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営業の現場でまかり通る誤解

2020.11.27
営業の現場でまかり通る誤解

少し前になるが、ある企業の営業部長Xさんから営業マンAさんについて、こんな愚痴を聞いた。

Xさん「川端さん、聞いてくださいよ。Aのスケジュールを聞いたら全然アポが入っていないんですよ。あれじゃダメだよ。トップセールスのCなんかは常に一日3件とか4件アポが入っていますからね。だから、『アポが入ってないから契約が取れないんだよ。Cを見習ってアポをどんどん入れろ』って言ったんですよ。」

私は「いやそれは部長の意見には賛同できません。アポが入ってないから契約が取れないんじゃないと思いますよ。

営業職の成績不振の原因は、全体として見た時に人間関係が構築されている顧客が少ないからです。

一方で、アポが入るかどうかも、顧客とその営業マンの人間関係がどれほど構築できているかでほぼ決まります。勿論、まだ会った事のない顧客に電話でアポを取るケースもあるでしょうが、アポの多くは既にお会いした顧客に更なる提案を持ち掛ける場合ですから、その時点で良好な関係を築いていれば、「話くらいは聞いてもいいかな」となりやすいはずですよ。

だから、【アポの件数】と【契約件数・売上】には相関関係はあっても、因果関係はないと言えます。

 

もし、Aさんがアポを入れようとすらしていないのであれば勿体ないと思いますが、まずはそこを確認すべきです。

恐らく、アポを入れたくてもアポが入りそうな顧客が少ないだけじゃないですか。もしくはアポを入れようとしても顧客がなかなか時間を取ってくれない。

部長のお話は成績不振の原因を取り違えています。もし、この状況でAさんにアポの件数をとにかく増やせと指示すれば、ウソのアポを捏造するか、とりあえず中身のないアポを乱発することになりますよ。それで数字が増えるでしょうか。」

さて、これを読んだあなたはどう思われたであろうか?

 

しかし、X部長だけを責める訳にもいかないのも事実だ。何故なら、このように原因を取り違え、更に状況を悪化させるような指示を出している管理職や経営者がほとんどだからである。原因を取り違えれば改善策は的外れなモノになるのは当然だが、結果を出せていないAさんに反論の機会はない。結果が悪い上に、無意味なことをやらされる二重の足枷の中、Aさんのモチベーションとパフォーマンスは下がる一方ではないだろうか。

しかし、これが営業の現場で常に起こっていることなのだ。

(だからこそ、私は上司や組織は部下のプロセスには口出しせず、結果だけを見て評価すべきだと常々主張している訳である)

 

この場合の正解はいかに顧客との人間関係を構築させるのかをテーマに部下と意見交換することである。それが改善されれば、特別なことは何もすることなく自然とアポは入り、営業成績も改善されていく。

何も複雑な話ではない。アポが少ないことが成績不振の原因ではなく、営業実績が増えていく中で自然と生まれる結果の一つだという事が理解できれば簡単な話である。

 

こんな話もある。

 

例えば、【余裕が無い営業は売れない】というのもよく言われる話だが、実はこれも似たような話である。確かに、顧客の立場になって考えれば、いつも余裕が無く落ち着きのない営業マンより、余裕がありいつもゆったりと構えている営業マンの方が安心して仕事を依頼できるというのは事実である。しかし、上司が部下に余裕が無い事が成績不振の原因だと決めつけるのはいかがなものだろうか。

精神的に余裕が無いから売れないのではなく、売れないから精神的に余裕が持てないだけなのではないだろうか。その人間に「あなたが売れないのは余裕が無いからだ。余裕を持ちなさい」と言って何か解決になるのだろうか。なるはずがないのである。割と一般論として認知されているからこそ深く考えることなく出る上司のこうした指摘はそれだけで営業マンのモチベーションを奪い、混乱をもたらす悪魔だ。

 

私はそれが部下が聞いても納得できることなら、多少厳しい内容だとしても部下に指摘しても構わないと考えている。しかし、今ビジネスの現場で一体何か起きているのかと言うと、原因を取り違え、言われた側が納得できない、効果を期待できない、言われてどうしていいか分からない指摘の連発である。こうしたことはやがて部下の売上を増やすことに使われるはずであったエネルギーや労力を上司から指摘されたことをいかにやっているように見せるかという事に費やされることに繋がっていく。当然結果は悪化する一方だ。まさに悪循環である。

 

 

ついでに、折角なのでもう一つ、よく言われる営業の世界にはびこる勘違いを挙げておこう。【優秀な営業マンは見込みが多い、そして見込みの付け方がシビア】というものである。

逆に【ダメな営業は見込み自体が少ない、そして見込みの付け方が甘い】とも言われる。(見込みとは契約になりそうな顧客。その付け方が甘いとは決まりそうにないのに決まると申告すること)

だから、管理職は見込みの数が少ない事、そして客の本音を把握できていない事による見込みの甘さがあるから、数字が悪いのだと部下に指摘する。結果、見込みを増やせ、見込みをシビアにつけろと管理職が指導する訳だが、これも妙な話である。

 

当たり前だが、見込みの多さによって、営業実績が決まる訳ではない。同じ基準で見込みを列挙したら、営業実績の良い営業マンの見込みが多いのは当然のことだろう。

(つまりはここでも「見込みの数」と「営業実績」には相関関係はあっても、因果関係はないということだ)

つまり、見込みの量が数字に影響を与えている訳ではないのだが、割と営業経験もあり、営業職として実力もある管理職ですらこの勘違いをする人は多い。もっと言うなら、この話は私が説明すればほとんどの方は理解できるが、このおかしさにもともと気付いていた人には私はまだ出会ったことがない。

 

推察するに、結果が出ない営業マンに何が起こっているかと言うと、見込みはもともと少ないはずである。でも少ない見込みをありのままに申告しにくいはずだ。また、見込みが少ないと希望の薄い見込みに淡い期待を寄せてしまうのも当然のことだ。結果、ふたを開けてみれば、ただでさえ少ない見込みが結果的にはほぼ全滅になってしまうことだって十分起こり得る。上司から見れば、確かに売れない営業マンは見込みが少ない上に、見込みの着け方が甘いという風に見える。

でも、これも原因と結果を分解すれば誤解であることがすぐに分かるはずである。

見込みの数が少ないことが営業実績を減らすことに繋がっているのでなく、実績に乏しい状況だからそもそも見込みが少ないのは当然であり、その心理状態が申告の甘さを引き起こしているに過ぎない。そういう意味では、アポの件数も見込みの件数も見込みのシビアさも全て、その時点でいかに順調に営業実績を積み上げる過程にあるかということで決まる結果であり、営業実績そのものに影響を与える原因ではないということなのだ。

 

事程左様に、営業の現場では何となくまかり通っている誤解や事実誤認による考え方や常識が溢れている。

そして営業という仕事に限らず、あらゆる業界・職種・組織において、こうした原因を取り違えている勘違い・誤解は数多く存在しているはずだ。これらはただ非合理的で無意味であるだけに留まらず、最も大切なスタッフのモチベーションと労力を著しく奪う

サトミ営業相談所はこうした組織や管理職による誤解からスタッフを守り、スタッフのモチベーションと潜在能力を極限まで上げることにこだわるからこそ、日本初にして最高の営業の専門家なのである。