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商談のストーリー

2020.12.18
商談のストーリー

先日、ある営業ウーマンから

「商談のストーリーが描けなくて困っています」と打ち明けられた。

私は「商談のストーリーはそんなにキッチリ描いておく必要などありませんよ。」と答えた。

彼女はキョトンとしていたので

私は「これは私のスタイルですが、『提案を聞かせて下さい』とお客様に言われて2,3分話せる程度で十分です。だって、ストーリーなんか描いてもその通りにならないでしょ?」

ここまで読んだあなたはどう思われたであろうか?

 

※商談のストーリーを描くとは、商談を前に、お客様の情報を基にこういう流れで契約に導いていこう、こういう展開になるだろうからこういう提案をしようと描いてシナリオを準備しておくことである。営業職なりに想定される台本を作っておくとも言えるし、シュミレーションを行っておくやり方とも言える。

営業の世界では常識中の常識であり、営業職たるものほぼ全員が商談の準備の基本中の基本として教わることである。

それを考えると、彼女がキョトンとしたのは至極当然の反応であると言える。

 

検索してみると、お客様の心理を「注意、興味、連想、欲望、比較、確信、決断」と細かく分け、さらにそれぞれの段階で「狙い、顧客、手段、提供情報」の項目別に商談シートなるモノを埋めていきストーリーを組み立てると紹介しているモノもあった。

このように説明を読んだ多くの方は準備として当然必要だろうと思っただろう。

しかし、私は冒頭語ったように無意味だから、そこまできっちりとやる必要はないと考えている。

 

ここからは私個人の考え方なので、気楽に読んで欲しい。

何故なら『仕事に正解はないというのは誤りである。その人によって正解はあり、そういう意味では正解は無数にある』と考えているからだ。自分に合った、自分が最も心地いいやり方を見つければいいと考えているのである。

 

それを踏まえて敢えて私の結論を繰り返す、商談のストーリーなどきっちりやる必要などない。理由はそれ通りにいくことなどほとんどないからである。

 

では、なぜ2,3分話す程度用意すべきかと言うと、お客様がせっかく時間を取ってくれて、「提案を聞かせて欲しい」と聞く姿勢になった時に何も話せないのでは、お客様に失礼だからである。

言い換えれば、商談のストーリーを描いてもそれ通りいかないから描く必要も意味もない、しかし、全く話す内容が決まってないのでは折角時間を取ってくれたお客様に失礼だから、最低限のラインとして2,3分程度話せる程度の準備でいいということだ。

付け加えるなら、プレゼン資料も同様である。2,3分程度話す内容に紐づいたモノで本来十分である。顧客担当者が上席に見せる為、もしくは内容そのものよりボリュームのあるもの自体を必要としている時のみ用意すべき類のモノであり、冊子になるような資料など多くの担当者は読む必要もないし、読みたくもない。

私が思うに商談のストーリーが描けないのは、本来お客様の情報(状況・予算・考え方等々)が乏しいからである。もっと言うなら、それらの情報から勘所(ここさえクリアすれば契約になるというポイント)を特定できれば、そのお客様へのその時点での営業活動の大半は終わったも当然である。)

 

現実には、業界や扱う商品やサービスによって、相当なバラつきがあるのは私も理解しているつもりである。だから、私はどの業界でもある程度あてはまるような説明をしている。

 

私自身はキャリアを積み上げれば積み上げるほど、商談のストーリーをほとんど描かずに商談に臨むようになってきた。それは自分自身がほとんどのお客様の質問や指摘に対応する反射神経と応酬話法を培ってきたこと、そして、商談のストーリーを描くことでズレを感じながらもそれに沿って話そうとしてしまうデメリットから事前に描いておくことで得られる安心感を差し引いて、デメリットの方が大きいと判断した事による。

 

更に言うと、根本的な誤解としてあるのは、多くの営業職が『商談はあらゆる手段・ツールやテクニックを駆使して、お客様を説得し、それによってお客様の購買意欲に変化を与えるモノ』と思い込んでいる事である。

しかし、商談は相手を説得することではない。お客様と自社の立場の違いを確認し、それを埋めていくという作業である。

その中で商談が上手くいったり、上手くいかなかったりするのは、営業職側の誤解とお客様の心変わりがあるからである。逆に言えば、事前にお客様の情報が完全に営業職側の手元にあり、この二つがなければ残るはこちらがその要望にどう応えるのかというだけである。

しかし、現実にはどんなに優秀な営業職でもお客様の情報の分析には誤解やズレは必ず生じる。だからこそ、商談の意味とは確認なのである。説得でないのは、最終的に決めるのはお客様であり、我々が思っているほど、お客様は徹頭徹尾営業職のコントロール下にないからだ。

どんなに優秀な営業職であっても、完ぺきにお客様の状況を捉えることなど出来ないし、またお客様の心理や状態は刻一刻と変わる。ライバル企業の提案によって変わることもあるし、お客様の会社の都合で変わることもしょっちゅうある。お客様の担当者のその時の気分や機嫌にも影響を受ける。

これらの理由から、たとえ商談のストーリーを必死に描いていてもそれ通りならないことが多い訳である。

それ通りにならないストーリーを描いて、またそれを描いたことでそれを話すことにこだわってしまうくらいなら、ひんしゅくを買わない最低ラインの用意で商談に臨んだ方が柔軟に対応できると私は考える。

 

むしろ、商談を上手く進めるにはストーリーは出来るだけ決めず、お客様の情報を集め、勘所を確認することに集中した方がはるかに契約に近付く

またそこで陥りやすいのは、ではどのような聞き方をすれば、お客様の情報を聞き出せるのかと考えてしまう事である。

お客様の情報を聞き出すテクニックがどこかに存在していて、それを知らないから聞き出すことが出来ないのではないか。だから、上手い聞き出し方を知りたいと思う営業職は多い。

しかし、ここも実は違う。

聞き出すのにテクニックなど要らない。むしろ、こうしたやり取りを自然と出来るほどの人間関係を構築するというのが最も効果的で合理的な考え方であり、それが出来るかどうかが結果の明暗を分けるのである。

 

まとめるとこうだ。

商談においてストーリーを描いておくことはそれほど重要じゃない。

お客様に対して失礼にあたらない2,3分話す程度の準備で十分。

最も重要なのはお客様の状況・本音を聞き出すこと。

その成否を握るのは、お客様との人間関係の構築。

 

 

 

順番を逆にすれば更に分かりやすい。

お客様との人間関係の構築

⇒お客様の情報(状況・考え方・他社の検討状況・勘所)の聞き取り

⇒お客様と自社の立場の違いを確認

その違いから、お客様への譲歩の依頼と社内調整を行い、回答

契約か、停滞か、諦めるかの結論を伝える。

 

営業とはこの繰り返しであり、商談とはそのプロセスの一つに過ぎない。

そして、その全てのプロセスの成否を握っているのは

一つ目のお客様との人間関係の構築にある。

 

こう考えれば、商談のストーリーを描くことがいかに契約締結にとって

些細なことか、そしてそれを作り上げることにこだわる事がいかに無意味か分かるだろう。

 

こうした何となく存在しているルーチンワークや常識、或いは本人がやる意味やメリットを見いだせないモノはバッサリと無くした方がいい。何故なら、それによって本人が自由にやれる時間を増やし、自身がやりたいと思ったことに時間とエネルギーを割けるようになるからだ。

こうしたシンプルなプロセスにこだわり抜くからこそ、サトミ営業相談所は世界一優しく、世界一合理的な営業の専門家と言われるのである。

 

【後日談】

翌日彼女は自身のラジオ配信において、こう話している。

「川端さんが的を射たことを仰って下さって、ストーリーを決めたとしても、ほとんどそのストーリーからズレることの方が多いんじゃない?って言ってくださって・・・

だから、がっちり決める必要なんかないよって。ああ確かに・・・。

だから、私もガチガチに商談について構えていたところを、もう少し相手がどういう風に考えているかっていうところを踏まえて話ができるように。あんまりストーリーにこだわることをやめました。

あとは川端さんが言っていたことはお客さんと仲良くなりなさい。川端さんはお客さんとお昼を食べたり、カフェに誘ったり、何だったらお酒を交わしたりするらしいんです。

私はそういうことをやったことがなかったので、その方法がめちゃくちゃびっくりして。」