今回はズバリ『誰でも少しだけ商談が上手くなる方法』です。
※商談が上手くなる=商談1回につき契約により近付くことが出来るようになる。
と定義しておきます。
営業職なら誰しも知りたい、気になる話でしょうが、おそらく今皆さんが想像しているモノとは大きく異なる内容だと思います。
そういう意味では良くも悪くも、皆さんの期待を大きく裏切る内容だと思います。
【商談が上手くなる=テクニックの獲得】という誤解
これは私の推測に過ぎませんが、このタイトルを目にした多くの方は商談においてお客様を簡単に心変わりさせることが出来るようなテクニック・手法・ノウハウの紹介だと思ったのではないでしょうか?
ですが、ここまでこのシリーズを読み続けてきた方はご存じだと思いますが、私はお客様をコントロールする術などなく、またあったとしてもコントロールしようとする必要などないと考えています。
確かに、営業職の話し方や伝え方、表現方法によってお客様の心変わりを誘発することはゼロではありません。
「上手い言い方だな」「今の一言で俄然契約に前向きになった」ということはあります。
しかし、残念ながらそれらで一気に流れが変わり、契約への扉が突然開くなどということは全体として見れば、ごくごく一部です。
営業職の使い方の問題は勿論、お客様の好みやその時の気分にも左右される脆弱なモノだと認識するのが最も正確だと思います。
契約までの流れ、そして商談の位置づけ
契約は、
お客様の営業職への心象が良くなる、好感を抱くようになる。
⇒お客様が営業職の話に耳を傾けるようになる。
⇒商品やサービスへの関心が高まる。
⇒お客様からも自身の情報や意見、ニーズが聞けるようになる。
⇒契約への距離が縮まる
大まかに言えば、こうしたステップを踏んで締結に至り、その大きな役割を果たすのが商談という場面、局面です。
営業職によって、或いはお客様によって、更には両者の相性によって、そのスピード感が異なるだけで、いずれかのステップを飛ばして、契約に近付くことは全体として見れば実はごくわずかです。
このことは多くの営業職も理解していない事実です。
一方で、世の中には営業テクニックや提案スキル、営業の思考方法などを紹介した営業本やSNSを含めた情報が溢れています。
なのに、どうして多くの営業職は結果を出せずに苦しんでいるのでしょうか?
それは、こうしたモノが結果を出す要因には程遠いからだと考えるのが最も自然な結論だと考えられます。
契約に至っていないケースの大半は
『お客様の営業職への心象が良くなる、好感を抱くようになる』
をクリアしていません。
なのに、多くの営業職は一つ目のこのステップをクリアしていない状態で
営業本などから得た情報を取得し、これらを活用することで契約にこぎつけようとしています。
つまり、お客様が営業職自身にもその話にも関心を持っていない状況で、元々効果の曖昧なモノを投入しているに過ぎないのです。
勿論、状況が変わらないのは至極当然のことです。
ただそれだけのことです。
今回はそうした状況を解消すべく、基本的な考え方と今からでも始められ、また誰でも少しだけ商談が上手くなる方法を紹介します。
商談においてまず排除すべき思い込み
まずは、基本的な考え方から解説します。
それは、
お客様、もしくはお客様の気持ちをコントロールすること、
お客様を説得する事、
お客様を言いくるめようとすること、
これらすべてを諦めることです。
商談への全ての勘違いは、こうしたことが可能であるという点から始まっており、ここから多くのズレが生じています。
商談は戦いではなく、確認と調整の共同作業
商談とは「お客様と営業職の要望や立場の違いを確認する事、そしてその差を埋める」場であり、作業です。
説得する場ではありませんし、まして心理戦や攻防戦などではありません。
お客様と営業職の信頼関係が深まってくると、作業から共同作業となり、契約に近付いてきます。
少し考えれば簡単に分かる事ですが、お客様は営業職のテクニックや上手い話し方など全く求めていません。
余談ですが、『お客様のニーズを大事にせよ』と声高に主張している方が、一方でこうした営業テクニックを有効であるとし、紹介しているのは矛盾ではないでしょうか?
話し方や言い方が上手くて契約に至るというのは一つの現象に過ぎませんし、むしろレアケースです。
そういうことが起きたということと多くのお客様がそういうモノを元々求めている、求めていたというのは全く別の話です。
確率とバランスを考えれば、こうしたことが有効であると考え、活用しようとすることが商談の推進力を上げることには繋がらないと私は考えます。
契約においてお客様が求めていること
多くのお客様が契約において求めているのは、
その契約をしたことで自分が損をしないこと、
安心して契約を結べることです。
ですから、真面目で誠実な営業職にお客様からの支持が集まるのは当然の結果です。
話が上手い営業職ではなく、あくまで真面目で誠実な営業職、つまり信頼できる営業職です。
そしてその誠実さを伝えるのに最低限必要なことがどんなに小さな約束もきちんと守る事であり、お客様に「信頼に足る人物だ」と思われることです。
また、その誠実さをお客様に証明する最も簡単な方法が営業職側の熱意を伝えることです。
要するに「こんなに熱心なんだから、まさか裏切るような真似はしないだろう」とお客様に推測されるということです。
本当は真面目で誠実な人柄であっても、それをお客様に感じ取ってもらえなければ意味がありません。
これは商品やサービスも同様です。
営業の世界では「本当は〇〇なのに」は全く意味がありません。
お客様が気付いたり、感じなければ役に立たないのが現実です。
それには熱意をお客様に感じてもらうことが必要であり、それはお客様の要望や約束をきちんと守る一方で、粘り強くアプローチを重ねるのが一番合理的な方法です。
真面目さ・誠実さを分解すると
熱心さと信頼感であり、
それを伝える具体的な行動とは
⇒粘り強いアプローチと約束を守る事
と捉えると分かりやすいと思います。
この両方から営業職の誠実さを感じ取り、その誠実さから「自分を裏切るようなことはしないだろう」という安心感をお客様に抱いていただき、それによって安心して話に耳を傾けていただくという順番です。
話は上手くないのに結果を出す営業職が必ず一定数存在するのも、話が上手いのに結果が出ない営業職が必ず一定数存在するのも理由は同じです。
お客様が営業職の話の上手さを理由に契約をするわけではない、というシンプルな話です。
まずはここからです。
誰でも少しだけ商談が上手くなる方法
次は今すぐ始められる方法にして、もう少し具体的で実用的なことをお伝えします。
それは、お客様と商談が終った後に、
その時お客様と話した内容、お互いの立場や意見や要望を再度お互いに確認し合うことです。
例えば
レストランや飲食店で注文を終えた後に、もう一度注文を読み上げて確認する店員さんを見ますよね。
予め決まったメニューから選んでいるのに、漏れや間違いはゼロではありません。
まして、商談ではもっと色んな情報や話が飛び交います。
聞き慣れない単語や紛らわしい表現も頻発します。
そう考えると、商談において、こうした漏れや間違いによる勘違いがどれほど生じているのか想像できますよね。
結果として、一度の商談で、営業職が聞き違い、勘違いをしたまま商談を終えることになります。
勿論聞き違いや勘違いはお客様側にも発生しています。
そう考えると、むしろお互いが全く認識のズレなく商談を終えることの方が珍しいと思った方がいいでしょう。
こうしてお互いが勘違いをしたまま、商談を終えれば、当然営業職側の次のアプローチがお客様から見て的外れなモノになりますし、お客様側でも勘違いをしたまま、「こういうことが出来そうだな」「こういうのは厳しそうだ」と思い込んでしまいます。
こうしたことを何度も繰り返す度に、契約から遠ざかっていくのは当然の事ですし、たった一つの勘違いから契約の可能性そのものが消えてしまうことも十分にあり得ます。
そして、営業職側が的外れな提案や回答をした時もお客様の多くはそれをいちいち指摘したり、是正などしてくれません。
静かに契約が遠のいていくだけです。
恐らく失注の多くは、あなたの営業テクニックや応酬話法が不十分で説得に至らなかったのでなく、こうした認識のズレからお客様との会話がかみ合わなくなったことが原因です。
本当はベストな方法
それを防ぐために一番いいのは、商談の途中で何度も腰を折りながら、「今おっしゃったことは〇〇という意味ですよね?」「〇〇ということでよろしいでしょうか?」「今なんとおっしゃいましたか?」と念を押しながら商談を進めることです。
しかし、これはなかなか難しいことです。
時間もかかってしまいますし、何よりお客様との会話の腰を折るのはなかなか勇気のいることです。
ですので、現実的なのが、商談の終わりに「今日お聞きした事やご要望を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」と前置きし、お客様に内容を確認することです。
商談終了後にメールで確認するという方法もありますが、それはお客様の新たな手間を増やしてしまいますし、お客様がきちんと返答しなかったり、間違いや勘違いを指摘してくれない可能性もあります。
その場で確認する方があらゆる意味で理にかなっていると思います。
「営業という仕事の真の姿」
『商談ごとに都度内容を確認する』という作業を徹底すると、いかに聞き違いや勘違いによってお互いの認識のズレが生じているのかが分かると思います。
認識を同じにすれば、これから必要なことを誤ったり、的外れな提案や回答をしてしまうリスクもグッと下がりますよね。
お客様をコントロールできるという思い込みを捨てる事、
商談におけるお互いの認識のズレを出来るだけ早い段階でなくすことを徹底しましょう。
実はこれが最も商談を効果的に重ねる方法であり、お客様にとっても営業職にとってもメリットのある方法です。
こうしたことを地道に着実に重ねていくのが「営業という仕事の真の姿」ではないでしょうか?