ここしばらくの投稿とそれぞれの記事へのアクセス状況を見てみました。
すると、中小企業の営業活動について触れた記事の反応は特に良く、
関心をお持ちの方が多いことに改めて気づかされました。
またこうした記事を読み、
私の投稿にコメントいただいた方、
私からのメールやセミナーなどのお誘いに好意的な反応や返事をいただいた方もいつもより多かったと思います。
そこで今回はもう少し条件と範囲を絞って、
中小企業の営業活動について解説したいと思います。
その前にお伝えしたいこと
「【目から鱗のハウツー営業】シリーズは 営業職向けだったはずなのに、
中小企業経営者向けに変わったのかな?」と思われたかもしれませんが、
そうではありません。
このシリーズは、
『専属の営業職』に対象者を絞って書いているつもりは元々ありません。
専属の営業職でない社員が、
営業職が営業活動の一環として実施していることを行っている場合もあり、
また経営者が営業を兼務しているという場合も数多くあるはずです。
少なくとも、
それが少ない機会だとしても、
短い時間帯であったとしても、
営業活動を行っている時間帯は営業職です。
むしろこうした人々の方がより営業についての助言を必要としているでしょうし、
そうした情報を得る機会に恵まれてないはずです。
私にとってはどの方も専属の営業職と同様、営業職の一人であり、
今シリーズを読む対象者であると考えています。
今回の記事はそうした方向けの記事となりますが、
それと同時に、専属の営業職の方にとってもプラスになるはずだという確信があって書いているということは予めお伝えしておきたいと思います。
では本題に入ります。
今回どのような条件下での営業活動について解説するのかというと、
下記条件です。
実はかなり多いこんな状況
『専属の営業職が社内に一人もいない。
その中で、あなた一人だけが営業活動の必要性を感じている。
まずはあなた一人だけでも営業活動を開始する覚悟を決めた。』
あなたが社員の場合もあるでしょうし、
経営者の場合もあるでしょう。
或いは現在の立場が社員であっても、
今後経営者になる事が確定している後継者、という場合もあるでしょう。
この場合の最大の問題点は、
【自身の営業活動を共有できる人がいない。】
この一点です。
「そんなの当たり前じゃないか?」と思われたでしょうが、
このことは皆さんが思っている以上に非常に大きな意味を持っています。
残念ながら、この条件下にある方、中小企業は非常に多いと思います。
これまで必要なかった営業活動に挑戦しようとしているのですから、
少なからず危機感を感じての行動という場合が多いはずです。
いずれにしても、自分一人でも営業活動を始めようとする人はそれだけでも意欲と責任感の溢れた稀有な人材だと言えます。
何故なら、大半の方はそれ以前に「営業活動を展開すべきだ」という社内的合意が得られないために、自分一人のみの営業活動の開始を断念せざるを得ないからです。
これまで実施していなかった営業活動を開始するのは、
それだけでも企業としては困難でハードルが高いということです。
予想される展開、覚悟すべき事態
そして、意欲と責任感溢れる人材が孤軍奮闘しても、
この条件下ではあなたの営業活動の中で起きた事に関心を持ってくれる方はまずいません。
無関心ならまだしも、営業活動という成果の見えない・乏しいモノに勤務時間を使う事を批判する人もいるでしょう。
この批判を封じ込めるには、
営業活動において早々に結果を残すこと以外にありませんが、
このことは簡単ではありません。
専属の営業職が自身の勤務時間とエネルギーのほぼすべてを投入しても、
一つのお客様相手に成果を残すのに早くても数か月、場合によっては何年もかかるのです。
その時間とエネルギーのごく一部を投入しただけで周りの営業活動への批判を封じ込めるほどの成果を残すのはまず難しいでしょう。
まして、あなたを批判するのはそもそも営業活動などやったことがないという人ばかりのはずです。
どの程度の成果が妥当であるのか、成果を出すのにどれほどの時間がかかるのかという基準を持ちません。
あなたとの比較対象もいないので、批判のための批判に終始する、というのはよくあることです。
こうした理由から、まず「現在のあなたのその営業活動が順調であるかどうか?」という点すら水掛け論に終始し、議論がかみ合わないはずです。
私はこれまで様々な企業の営業活動の開始に立ち会っています。
その経験から言わせていただきますと、
一番多いパターンは、
営業活動を初めて当初はそれなりに見えやすい成果が上がり、
数か月で営業活動の空洞化(次に何をすればいいかが分からない)に入り、少しずつマンネリ化と営業活動への意欲の減退が進み、
最終的には営業活動がゼロ化するという形です。
この事を理解しておくと良いと思いますが、
一番最初に成果が上がりやすいのは、
これまでの営業活動がゼロだったので訪問先をピックアップしやすいこと、
訪問先があなたの会社からの最初のアプローチにまずは好感を抱き、
当初は協力的な態度で迎えてくれやすいこと、が挙げられます。
しかし、それは長くは続かないことが多いです。
何故なら、最初に訪問したお客様が良い話を提供してくれても、
それに対してこちらが対応できないこともあり、
そのことでこちらからのアプローチが途絶えたり、
話すネタがないとの理由から継続的な訪問が出来なくなるからです。
或いはもっと単純に、
当初協力的だった訪問先が徐々にあなたに新鮮さを感じなくなり、
徐々に協力的でなくなってくるという事も起きてきます。
こうして営業活動の面白さというモチベーションすら維持できなくなり、
継続が難しくなってしまうのです。
営業活動を批判する人はいても、
それを途中で辞めてしまうことを批判する人は誰もいません。
最終的には、継続する理由がなくなってしまってしまうのです。
公平に言えば、こうした傾向は専属の営業職でも見られることであり、
これまで営業活動をあまりやったことのない方にとっては、
なかなかハードルが高いのはやむを得ないと思います。
ただ、専属の営業職の多くは自社がお客様の要求に応えられなくても、
契約や注文という分かりやすい見返りが期待できない状況でも、
それら定期訪問や継続的フォローを難なくこなせます。
この差は営業という仕事への適性ではなく、慣れです。
こんな時に
「一回や二回で諦めてどうする?」
「俺なんか半年間お客さんのところに通い詰めて、
昨日やっと注文をもらえたんだよ」
という言葉が自然と聞こえてくるかどうかは大きな差です。
周りに同僚の営業職が一人でもいれば、
こうした声が自然と耳に入ってきます。
また周りの営業職の成功事例・失敗例などのプロセスや進捗を見ることで、自身の営業活動がそれほど悪くないプロセスを辿っているのか、
遅れ気味なのかという一つの基準・目安が分かるというのも大きな事です。
このように見ていくと、
あなただけが営業活動を行っている場合の最大のデメリットが、
営業活動を一緒にやる社内の人間がいない
⇒相談する相手も、情報や手法を共有する相手もいないことである、
という事がよく分かると思います。
企業が専属の営業部隊を持つメリット
逆に専属の営業職はお客様に対するアプローチに慣れているだけでなく、
迷った時や困った場合、同じ会社の営業職にいつでも聞けます。
勿論専属の営業職がその会社で一人だけという会社もあるでしょうが、
恐らく専属の営業職を持っている企業の大半は複数の営業職を抱えているでしょう。
企業が専属の営業職を雇用している最大のメリットは、
実は営業活動に特化できる社員の存在ではなく、
複数の営業職が互いに手法や情報を簡単に共有でき、
効率的に社内にノウハウを蓄積できることです。
専属の営業職の中には自社の同僚営業職とほとんどコミュニケーションを取らない人もいますが、実に非効率的なスタンスと言えます。
これは同僚との競争という面においても、
ライバル会社との競争の面でも相当不利であり、勿体ない行動と言えます。
最大のメリットを自ら進んで、放棄している訳ですから。
社内外問わず自分の耳と目だけで勝負している営業職が、
他の営業職の耳や目を一部借りている人間に対して、
相対的に不利になるのは自明の理です。
ここまででお気づきのように、
あなた一人で営業活動を展開している場合は、
同僚の営業職とコミュニケーションを取らない営業職と同じ状況であり、
その上営業活動にかける時間もそれほど確保できず、
更に営業活動そのものに対して批判的な他の社員の監視にさらされている、という三重の意味で不利な状況にあります。
あなたのライバル社が専属の営業職を複数抱えている場合は、
少なくともこの差が最初から生じているということを憶えておくと良いと思います。
商品のPRなどでも他の営業職の成功事例を簡単に知ることが出来るのと、
常に自前で考えるしかないのでは長期的にはとてつもない差です。
唯一の具体的解決策とその道のり
この状況を打開するには、1つしかありません。
まずは社外に営業活動を展開するのと同じだけの時間とエネルギーを使って
社内の理解を広めていく事です。
そうです、【営業活動の必要性を啓蒙するという社内営業】です。
社内営業に社外向けと同じだけの時間とエネルギーを使う必要があるのは、
お客様訪問以上に、社内の理解を得ることが重大だからです。
そして、その延長線上にある最大の目的は、
自分以外に営業活動を展開する人をまずは一人作ることです。
ここでポイントなのは、
理解を示す人や自分を応援してくれる人ではなく、
あくまで営業活動を共に展開する人だという点です。
応援や理解は所詮他人事であり、当事者意識を持ち得ません。
同じ努力や苦労を重ねながら、情報共有できる人を作る事、
これがあなたの会社の営業活動の継続と成否を決める生命線です。
こうしたことは既に他の業務を持っている方が候補になるはずですので、
営業活動を展開すると言っても勤務時間のごく一部で構いません。
理想は一気に営業活動に意欲のある人を複数作り組織化することですが、
これは経営者・社内全体を一気に説得する必要があり、
相当にハードルが高い事だと思います。
まずはあなたが社内全体の理解を得るのに真っ先に説得すべきと思う相手に何度も何度も営業活動の必要性を語ってください。
これはお客様に営業活動を展開する時と同じ要領です。
キーマンや決裁者に特に照準を絞って、PRをするのと同じですね。
と同時に、一緒に営業活動を展開してくれる社員を探してください。
『社内全体の理解を得るのに真っ先に説得すべきと思う相手』と
『一緒に営業活動を展開してくれる社員』が同一人物でも構いません。
今回のタイトルは、【中小企業の営業活動を阻むモノ】ですが、
具体的に言うならば、
あなたの営業活動に理解を示していない同じ会社の社員だということになります。
しかし、自社の売上や今後について、
他人事でなく、本当に自分の事として考えてくれるのは
究極的には自社の社員しかいません。
更に言うなら、自社の社員ですら全員が会社の利益を最優先している訳ではありません。
外部の人間なら尚更難しいと思います。
(私を含めて外部のアドバイザーは、報酬を前提・条件としてアドバイスを提供しているため、報酬を支払えなくなった時点であなたの事は他人ごとになる、という脆弱な関係の上に成り立っている存在です。
これはビジネス上、仕方ありません。
公平に言うならば、そういうビジネスライクな関係の上に成り立っているからこそ、外部として冷静で客観的な助言ができる、というのも事実です。)
営業活動の必要性を社内の人に解くときには、
あの手この手で説得するのでなく、
まして相手の姿勢や考え方を批判したり論破しようとするのでなく、
自分が本当に思っていることを繰り返し何度も何度も伝えた方が良いと思います。
同じ会社の社員であるあなたが感じていることですから、
相手もあなたが思っていることを頭では理解しているはずです。
ただ自分たちがやったことのない営業活動に対するアレルギーや苦手意識がその理解や納得や具体的行動を阻んでいるだけなのです。
ですので、あなたの高い意欲を伝え続けるのが最も効果的だと思います。
これはどれほど時間がかかっても構いません。
逆に、社内での理解を得られない状態であなたが営業活動に邁進すれば、
ますます孤立化し、より一層営業活動による結果でしか対抗できなくなるはずです。
これは悪循環しか生みません。
この事はよく頭に入れてください。
現在あなたの営業活動を阻む人たちが
あなたと一緒に営業活動を展開してくれる人たちになることを祈り、
また応援しています。