今回は「目標とする営業職像の描き方」です。
何故私がこれを取り上げたのかと言うと、これが出来ると、自身の精神的負担を最小限に抑えながら、自分の行動をコントロールしやすいからです。
私達営業職とて、一人の人間です。
他人と円滑にコミュニケーションを取ることが仕事とはいえ、自分の心と身体を常にコントロールするのは苦しいモノです。
体調が悪い時もあるでしょう。
プライベートの悩みを抱えている時もあるはずです。
そんな時にもさわやかな笑顔と態度を維持するのは厳しいはずです。
一方的で理不尽なお客様の言動に我慢できなくなる瞬間もあるはずです。
そういう状況下ですから、「本当は〇〇をやっておかないと!」と気付きながら、サボったり、後回しにしてしまう、そんな時があるのも十分理解できます。
こうしたことはどの営業職にも少なからずあります。
それでも、自分の感情をある程度抑制し、自分の行動をコントロールできる営業職の方が結果を出せるのも事実です。
自分の行動をコントロールすることが必要であるならば、
せめてその苦しさや精神的負担を少しでも軽減する方法はないのだろうか?
その一つが目標とする営業職像を描き、自らの意志で自分の行動を決めることです。
営業職の現実
営業職の多くは、会社の方針や上司の指示の影響下にあり、営業職自身がその意味や目的を理解・納得していないまま、それらに従うことにエネルギーと時間を費やしています。
意味や目的を理解・納得していないまま実行に至っている、
そういう意味では、ビジネス本やSNSなどのビジネス系の発信に対しても、全く同じことが言えるでしょう。
本人が理解していない、腑に落ちていないことをやっている、或いはやらされている時間の割合が高いということです。
全てがそうではありませんが、この割合が高ければ高いほど結果からは遠ざかっていく事になります。
何故なら、自分が納得していない、その意味を理解せずに取り組んでいることは、低い集中力と低い継続性で取り組むことになるからです。
場合によっては、実行すること自体が目的化してしまう、という最悪のケースも頻繫に起きます。
いずれにしても、結果が出ないのは当然の事です。
「騙されたと思ってやってみて」と言われたようなことは元々効果を出す可能性が低いのです。
それでは、どうすればいいのか?
自分の行動は自分自身で決める
現状はこのようになっています。
【自分で能動的に行動している割合<やらされている割合】
この図式を逆転させ、
【自分で能動的に行動している割合>やらされている割合】
とすればいいのです。
恐らく、結果を出している営業職の大半は後者になっていると思います。
そして、その最も簡単で理に適った方法が
目標とする営業職像を自分で描き、それに則った行動、逆に慎む行動を具体的に決めることです。
こうすることで何となく自分の行動をコントロールする状態から脱却し、
⇒〇〇でありたいから、〇〇という行動をする
⇒〇〇になりたくないから、〇〇という行動は慎む
となります。
「とにかく毎朝30分堤防沿いを走れ!」と言われ、
ただ毎日30分のランニングを課せられた人と、
『マラソン大会に出場し、〇分以内でゴールしたい!』と自分で立てた目標がある人では
同じランニングをするにも、モチベーションも感じる苦痛もまるで異なるでしょう。
それと同じことです。
自分自身が納得できる理由があって、
それによって自分自身で設定した目標があれば、
その達成の為にはどういう行動が必要になるか、
これも自分自身で決めることが出来ます。
そして、自らの意志で決め、自分自身がその行動に納得していれば、それに伴う苦痛が軽減されます。
前振りが長くなってしまいましたが、何故目標とする営業職像を描くべきなのかが理解できた方がいいと思いましたので、丁寧に説明しました。
次にその具体的な方法の一例を紹介します。
とてもシンプルです。
具体的にどう描くのか?
まず
1⃣あなた自身がこんな営業職からはモノを買いたくないという「NG営業職像」を思い描いてください。
例えば、態度が横柄、身だしなみが良くない、対応が遅い、時間にルーズ
次に、
2⃣自分が『こういう営業職になりたい!』という理想の営業職像を思い描いてください。
現実にそうなれるかどうかは考える必要はありません。
あくまで理想です。
1⃣で自分が取るべきではない行動、慎むべき行動を明確化します。
2⃣で自分自身の理想です。
1⃣2⃣は要するに、あなたの好みです。
何故自身の好みを含めるかというと、自分の【目標とする営業職像】に自分の価値観がまるで反映されていないのは不自然ですし、何よりそれを一切盛り込まない営業職像はそれこそ他人に押し付けられたものになってしまい、自身が積極的に取れる行動を生みません。
それでは、本末転倒です。
ですから、十分に自分の好みを盛り込んでください。
最後に
3⃣訪問先のお客様がこれまで褒めていたライバル会社の営業職の情報を整理します。
あなた「私のライバル会社の営業職の中で評価している営業職ってどの方でしょうか?その方のどんな点を評価しているかも教えていただけますでしょうか。」
お客様「A社の松本さんはすごくいいと思う。〇〇だから」
この〇〇だからという情報を集めます。
どんなことでも構いません。
例えば、対応がとにかく早い。話が上手い。タイミングがいい。
定期的に訪問していて懇意にしているお客様に対しての方が聞きやすいでしょうが、初めて訪問したお客様に聞いても問題ありません。
これまでそうしたことを聞いたことがない方は今から聞いてみてください。
仕上げ
1⃣2⃣3⃣をどのように整理するのか、どの程度のバランスにするのかは自由に決めてください。
こうしたことを整理する中で気づくことも多いはずです。
2⃣と3⃣がとても似通っている方もいるでしょうし、まるで重ならない方もいるはずです。
大事なことは、お客様の生の声を自分の行動に反映させること、そして何よりあなた自身の手で心底「こうありたい」と思える営業職像を作り上げることです。
目標とする営業職像が出来ましたね。
次にそうなるために
・どんな行動を普段から心掛けるべきか、
・どんな行動は慎むべきか、
・自分の現在の行動のどの点がこの像から外れているか、
を書き出してみてください。
これで完成です。
この手法のミソは・・
この手法の最大の特徴は勿論3⃣にあります。
あくまで自分が普段接しているお客様層の視点を最大限盛り込む点にあります。
ビジネス本や営業本の内容は私から見ても、机上の空論に感じます。
そこに書かれているのがレベルが高い内容だからリアリティを感じないのでなく、ただ営業職の日常と異なるからだと思います。
当然そこで描かれているお客様もまた、営業職が普段接しているお客様とはかけ離れているように感じる人も多いのではないでしょうか?
ですので、自分のお客様の生の声を取り入れるのが一番良いのではないかと思います。
私の20代の頃からの試み、そして発見
私は営業職時代、それも20代の頃から、お客様に常にこんな質問をしていました。
「ライバル会社の営業の中で、これぞと思う営業職って誰だと思いますか?
そして、その営業職のどういう点を高く評価していますか?」
私はこんな質問を繰り返す内に、ある事に気づきました。
それは、お客様は営業職の話の巧さや提案力、課題を解決する能力などをそれほど評価のポイントにしていないということです。
これはあくまで私が聞いたお客様のご意見です。
【その営業職のどういう点を高く評価していますか?】
この質問の回答で圧倒的に多かったのは
「熱心である」
「よく顔を出す(訪問回数が多い)」
「誠実(真面目)である」
「物腰が柔らかい(話しやすい)」
「とにかくいい人」
など営業職自身の人柄や意欲の高さを物語るモノばかりだったのです。
確かに説明が上手い、話が分かりやすい、頭がいい
こうした点を挙げるお客様も一定数います。
しかし、前者に比べれば圧倒的に少数意見でした。
『営業という仕事の真の姿』
ところが、営業本やビジネス本は営業活動のマインドやマーケティング視点の考え方、戦略、営業テクニックの紹介など圧倒的に後者の方に大きく偏っていないでしょうか?
お客様が主に見ているポイントと、営業本やビジネス本が教える営業職が身に着けるべきことがあまり重なっていないということです。
これらが語る内容を実践しても、効果がないのは当然の結果だと思います。
であれば、最初からお客様に営業職のどんな点を見て、どのような点を評価しているのかを聞くのがベストです。
その一番簡単かつ理に適った方法が、お客様に評価している(勿論あなたにとっての)ライバル会社の営業職の良さを聞くということです。
ライバル会社の営業職の考え方や特徴もつかめて、一挙両得です。
こうしたことは自分の考え方ややり方の変化ともに常にアップデートするのが自然であり、お勧めです。
そして、他人が発信しているモノを何となく実行してみるのでなく、何事にも自分や自分が普段から接しているお客様に沿った行動を心がけ、常にベストを尽くす、地道な努力を重ねることこそ、『営業という仕事の真の姿』ではないでしょうか?