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目から鱗のハウツー営業【『松竹梅の法則』の真相】

2022.10.06
目から鱗のハウツー営業【『松竹梅の法則』の真相】

先週投稿しました記事【お客様からの価格交渉】はこれまで以上の反響でした。

 

様々な方から感想やコメントをいただきました。

 

この場を借りて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
 

 

また寄せられた感想は普段からTwitterなどでやり取りをさせていただいている方からのモノが大半でしたが、今後は私とこれまでやり取りをしていない方からも率直な意見をいただけたらと思っております。

 

そうした自由な議論や意見交換を通して、共に営業という仕事を盛り上げていきましょう。

今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

私が以前から不思議に思っている事

 

 

さて、本題に入ります。

今回のテーマは『見積りの提出の方法』です。

 

このことは、多くの営業職からよく質問される問題というより、私自身がかねてから気になっていたことです。
 

 

これまで言われてきた常識として、こういうことを聞いたことはないでしょうか?

「見積り提出時は、松竹梅の3プランを出し、真ん中(竹)に最も売りたいプランを入れると、お客様は自然と竹を選び、成約率そのものも上がる」
⇒見積りは3プランを用意するのがベストである。
 

 

いわゆる「松竹梅の法則」と呼ばれるモノです。
呼び名はどうあれ、恐らく一度は誰かから聞いたことがあると思います。
 

 

この法則の根拠として語られてきたものとして、
⑴  人間は極端なモノを避ける傾向が強く、無難に見える真ん中のプラン(竹)を選ぶ。
⑵  選択肢が多ければ多い方がお客様の要望をカバーできる可能性が高まるが、4択以上になると選択肢が多すぎて、選びきれず成約率はむしろ下がってしまう。

 

⇒3種類用意することが最もお客様を自社への契約に導くことができ、また営業職が最も選ばせたいプランにお客様を誘導することが出来る。
 

 

こうしたことは私が営業職デビューをした当初から言われ、今も尚営業の世界のセオリー・常識として多くの営業職に信じられ実践されていることです。
 

 

中には見積りを出す時は
『どのような状況だろうが、必ず3プランの提示』
を徹底している営業職もいます。
 

 

さて、本題に入る前に念の為、おことわりしておきます。

 

今からお伝えすることはあくまで私個人の考え方であり、これが唯一絶対の正解だと思う必要はありません。

こういう考え方もあるのだと思って、気楽に読んでみてください。
 

 

当然の事ですが、私の持論とは正反対の行動を取っていても、結果を出している営業職は多く存在しますし、逆に私と同じような持論をお持ちの方でも結果に苦しんでいる方も存在するはずです。

 

私が提供したいのは、皆さんそれぞれにとっての唯一絶対の正解ではなく、皆さんにとっての選択肢であり、目的はあくまで皆さんの選択肢が一つでも増えることにあります

そのことを理解した上で読み進めてください。

 

 

 

 

『松竹梅の法則』など存在しない

 

 

まず結論からいいます。
私はこの「松竹梅の法則」に否定的な立場です。

 

 

 

 

例えば、ある男性の話

 

 

例を挙げてみましょう。
一人暮らしの男性が自宅でその日飲むビールを冷やす程度の冷蔵庫を買いたいと思っています。

 

お店のスタッフは以下三つの商品を勧めました。
 

 

❶お洒落なデザインの冷蔵庫(容量144L)5万円
❷デザインは普通で冷凍庫付き冷蔵庫(容量119L))4万円
❸デザインは平凡、冷凍庫なしの冷蔵庫(容量36L)2万円
 

 

さて、あなたは❷を選びますか?

またこのような要望を持つ人は一人や二人ではないはずですよね。

このような要望を持つ複数の人に全く同じように勧めたら、一番選ばれるのは❷だと思いますか?

 

 

更に言うなら、ここで販売員が「こんな商品はいかかでしょうか?」と
❹小型保冷庫(5L)1万円
という選択肢も加わったら、そこで買い物をする男性の数が減るのでしょうか?
恐らく、そのどちらも起きる可能性は低いでしょう。
 
 

 

この男性の『その日飲むビールを冷やす程度』という要望は三つとも満たしています。

 

しかし、この男性が冷凍庫もデザイン性も容量も求めていないのであれば、この男性にとってはどれもほぼ同じ価値です。

 

結果として、どれもほぼ同じ価値しかないのであれば、最も低価格の
❸デザインは平凡、冷凍庫なしの冷蔵庫(容量36L)2万円
を買う確率が高いのではないでしょうか?
 

 

さて、私が今挙げた例は極端な例でしょうか?
どこにでもありそうなありふれた話を選んだつもりです。

 

 

 そして、「3種類のプランを用意した場合が最も成約率が上がる、売りたいプランを真ん中に(竹)にし、その両側により高品質なプラン、より低品質なプランを付ければ売りたいプラン(竹)が売れる可能性が高まる」というのは
根本的には
❶お洒落なデザインの冷蔵庫(容量144L)5万円
❷デザインは普通で冷凍庫付き冷蔵庫(容量119L))4万円
❸デザインは普通、冷凍庫なしの冷蔵庫(容量36L)2万円
があれば、❷が選ばれる可能性が高い。
 

 

ここに
❹小型保冷庫(5L)1万円が
情報として追加されるより
 ❶❷❸のみの方がお客様が買ってくれる可能性が高い。
と主張しているのと同じです。
さて、そのようなことが一つのお店における買い物の現場で起きるのでしょうか?

 

 

 

 

例2

 

 

飲食店でも考えてみましょう。

初めて行ったお店で親子丼「少な目・普通・大盛」とあれば、『普通』が一番注文されるでしょうが、同じ量でも呼び方を「並盛・大盛・特盛」と変更すれば、並盛を選ぶ人が増えるのではないでしょうか。
 

 

これはあくまで真ん中を選ぶ傾向があるのでなく、自分がどの程度食べることが出来るのかを知っていて、それに合わせた注文をしているに過ぎないことを示しています。
 

 

勿論、これが一度利用した事のあるお店であれば、もっと自分の食べる量を正確に反映したモノになり、もっと真ん中に集中しないことも十分有り得るでしょう。

ただそれだけのことです。

 

 

勿論、積極的にお客様にアプローチする営業職と、基本的に来店を待つ店舗では知り得る情報もお客様との距離も異なります。

 

しかし、そのことそのものが見積において3パターンの提示を徹底することよりも、お客様との人間関係を構築しお客様からの情報を出来るだけ集めること、そして何より営業職がお客様から好かれ、そのえこひいきを誘発する事の方が成約率を高めてくれるという結論を導いてくれるのではないでしょうか?

 

 

 

 

今少し考えれば、シンプルに考えれば・・・

 

お客様が選択する場で起きているのは、示されたプランの中で最も自分にフィットしているモノを選ぶ、どれもフィットしなければ選ばないというシンプルなことであって、選択肢の数によって受ける影響は皆さんが思っているほどないと私は考えます。
 

 

 

 

『松竹梅の法則』が働くとすれば、

 

お客様がこれから選ぶものについての情報や知識がなく、そのプランを選ぶ基準がない、
しかし、そのような状況にも関わらず、そこで買うことが既に決まってしまっている。
という二つの条件が重なった時だけではないでしょうか?
 

 

少なくとも、お客様からそのように要望された訳でもないのに、
いついかなる時もプランを3パターン提示することが
成約率を高めてくれるという結論にはならないのではないでしょうか?

 

 

 

 

完全に見落とされている競争の社会の現実

 

 

そして何より、営業の現場の常として、お客様の選択肢はあなたの会社に限られている訳ではないということです。
 

 

お客様は、あなたの会社のあなたの見積りが3パターンだろうが、1パターンだろうが多くの競合社によっていくらでも選択肢を増やすことができます。
 

 

そんな中で、3パターン用意することが成約率を押し上げるのでしょうか?

真ん中のプランに誘導できる可能性が高いのでしょうか?
 

 

今一度繰り返します。

 

営業の現場において、こうしたことが言える可能性があるのは、以下二つの条件が重なった時だけではないでしょうか?
1⃣お客様がどのプランが一番自分にフィットしているか情報も意見も持ち合わせていない。
2⃣お客様があなたの会社に注文(契約)することが決定している。
 

 

或いは飲食店に来店した時のように、その店で注文する事自体が決まっている時に本当に売りたいプランを竹にし、その高級版と安価版を松梅に設定すれば、竹を選ぶ人が多くなるかもしれないという程度ではないでしょうか?
 

この場合も3パターン用意した事自体がお店の来客を増やす効果自体はありません。

 

 

 

 

知られていない根本的な事

 

お客様は徹頭徹尾営業職のコントロール下になどありません。
それは皆さんがお客様の立場になって買い物をする時を振り返ってみれば、容易に想像できることです。

 

確かに営業職の言い回しや説明の仕方に巧拙の差があり、それによって「うまく乗せられて買ってしまった」ということはゼロではありません。

 

しかし、営業職が介在する契約の多くは、営業職の真面目さや熱心さ・誠実さにお客様が好感を抱くことから始まり、安心して説明を聞くことで前に展開していきます。
 

 

それは営業職がどんなに凝った演出やテクニックを駆使しても変わりません。

それは所詮は営業職の自己満足に過ぎません。
 

 

3パターン用意すれば真ん中を選ぶ可能性が高い、そして成約率を高めてくれるというのは、営業職がお客様をコントロールできるという前提に立った根拠のない驕りであり、お客様があなたを含めた多くのライバル会社の営業職からいくらでもプランを引き出し、いくらでも選択肢を増やせるという事実を無視しています。

それはお客様の状況を度外視しているということに他なりません。

 

 

 

 

『営業という仕事の真の姿』

 

お客様の多くはそれぞれ全く異なる状況下にいるだけでなく、全く異なる好みや性格、価値観、考え方を持っています。

 

もしお客様から契約を獲得したいのなら、その全く異なる状況、好みや性格、価値観、考え方を理解しようと努力する事こそが成約率を押し上げる原動力になるのではないでしょうか?
 
 

 

お客様に要望された訳でもないのに、3パターンの見積りを常に用意し提出するより、お客様の話をきちんとヒアリングし、提出時に「少しでも気になる点や修正が必要であれば、何度でも遠慮なくおっしゃってください」と一言添える方が、余程お客様の心象を良くし、成約率を高めるのではないでしょうか?
 

 

お客様をコントロールすることを諦め、真面目に真摯に誠実にお客様一人一人に向き合ってください。

それが『営業という仕事の真の姿』だと私は思います。