標がベストであろうと思う。これくらいが一番達成にこだわれるのではないだろうか。少なくとも私はそう考える。(低すぎる目標だと達成した時の喜びが小さく勿体ない部分もあるが、高すぎれば目標に現実味を感じることができない。これは営業スタッフに限ったことではないが、数字を聞いた瞬間まるで達成の見込みが立たない目標など誰も達成にこだわらない。それでは目標の意味や効果は半減してしまう。また、そうした目標は与えられたスタッフからすれば、いい加減な目標設定をされたと思うから当然のことだと思う。)

そして、その中で出来るだけ多くのスタッフに達成する喜びを感じてもらい、それをさらなるモチベーションの向上につなげて欲しい。その積み重ねこそが組織が最もパフォーマンスを発揮する原動力であり、理想の目標設定であると私は思う。こういうと、反論が返ってくるかもしれない。事実、相談者に対して「高い目標を課せばいいというものではない」と言うと、「志は高く持たないと・・・」「低い目標で満足してもらっても困る」「やっぱり優秀な社員は目標を高く持ってるから結果を出すんだと思うんですよ」という反論が返ってくる。

しかし、間違ってはいけないのは以下3点である

1.会社もスタッフも実はほぼ例外なく出来るだけ結果を出したい

2.優秀なスタッフが結果を出しているのは目標が高いからではない

3.目標の高さと結果には何の相関関係もない

 

一旦話は変わるが、皆さんは「262の法則」をご存じだろうか。簡単に言えば、組織においては2割が優秀、6割が普通、2割がダメスタッフで構成されるという法則だ。これは実感としてイメージしやすいと思うが、例えば人気が高く採用のハードルが高い超有名企業のダメスタッフがそのレベルの高い会社の中でのみダメなだけであり、他の企業に行けば即座に活躍するのか?という問題である。これも実感として分かると思うが、大して働きを見せられないというのがほとんどである。実際、大手企業に勤めるベテラン社員の中には他のどの企業でも通用しないような人は数多く存在する。これはよく考えれば分かることである。私が常々主張している『仕事で結果に一番影響を与えるのは能力じゃない、その人のモチベーションである』ということだ。どのようなスタッフも自分が会社やお店でどれくらい評価され、必要とされているかぐらいは把握している。優秀さを認められ自分がこの会社から必要とされていると思っているスタッフは高いモチベーションを容易に維持できるのに対して、酷評されているスタッフは積極的に仕事に取り組むことも徐々になくなり、新しい仕事を憶えようとか、新しいやり方を試してみようとなど思えないはずである。もともと持っていた頭の良さ、能力もこれでは向上するはずがない。このようにして、採用基準そのものが高く本来全員のレベルが高いはずの大手企業においてさえ、他のどの企業に行っても通用しないスタッフが常に一定数存在するのはこうした事情と言える。

(少々仕事が雑で要領が悪くても偶然結果が出てしまい、会社から評価されることで高いモチベーションをキープし、次々と新しい挑戦を繰り返すことで更に結果を出し続ける人間は周りにいないだろうか。これはあなたや私の周りにたまたま起きた奇跡ではなく、どこの会社にも一定数いる存在だ。これはその人が持つ運という要素も強いし、周りから好かれる人間かどうかという事も大きい。)

私がこの話で何が言いたいかというと、どんなに頭脳明晰だろうが高いスキルを持っていようが、何かをきっかけとして会社から評価されてないと分かってしまえばモチベーションを維持するのは難しい、そしてモチベーションを失ったスタッフが会社に貢献することはないということだ。だからこそ、目標を立てる際には、その目的が何なのかということに立ち戻って欲しいということだ。その人に目標を設定することで『明確なゴールを作り出し、奮起を促すことで、会社の売上に少しでも貢献して欲しい』という事のはずである。しかし、ビジネスの現場で何が起きているかというと、高すぎる目標を課せられ、その目標に達成していないと即座にダメスタッフのレッテルを張られ、結果としてモチベーションが奪われパフォーマンスも下がるという逆の効用を生んでいるということだ。これは営業職に限らない。

 

また、目標の高さと結果にははっきり言って、何の相関関係もない。優秀な社員はストイックで高い目標を自らに課しているから結果を出しているのではない。モチベーションが高く、自分の能力に自信が持てるから、高い目標を自らに課すことが出来るというだけだ。結局はどのように高い目標を課せられても、それをどう捉えるかはその人個人の性格や価値観の問題だ。そして、どのように捉えるかという事について性格や価値観以外に何が一番影響を与えるかというと簡単である。繰り返しになるが、その人のモチベーションである。これ以外にはない。であれば、実現不可能だと思われてしまうほど高い目標でなく、今の自分ならちょっと厳しい、でも少し頑張れば達成できそうだというくらいの目標がベストであろうと思う。

 

もっと踏み込んでいえば、結果としてスタッフの4割程度が達成するくらいの目標値がベストであろうと思う。これくらいがスタッフにとってもう少し頑張れば達成できそうだと最も思われるラインだろうと私は思う。会社によっては全体の1割しか達成しないような目標を課している場合もあるが、それは逆効果であると思う。何故なら大半が達成しない目標とは「目標を達成しない方が普通」であり、達成しなくともよいというメッセージになり兼ねないからである。これが5割以上だと普通にやっていれば達成する。つまり、達成したいとベストを尽くすスタッフを最大限増やすことと、出来るだけ多くのスタッフに達成の喜びや満足感を感じてもらってさらなるモチベーションの向上を狙うという意味でバランスがいいのはこれくらいのラインだということだ。どのような目標を与えても感じ方はそれぞれ違う。違って当然だ。だからこそ、全体としてモチベーションの総量を最大化させ、組織全体のパフォーマンスを考えるのなら達成者4割くらいを目安として目標設定するのが最も合理的と思う。

(企業全体、或いはお店の年間売上目標、もしくは特定の商品の販売目標なども普通にやっていては達成できない、少し頑張れば達成できそうだとスタッフが思えるラインがベストだという基本は変わらないと私は思う)

 

私はNHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』が好きでよく見ていていつも思うのだが、仕事においてで抜きん出た結果を出す人には共通点がある。周りはズバ抜けた実績を出したという結果だけを見ているが、こうした人ほど誰よりも進化のプロセスを現在進行中であるということだ。本来、それ程のレベルになればそれ以上努力する必要はないのかもしれない。少なくとも傍から見ればそう思うだろう。しかし、そうしたレベルが高い人ほどその進化を止めようとはしない。ここまでくればいいという気持ちのない人たちなのだと思う。その差を生んでいるのは何かというと、才能や能力ではない。そう、モチベーションなのである。

ここに着目すれば、高い目標を全員に課すことによって実際に何が起きているかが冷静に分析できるようになるはずだ。そうすれば、どの程度の目標が合理性が高いか分かるはずである。勿論、ちょっと頑張れば達成できそうな数字と言っても、業界によっても会社によっても取扱商品によっても全て違う。それは自分たちで定義するしかない。それでも分からなければ私に聞いて欲しい。スタッフのモチベーションを高めることに関しては世界一と言われ、数々のスタッフを次々と開花させてきたサトミ営業相談所の川端に聞いて頂ければ一つ一つ丁寧にアドバイスさせて頂きます。