先日、ある会社の社長から「ウチの営業部ははっきり言って実力不足だ。育ってないし。だから、川端さんに会社全体へのアドバイスと俺がもっと伸びて欲しいと思っている営業マン数人の面倒を見て欲しいと思っている」と言われた。その上で「俺の直属の部下の営業部長に相談してみて、また連絡するから待ってて欲しい」とも言われた。
しかし、数日後その社長からお電話があり、「営業部長が、『川端さんがいくら優秀な人でもウチの業界が分からない人にアドバイスは無理でしょう』というからダメだった」と言われた。
こうした話は実は結構多い。また多くの方に見られる誤解だと思うので、今回は「業界が違えばアドバイスは出来ないのか?」という疑問に答えたい。
結論から言って、その業界の知識が無ければアドバイスが出来ないということは全くないと私は思う。それはヘッドハンティングで他の業界から会社を移り実績を残す人がいくらでもいることが何よりも証明しているはずだ。またヘッドハンティングではなくとも、全く違う業界から転職して結果を残す営業マンもいくらでもいる。私自身も全く異なる業界に3度の転職をしているが、営業に関して言えば、やるべきことや基本的な素養は何も変わらないし、その業界のことを理解するのにそれほど時間はかからない。もっと言うなら、その会社の営業マンの売上はその業界歴が長い順になっているのだろうか、もしくは商品知識が豊富な順になっているのだろうか、そんな会社はほとんど無いだろう。これらのことは、その業界や商品の特質を知らなければ売れない、もしくは売上拡大のアドバイスなどできないという一見もっともらしい常識にとらわれているだけだ。これは客観的に考えれば簡単に理解できることだと思うし、こうした意見が社内で正論としてまかり通ってしまうことは組織としてはやや硬直的だと私は思う。(強い組織であればあるほど様々な意見が通る柔軟性や風通しの良さを持っているし、比較的弱ければ常識的なことしか通らない。さらに弱くなると責任者と意見が違えば正論であっても発言すらできないということもしばしば起こる。当然こうした組織はどんどん弱体化する。)
先週ブログで書いたように消費者は必ず商品やサービスにその売り手の評価を乗せて(もしくは逆で売り手に商品やサービスの評価を乗せているのかもしれない)、そこで買うかどうかを決める。買うモノによってそのバランスは変わるかもしれないが、根本はそれほど変わらないと私は思う。それが人がモノを買う普遍性というものだ。売る側(営業マン側)にも普遍性はある。その会社の人員やシステムによって、合っているもの・やりやすい方法論が違うだけで、「現在の既存客を大切にし、新規開拓を常に行い、競合を意識し、競合に出来ないことを地道に探す・増やす」という根本はあらゆる営業活動において不変・普遍のものだ。
だが、ビジネスの現場で何が起こっているかというと、会社の上層部或いは特定の人の的外れな指示で全体が動いてしまい、その当然の帰結として営業マンのモチベーションが失われ、パフォーマンスも落ちるという事態だ。それをアドバイス・修正するのはその会社・業界からむしろ離れている人の方がいい。
これは私の持論だが、勝負の世界では誰もが耳を疑うような奇策が勝利を得ることは少ない。実行されてみて初めて「なんで今までこんな簡単なことを気付かなかったのか(やらなかったのか)?」と思うような一手が勝利をもたらすことが多いのだ。それには自分自身がとことん客観的に考えてみるか、そもそも客観的な立場にいる人に見てもらえばいいと私は言っているのだ。
因みに、その最強の『客観的な立場にいる人』こそがサトミ営業相談所の川端だ。