先日、ある営業マンから「川端さん、どうしても好きになれないお客さんがいて・・・でも上司に相談したら『営業マンなら好き嫌いをなくさないと』と言われ・・上司の言うことも分かるのですが・・確かに営業マンがお客さんにより好みしていたら仕事にならないですよね・・・」と相談というよりは愚痴をこぼされた。
私は「嫌いな人を好きになる必要なんてないですよ」と答えた。
こうした話は多い。私が知る限りでも、こうしたことに悩んでいる営業マンはかなりいる。これは指導者・上司側の指導の問題というよりは「営業マンはどんな相手ともうまく人間関係を構築できなくてはならない、好き嫌いをしてはならない」という思い込みがあるからではないだろうか。
この営業マンはまだ恵まれている方かもしれない。実際には「あのお客さん、マジむかつくんですよ」なんて上司にとても言えない営業マンの方がはるかに多いはずだ。多くは「そんなの自分のわがままだから言えない」と思っているはずだ。
結論から言おう。営業マンたるもの、どんな顧客とも仲良くならなければならないなんてことはない。まして全ての顧客を嫌いになってはいけないなんてことはもっとない。私は真逆だと思う。営業という仕事をしているからこそ、好き嫌いしても何の問題もないと思う。営業職とは好き嫌いが許される仕事と言えるだろう。営業はAという顧客がダメなら、自分でB.Cと他の顧客を次々と探せばいいからだ。(もっと言うなら、ほかの顧客に挑戦してみてやっぱりAを攻略しないとダメだと思ってもう一度Aと向き合っても何の問題もないし、積極的にそうすべきだ。むしろ、悶々とした気持ちでAに通い続ける方が膨大な無駄と言えるだろう。)営業は何社訪問したうちの何件受注、いくら受注というように勝率を争うものではない。大まかに言えば、あくまで勝ち数を争うものだ。究極を言えば、金額と件数だけを求められている。どの顧客からというのは本来は法的に、そして支払い面で問題が無ければ、どこでもいいはずだ。それを言うと、会社が定めた重要攻略先があるからその担当者に対して好き嫌いなど許されないなどと反論されそうだが、そもそも会社が定めた重要攻略先は目標数字を達成するために定めたものであり、営業マンが他の顧客で自分自身の目標を達成してしまえば何の問題もないはずだ。もっと言うなら、重要攻略先の攻略がそれほど大事ならば、苦手だと断言している営業マンを担当から外すべきではないか。その方が会社にとっても、その営業マンにとっても、何よりその顧客にとってもいいはずだ。
そもそも会社が特定の重要攻略先を決めている時点でそれは好き嫌いではないのだろうか。会社という組織にとって都合のいい顧客を選んでいるのは利益優先だから可で、営業マン個人は好き嫌いをしてはならないというのはダブルスタンダードではないかと思う。
話はそれたが、人は好きになったものを理由なく嫌いになれない。それと同じで嫌いなものを理由なく好きになどなれない。これは営業マンである以前に人間なのだから当然のことだ。だからこそ、仕事を嫌いになってしまうような指導をしてはならないと指導者側に求めているのだ。どんな客にも対応できるのが理想には違いないが、繰り返し言っているように指導者側が営業マン全員に『理想の営業マン像に近づけ』という指導をするのは間違っている。野球で言えば、全員に『エースで4番を目指せ!』と指導するのと同じで、非合理的であるだけでなく、最初から高すぎる目標を課せられた営業マンがモチベーションを失ってしまうという本末転倒な結果を生むだけだ。
繰り返す、営業マンとて人間だ。好き嫌いがあって当然だ。どうしても好きになれないなら、担当を変えた方が営業マンにとっても顧客にとっても、会社にとってもいいはずだ。それを許可したら、営業マンそれぞれがわがままを言いだすなんていうのは極論であると思う。営業マンはそれがわがままなのかどうかくらいの判断はつく。その判断がつかなければ、その営業マンはその顧客の担当を出来ないというのでなく、自分が営業という仕事ができないと申告してくるはずなのだから。
サトミ営業相談所はどこまでも営業マンのモチベーションにこだわって、営業マンの実績を上げ、その結果として企業の売上に貢献する営業の専門家なのだ。