少し前に弊所ホームページにこのような問い合わせがあった。
『お世話になります。設立したてのベンチャー企業に勤める●●歳の営業マンなのですが、どうも自分自身が商材に納得できていなくて上手く提案ができなくて困っています。相談に乗って頂けましたら幸いです。宜しくお願い致します。』
まずはお会いする時間(もしくは電話で話す時間)が取れますか?と聞き、会うことが決まった。
お会いし、私は彼の話を聞いた。
彼はとても真面目で誠実な人だ。話す内容も論理的で、営業マンとしての資質は十分すぎるほど持っている。
彼の話を大まかに箇条書きにするとこのような感じだ。
・彼は最近設立したばかりのシステム会社の営業マン。
・彼の提案するシステムはライバル会社と比べて、全体としてのスペックも劣っているが、価格が高い。
・営業方法は顧客が比較的空いている時間帯に集中的にテレアポをする。でも、なかなかアポが取れない。
・相談できる相手がいない。
私は彼の話を聞いて、最大の問題点は「彼自身が自社のシステムに対して『これは売れない、こんなシステムを契約してもらったとしても顧客に申し訳ない』と思っていることだと感じた。
結果として、営業活動そのものが苦痛であり、営業マンにとって最も大事なモチベーションが大きく損なわれた状態で日々の仕事に取り組んでいるということだ。
私は「トータルでスペックが劣っているのは分かりました。それで価格が高くては売れないのは当然だと思います。では、どんな小さなことでもいいので、他社と比べて少しでもいいかもしれないという部分はどんな点ですか?」と聞いた。
すると彼は「うーん、●●はいいかもしれないですね」と答えた。
私は「●●、確かにこれはいいですね。では提案の際には顧客に対して『ウチは料金は高いですよ。その分、●●はいいと思います』と言ってみるのはいかがですか?」と提案した。
私は、彼が「こんなシステムを契約してくれるわけがない、仮に契約してくれたとしても顧客に申し訳ない」という気持ちを持っているのであれば、メリットとデメリットを自分から言い切ってしまうことでいくらかその気持ちを和らげようと思ったのだ。(また、こうした説明の仕方の方が耳を傾けてくれる顧客も一定数いる。)
その上で「テレアポも止めましょう。いきなり完全にやめるのはさすがに抵抗があるのであれば少しずつでもいいので、飛び込み営業をしてはいかがですか?テレアポは、アポと言う最も効果的にPRが出来る局面を効率的に作るためのものです。でもアポ自体が取れていない時点で目的を果たせていない。勿論効率的でもない。であれば、最初から断られてもお互い顔を合わせた方がいい展開を生みやすいと思いますよ。」と提案した。
私がアドバイスしたのはこの2点だけである。
その後、彼からこのようなメールが送られてきた。
『本日はご相談に乗って頂きありがとうございました。
最近はモチベーションも上がらず、ネガティヴな思考ばかりで淡々と生産性のない同じルーティーンをこなしてメンタルを削っていただけだったのですが、違う視点でのアドバイスを頂けたことにより何か引っかかっていたものが取れたような気がします。
考え方一つでこうも気持ちが楽になるとは思いませんでした。商材の欠点や罪悪感、会社としての在り方に囚われすぎていたかもしれません。
今後は個人としての喜びを少しでも見つけられるような視点で営業を楽しんで行けるように努力したいと思います。
本日は本当にありがとうございました。』
彼の真面目で誠実な人柄は今後営業活動においてこれ以上ない武器になるだろう。でも、彼のような優秀な営業マンでさえも一旦モチベーションが失われてしまうと、このような状況に陥ってしまう。勿論、こうした場合のほとんどは彼のような営業マンに原因はないが、営業の現場では多く見られることでもある。
私は企業に対して営業戦略を共に立案するという本来の仕事に加え、その会社に在籍する営業マンにアドバイスを送るというケースも多い。これらはひとえに「自社の営業力を高めたい」という企業や組織の目的達成には、理にかなった営業戦略と実働部隊である営業マンのモチベーションが両輪であることを知り尽くしているからだ。
こうした積み重ねを地道に重ねている自負があるからこそ、サトミ営業相談所は「日本初の営業の専門家」を名乗れるのである。
最後に、
私は彼を応援している。