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説得力の正体

2021.01.23
説得力の正体

1月16日のラジオ収録において、対談相手である仲人のたかみさんが、私の話について「分かりやすくて、説得力があるし、何かスッと納得できますよね。腑に落ちるっていうか(ご発言そのまま)」と言ってくれた。

これは自慢になってしまうのだが、私の話は説得力があるとよく言われる。ただ残念ながら私自身は自分の話、或いは話し方の何がその説得力を生んでいるのかは分からない。一方で、話し手によって説得力にかなり差があるのも事実である。商談において、或いは商談に限らず、ビジネスの現場は誰かに何かを伝えることの連続である。その時に説得力があるのか無いのかはその後の展開にも大きな差を生むことになる。

だから、今回はその「説得力」とは何なのか?その正体に迫りたいと思う。

 

説得力:会話や文章で「相手を納得させる力」「受け入れさせる力」

 

いきなり面白くもなんともない話になるが、説得力を決める最大の要素は、聞き手による話し手へのその時点での印象・評価であると思う。

聞き手が話し手をいかに認めているか、どれほど尊敬しているかである。

私はそう思っている。

当たり前であるが、私達はいつも私たち自身による決めつけや思い込みに支配されている。SNSだろうが、現実に会った人だろうが、必ず肩書や職業、社会的地位を見て、態度を決めている。

営業活動をしていても、有名企業の社員であると名乗った時、肩書のある名刺を出した瞬間、お客様の態度がコロッと変わるなどということは日常茶飯事である。

誰かの話を聞く時も、こうした人間の感覚や癖は大いに発揮される。言いようによっては偏見に満ちた目で他人を見つめていると言ってもいい。そして、当然ながらそれは話を聞いている途中でも消えることも途切れることもない。

つまり、説得力と言っても現実には、その話し手の話す内容、話し方だけで決まる訳でなく、前提として聞き手の相手への評価に大きく左右されるという事だ。

 

(その人の社会的地位や肩書、職業とは、つまり他人がその人をどの程度評価しているかとほぼ同じ意味だ。

これもよく考えれば不思議ではあるが、自身の誰かへの評価は他人が下したその人への評価の影響をかなり強く受け、それに自然と近付いていく傾向があるということである。

だからこそ、全くの無名で普段どんな風に生きているのかが分からない人を高く評価するというのはそれほどインパクトが必要であるし、その人のずば抜けた能力や魅力が必要となる。

裏を返せば、社会的評価を一旦獲得出来れば、現実には魅力が乏しくても一定の評価を受けた時点からスタートすることが可能であるとも言える。

このことを多くのビジネスパーソンは理解しているので、まずはブランド化を目指すということになる。

つまり、一つ一つの商品やサービスが大したことが無くてもある程度売れてしまうだけの信用や実績を積み上げてしまうということだ。また、ブランド化とまではいかなくても、企業やお店がお客様の声を紹介し、既にお客様から支持されていることを必死にアピールするのはこうした理由によるものである。)

 

こうした人間の考え方は商談においても、その説明の説得力の感じ方に大きな影響を与える。

本来、誰かの発言の正しさや意義・妥当性は言った人間が誰かという事とは何の関係もないはずだが、頭では理解していてもそれと完全に切り離して考えることなど出来ない。恐らくそのような芸当ができる人間は全体の1%もいないと思う。

多くの人間がそこから逃れることができない以上、自身の説得力を高めたいなら、その現実を受け止め、相手の自身への評価を上げる努力をすること、そしてその為にも自身の社会的地位や存在感を高める、もしくは少しでも高く見せることも必要となるだろう。

これはすぐに実現できることでなく、不断の努力の結果生まれるモノがほとんどであり、すぐに出来ることはほとんどない。あまり話していない相手から評価をされるとなると更に難しく、何気ない仕草や対応から相手が感じるものであって、意図的にできることは限られていると思うべきだろう。

いずれにしても、説得力とは、商談という現場でのみ発生の度合いが決まるのでなく、それ以前の聞き手の話し手への評価に大きく左右されるということは知っておいた方がいいだろう。

 

その上で、ここからは商談の現場で説得力を決める唯一の要素を話したい。

それは、一言でいうと、『分かりやすさ』である。

説得力と言うと、高度な知識や見識、高等なテクニックなど聞き手を圧倒する何かを連想する方が多いが、実は、『分かりやすさ』に一番影響を受けると私は思う。

(これは専門家しか集まらない学会などで大絶賛されるような論文や発表をそのまま私たちが聞いて、説得力を感じるのかという問いの答えで簡単に説明がつく。ほとんどの方は「何だかよく分からない」と思うはずである。つまり、どんなに内容が素晴らしくても、自身に関心がないモノ、それを理解する意思も能力もない者が聞いてもその話には説得力を感じないという事である。)

 

当たり前であるが、そもそも話の内容が相手に理解してもらえなければ説得できるはずがない。

 

また、私が説得力を上げる為に分かりやすさを追求すべきというのは、どれだけ分かりやすく話したとしても、聞き手による聞き間違いや勘違いがゼロになることは難しく、100%伝わることなど相当稀であることを知っているからである。

だから、説得力を上げるためにこそ、分かりやすさを追求すべきだという考えである。

 

そして、分かりやすさを上げる一番簡単で具体的な方法は、まずは相手が知らないかもしれない、または誤解されやすい、分かりにくい単語や表現を一切使わないことである。もしどうしても使わなければ説明が難しい場合は、聞き手に確認しながら話を進めていく。これらは意識すれば今すぐ簡単に出来ることである。

 

もう一つは、ゆっくり話を進めることである。これは早口にならないということではない。1分なら1分、一定時間の中に出てくる情報量を極力減らすということである。これは人間が新しい情報を処理し正確に理解するのは我々が思っている以上に難しいからである。少しでも聞き手の負担を下げるよう、シンプルな表現・単語で構成し、例え話を盛り込み、出来るだけ噛み砕いて話す。(出来るなら、自身の業界に関わりのない家族や友人に自分の説明を聞いてもらって、どれだけ理解してもらえるか試してみるなどの工夫をしてみるのもおススメである。)

 

例えば、1歩進んで2歩下がるというように、ある程度話したら少し戻ったり、或いは同じ説明を繰り返したり、聞き手に「何か分かりにくい点はありませんか?」と時折確認する、あるいは少し腰を折り休憩を取るなども一つの手だろう。その話への集中力は、聞き手がリラックスし出来るだけ心地よさを感じているかどうかも分かれ目となる。恐らく、見た目がいい営業職、素敵な声を持つ営業職が有利なのもこれら一つ一つが理由となって契約したいと聞き手が思うのでなく、そうした方と話している時間が心地いいため、聞き手が飽きずに話を聞き入りやすい結果かもしれないし、気さくな営業職が有利なのも同じ理由だろう。もっと言うなら、自分の話を聞いて欲しいなら、相手がリラックスしやすい場所や条件を整えることもまた自身の説得力を上げるという事に直結するのではないだろうか。

 

(営業の世界で早口がNGと言われるのは早口そのものが悪いのでなく、早口になることによって時間当たりの情報量が増えてしまい、理解しにくい部分・情報処理が追い付かない部分が増えるのがデメリットであって、聞き取りにくいのが難点なのではないのかもしれない。何故なら、全く聞き取りが出来ないほど早口な営業職などそうはいないからである。

だから、自分がどうしても早口が直らないなら、それを直すより、自分自身で何度も話を止めて聞き手に理解が追い付いているかの確認を繰り返す癖をつける方が現実的だろうと思う。)

 

まとめよう。

説得力とはその局面での話し手の話す内容や話し方だけで決まるのでなく、まずは聞き手が話し手に対してどういう評価をしているかでおおよそ決まってしまう。

 

 

その時点での話し手への評価が全く同じであれば、説得力の差を生むのは『分かりやすさ』である。

高度な話で相手を圧倒させることを目指すのではなく、出来るだけ簡単でシンプルな表現を使う。更に、聞き手にリラックスしてもらい、聞き手が話し手の話を理解する負担を出来るだけ軽くする。

裏を返せば、簡単に相手に伝えることができる話を出来るだけ選ぶという考え方が実は最も賢いやり方だろう。

 

聞き手が話し手の話の大半を理解することをクリアして初めて納得することが可能になることを考えれば当然の結論である。

話はシンプルに、簡単に。

それを着実に積み重ねた結果こそが、説得力を生む。

私はそう思っている。